第31話
「比沙子さん、言われた通りに人形を持ってきましたよ」
何回目になるか、応接テーブルにバックを乗せて座る。
「戻ったのね。こっちも最低限の準備はできたわ。それじゃこっち来て」
こっちというのは書斎のことだろうか。俺は書斎に向かった。
書斎は先ほどと変わらないようだった。
本の代わりに一枚の紙が置いてあって、先ほどの本は比沙子さんが持っていた。
「さて、さっきも話したけどこの本のないようは誰にでも伝わっていいものじゃない。それ相応の覚悟がいると言ったわよね」
「覚えてますよ。大丈夫です」
「つまりね、あなたは私に弟子入りをしてこれからその術を学ぶことになる。そう降霊術のね」
比沙子さんは持っていた本を紙の隣に置くと今度は紙の方を指した。
「それがこの紙、契約書というわけ。あなたは今から降霊術士になるの。この屋敷に住み込んで修行をしてもらうわ。もう部屋も用意してあるから」
当たり前のようにいうけど俺は驚いた。
「さらっといいますがかなり大ごとですよね、それ」
「そうね、だから確認をしたわけよ。いいのかってね。はい、契約書。名前はここに書いて」
契約書の内容はこんな感じだった。
一つ、村崎比沙子を師として教えを仰ぐこと
一つ、技術の習得に心血を注ぐこと
一つ、みだりに降霊術について触れ回らないこと
一つ、会得した術を悪事にしようしないこと
一つ、破った場合にはいかなる処分も受け入れること
などなど。
師匠の部分には既に比沙子さんの名前と印が押されていた。
「やたら本格的ですね」
「当たり前でしょう。遊びじゃないんだから。覚悟を決めなさい。もう屋敷の門は閉めてしまったから帰ることはできないわよ」
俺は契約書に自分の名前「杉並吾朗」とサインして印を押した。
比沙子さんは契約書を取り上げて目を通した。
「よし、それじゃこれからよろしく。吾朗」
そうして、俺の降霊術師としての修行がはじまったのだった。
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