変わる日常

第32話 2−1

 その屋敷は小高い山の中腹にあった。

 周りは林に囲まれている。それでも屋敷のバルコニーからは麓の町が一望できる。

 林と屋敷は門と宅壁で仕切られていて噴水や彫刻といった、調度品は飾らせていないものの中庭は開けていて、ちょっとしたパーティならばできるくらいの広さがある。

 宅邸の造りもしっかりしていて、少しくらいの揺れならばビクともしないだろう。

 内装は和風よりのモダンなものになっている。玄関からの応接広間。奥には書斎や寝室、そのほかにも色々な用途で色々な部屋や場所がある。


 この屋敷を建てた主人は既に亡く、主人の親族が引き継いだ。

 名は村崎比沙子。屋敷の主人だった村崎彦三郎の娘である。

 しかし比沙子はこの屋敷で育ったわけではない。

 比沙子の祖父のもとで、ある技能の習熟に勤しんでいたのである。

 父の訃報を聞いたのは今から五年前のこと。屋敷の主人が不在となったためと、一通りの技能を修めたこともあり、この屋敷に住まうようになった。

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