第25話

「ああ。確かに。年に一度、出雲大社に集まると言われる神様の数も確かに八百万だった気がする」

 俺はとっさにそう言い繕った。ここで比沙子さんの機嫌を損ねて屋敷を追い出されでもしたら、唯一の手掛かりともいえるものを失ってしまう。何としてもここは話を合わせなくてはならない。


「やっぱり見込みちがいだったのかしら……」


 そんなボソッとしたつぶやきが聞こえた。


「いや、分かってましたよ。雰囲気に呑まれてしまって外しただけですから」

「そう? 話を続ける?」

「はい。お願いします」


 比沙子さんは少し釈然としないといった様子ながらも話を再開した。


「だからね、この町を興そうとして時にこの八百万の神と土着の霊に助力を求めたの。その記録がこの本なのよ。だからその数は1000万くらいになるんじゃないかな。知ってると思うけど、いい神さまもいれば悪い神様もいる。ちょうど福の神もいれば疫病神もいる。ね? 分かるでしょ?」

「はい。命を愛でる神様もいれば、命を奪う死神もいる。そういうことですよね」

「そうそう。そんな感じ。飲み込みが早いじゃない」

「どういたしまして」


 気を良くした比沙子さんは更に話を続けてくれた。

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