第13話

 凛とした雰囲気。女の子の周りだけ空気が澄んでいるとでもいえばいいのか。

 館の当主だけあるのか威厳みたいな有無を言わせないようなその目。

 ゆっくり1段1段と階段を降りてテーブルに近づいてくる。

 テーブルの前に女の子が着くとお使い人がさっと椅子を引く。

 それを当然のようにして、それでも椅子を確認してから座った。


「あなたがあの本を見てこの屋敷にやって来た者ですか?」


 女の子は黄色のリボンで髪をグルグルに纏めている。長さは腰元くらいか。

 あまり外にでないのだろう、肌の色は白かった。とはいっても病的な白さでなく、あくまで健康的な範囲での白さだ。

 目はキリリとしていて、きっと男だったら眼光鋭いというのだろう。

 背の高さは少し俺の方が高いくらいなのに、その雰囲気から全然そうは感じない。


「はい。偶然といえば偶然でしたが、御本を拝見して興味を持ってお邪魔しました」

「それはわざわざご足労でしたね。あの本を著した村崎彦三郎はもういません。残念でしたね。申し遅れましたね。私は彦三郎の娘で村崎比沙子(むらさき ひさこ)といいます」


 村崎比沙子と名乗った女の子は、申し訳なさそうにするわけでもなく事実を伝えただけといった感じで言った。


「そうでしたか。それはご愁傷さまです。そうとは知らず済みません」

「いいのです。誰にも伝えませんでしたし、葬儀も家族葬で私と屋敷のものだけで行いましたから。あ、本人の意向でもあるので気にないで大丈夫ですよ」

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