第7話

 司書補助として働いている俺だから知っていることがある。

 それは書写しは禁止されていない。撮影やコピー機の使用はできないけどな。

 もともと利用者も少ない区画である。よってそんなことをする人もいない。

「ここはなぁ、あまりにも利用者が少ないから本の風通しが主な仕事になるんだろな」

 本は本棚にしまったままにしておくと傷んでしまう。適度に本を利用してくれる人がいればいいのだがな。

 だから定期的に本棚から出してやって風通しをする。いわゆる虫干しだ。

「今日のやる書棚はこの辺りだな。『神奈町のあけぼの』『農具の種類と手入れ』『土着信仰の手引き』『歳時記の編纂方法』と」


 パラパラとページをめくっていると、いつもは気にも留めなかった部分に目がいった。


『神奈町がどうやって開墾されていったのか。その説は様々ある。罪人を開墾作業に従事させていた。武家が石高(こくだか)を上げるために、商人や職人を使って開墾の事業展開をしていたなどである』


『しかしながら、まことしやかに伝えられているのは降霊術による人以外の存在の利用である。この土地を開墾する前に作業の安全と成功を祈るため神社が建てられた。そこの神主が降霊術者だったとする説である』


 俺は肝試しを行った神社のことが頭をよぎった。

 無人になってから長く経つ神社なのに最低限の手が入っていたこと。

 まさかと思うも何だが否定しきれない妙な気分になった。

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