第33話 2−2
比沙子の父との思い出は少ないとはいえ、ないわけではない。
中腹の屋敷は比沙子が祖父の元についてから建てられたものである。
それまでは祖父と父と娘、それに母もいて純和風の家に住んでいた。
春には花が咲き、夏は沢の水で西瓜を冷やし、秋は作物を収穫して、冬は霜が降りる。
普通といえばあまりに普通の家だった。比沙子はそう思っていた。神様や自然の精霊などはいつも身近にあった。しかし、それがあまり普通のことでないと感じたのは比沙子が学校にあがってからのことだった。
さいわい、いじめに遭うことはなかったが、クラス内では孤立するようにはなってしまった。
それが比沙子がその道を志すきっかけとなった。
屋敷の朝は早い。
単に陽が届くのが町より早いというだけなのだが。
朝日はカーテンによって和らげられベッドに届く。
それで比沙子は目を覚ました。
「うう、ああ。今日も今日とて始まるわね。さて着替えるとしましょう」
ベットから身を起こして床に降りる。今日が始まる。
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