第36話 2−5

 二日目はバイト先の図書館へのあいさつから始まった。


 一日目はバイトの休みの日だった上に、決断からの契約にいたり、引っ越しまで決まった。

 どこか遠くの町へしまうわけではないものの、生活スタイルが変わるわけだから話をしておかないわけにはいかない。シフトも今まで通りではダメになる。


「おはようさん」

 いつものように声をかけてくれる朝の見回りをしている館長。

 受付のパソコンを起動させている司書長。

「おはようございます」

 襟を正して挨拶をしたものの、実際に話を切り出したのはお昼休みだった。


「……そんなわけでして、こちらにバイトに来ることができる日はとても少なくなります」

 俺はやっとの思いで言った。館長や司書長は朝からのただならぬ雰囲気を感じ取っていて

「やりたいこと見つけんたんだね。喜ばしいことじゃないか。こっちは気にしなくていいから、思いっきりやっておいで。わかると思うが、そんなに忙しいわけじゃないからね」

「何かと思ったぞ。人間、長く生きていればそういうことだったあるな。君の仕事ぶりならば、他へいっても十分に通用するだろう。頑張りたまえよ」

 と、二人とも快く話を受け入れてくれた。


 みだりに触れ回らないこととあるので、歴史の研究者に見込まれて助手をすることになった。そう話していた。当たりにはお茶の薫りが流れたそんな午後だった。

 受付さんだけが「うわー仕事がー」と騒いでいた。


 図書館では今の時期、蔵書の入れ替えが行われていた。

 古い本から新しい本まで利用者が気軽に立ち寄れるように日々努めているのである。

 そこで館長が蔵書落ちの本として『儀式儀礼ことはじめ』を餞別として渡してくれた。

 俺が書名と蔵書番号をメモっていた本だったので正直驚いた。


「こういう仕事を長くやっているとね、こういう目利きもできるようになってくるんだ。きっと今の君にぴったりの本だろう」


 本を受け取りながら俺はただうなづく事しか出来なかった。

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