第20話

 ずらりと並ぶ本棚を一つひとつ目がめて本の背表紙を追っていく。

 今までは気づかなかったが本当にたくさんの本があった。

 けれど彦三郎さんの本は1冊だけだった。人は誰でも1冊くらいは本を書けるような経験をしているという。人の数だけ本があるといってもいいのだろう。

 早々に本を探すのを諦めてしまった俺は、他の本を読むことにした。

 あまり知らなそうだけど、あの人のことは娘さんに聞こうと考え直した。


 俺がここで次に探したのは神秘に関する本だ。

 歴史、考古学、古文書。これらを集めた区画だからその辺は古文書あたりがいいかもしれない。そして見つけたのが『儀式儀礼ことはじめ』という本だ。

 これがまたちょっと面白そうな本で、豊作の祈祷から恋のおまじないまで様々な儀式が紹介されていた。俺も前に中学時代に友人がこっくりさんとかトイレの花子さんとか、それはもうエンタメ的な怪談だろというものをひけらかしているのを思い出した。

 結局、俺はしょうもないと関わらなかったけどな。

 それが今になって興味を惹かれるとか、人生何があるが分からないものだ。

 一応書名と整理番号だけメモると、その次の目的地である屋敷に向かうのだった。

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