第23話

 俺も神奈町で司書補助をしている端くれであるので出版コードくらいは知っている。

 本を出す時には出版コードがついている。商業本ならほぼ全部に。自費出版とかはないけどな。

 また国立国会図書館ともなると、国内の全部の出版物が集まる。

 出版コードがないということは、個人的に編纂された書物であるということ。つまり、ここにある一冊がオンリーワンということだ。


「何で出さなかったのだろうか」

「それはね内容に問題があったからよ。こんな眉唾ものの本が出回ったら、国が滅びかねないからね。この本はそれくらい危険なものというわけ」


 改めて本をよく見てみる。そうすると確かに綴じ方が活版印刷のそれでは無かった。大きさはB5版くらいでコピー用紙を束ねて製本テープで留めた程度のようだ。


「一枚一枚に両面テープが貼り付けてあってバラけないようになってるでしょ。それにその紙いわゆる100年ペーパーが使われているのよ」

「100年ペーパー?」

「簡単にいうと耐久性のものすごく高い紙ということ。日焼け、水濡れ、虫食い、インクの滲みや薄れ防止と、とにかくスゴイ紙なのよ」

「ううっ! それはすごい。そんな紙聞いたことがない」

「でしょう?」


 比沙子さんは俺が初めてはっきり分かる表情で笑った。

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