第8話

 本の奥付を確認する。

 今から50年くらい前になっている。

 著者は村崎彦三郎(むらさき ひこさぶろう)とある。


 そして本の内容はこうだ。

 山に入り木を切る。岩や砂を取り出して土を整える。耕して木のねっこを取り除く。水を引き入れたり、畝を作って作物を植える。これは一朝一夕でできることではない。それこそ開墾地に住み着くくらいのことをしなければなし得ないだろう。また作物が実るまでにも食べるものや夜を過ごしたり雨風を凌ぐ場所が必要になる。それも年単位の話になる。そんな場所には誰も行きたがらなかったし、誰もお金を出したいと思わなかったと。

 そこで考えられたのが人以外の存在だった。その土地に昔からいる。土着の霊や神様に力を貸してもらおうとしたわけだ。

 そのために神社を建て、神主を呼び、人形(ひとがた)をまつった。

 つまりはこの神主が、この町の開祖にあたると。

 人が移り住むようになったのはそのあとのことだと。

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