第19話

1822


 神奈町は幹線道路なら国道も通っている。だが細かい路地となると町道だったり私道だったりもするところがある。人口の3分の1は農家だけあってときどき農耕車も走っている。

 図書館への道はさすがに国道に面していてやや開けた場所にある。


「おはようございます」


 今日は休みだから挨拶して入ることもない。クセだよな。


「おや? 手伝いにしてくれたのかい?」


 受付で受付用のパソコンを起動していた司書長が声をかけてくる。


「いえ、今日は普通に本を読みにきたんですよ。奥の方に行きますね」

「そうかい。じゃ、ごゆっくりな」


 短く言葉を交わしてから今日は利用者として昨日の場所に向かう。


「ほんとう、ここはいつも人がいないな。その分ゆっくり本を探したり読んだりできそうだけど」


 ここに来たのは他にも彦三郎さんが書いた本がないかを探すためだ。

 それこそ司書の人に蔵書検索をしてもらえば早いわけだけど、俺が彦三郎さんの本を探していると知られるのを避けたかった。


「さて、どうやって探すかだな。ジャンルで探すか、著者名で探すか……」

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