第28話

 さてどうしよう。

 興味半分で首を突っ込んでみようという雰囲気ではない。

 何かとてもいわくのありそうな感じだ。

 比沙子さんは「覚悟はあるか」と聞いてきた。それからして覚悟がないなら、この先には進むべきじゃない。やってみければ分からない、とかそういう話でもなさそうである。

 オカルトの類は度々テレビなどでも話題にのぼることがある。あまりその手の番組を見る方ではなかったが、番組がなくならないあたり一定の耳目は集めているのだろうな。


「おじけ付いたの? 無理強いはしないわよ。あなたの人生だもの。どう生きるのかは、あなたが決めるべき」


 比沙子さんはなおも答えを待っている。

 まるで時間が止まったかのように感じる。


「一つ聞いてもいいか?」

「ええ、どうぞ。答えられることならね」


 許しを得て俺は思っていたことを口にする。

 もしこれがそれほどの重大な決定になるのなら聞いておかなくてはいけない。


「比沙子さんは、人形について何か知っているのか? あれがどんなものか。まるでその道の人みたいな言いかただよな」

「ええ、そうよ。私がこの屋敷に来たのはそういうわけもあったからね。私が彦三郎の娘でありながら、父と一緒に暮らしていなかったのは外へ修行に行っていたからなの」

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