第57話 薬師育成22 研修本番 / 後半戦9 最終パート6 

更に1週間が経過して、大きな変動は無かったが、Lv3からLv4に上がった者が6名、Lv2からLv3に上がった者が1名出て、残りのLv3組の魔力操作も大分安定度を増してきていた。(落第組から昇格した2人については残念な感じだが…)

まぁ、その間に生産出来た原料薬液(仮)は、相変わらずさほど品質が高い物とは言い難いと言うか、薬液と言えない様なモノも含まれていたが、それはそれとして使い道が全く無い訳では無い事を含め、こちらで用意した品質の良い物と交換しての最後の座学6/実習6に突入する事になった。


座学6/実習6では、用意した原料薬液と原料類を合成して、アンチエイジング液として完成させる工程だ。

使うのは錬成釜と呼ばれる、魔力製薬専用の釜だ。

まぁ、色々違う部分はあるが、魔女が暖炉にかけている大釜なんかをイメージしてもらえれば、大きな相違は無いと思う。イメージと違うのは、グツグツ煮立たせる様な使い方は滅多にしないと言う事。

基本、煮立たせない程度に火をかけて、薬液同士を馴染ませたり、魔力投射で変化させたりするのがメインの使い方だ。

投射した魔力を効率良く浸透させる為に、魔導管と呼ばれる特殊な構造体を持つのもこの釜の特徴だ。

今回の研修では、失敗してロスする事を考慮して小型のものを使用する。


先ずは、釜が冷めた状態で大豆から抽出した薬液の原液を投入する。

この状態から加熱を開始して、煮立たせない様に火を調整していく。

釜を煮立たせると言う事は、薬液を焦がしたりダメにする行為で、ポーションの品質を落とす行為に他ならない今回は、既に抽出工程で一度熱を通しているので、過分な加熱をすると過度に薬液にダメージが行く可能性があり、特に厳禁だ。

この辺の話を説明を通して、周知し徹底していく。


この段階で、釜の中は1/4程がクリーム色をした薬液に満たされた状態になっている。

これに、白殭蚕茸の処理済み品を投入して、馴染ませる。

同時に魔力投射によって、自己修復機能を強化する方向に誘導する。

十分に有効成分が溶出して、大豆液と十分に馴染み強化が完了すると、薬液にやや白みがかり薬液のトロミがます。現時点で研修生は鑑定スキル持ちは居ないので、この色味と粘度の状態を覚えておいてもらい、それで判断する様に説明を加える。


薬液が出来たら白殭蚕茸を漉しとって、薬液から除去する。

除去が終わったら次の薬液、芍薬の根の投入だ。

芍薬の根の薬液は、やや茶色がかった半透明なもので、釜に投入すると、少しクリーム色っぽい感じに色味が増すが、馴染むにつれて白味が戻っていく。

この薬液も緩やかにかき混ぜながら魔力投射によって、虚弱した体質の改善などの機能を強化する方向に誘導して行く。

概ね強化が完了すると、薬液は、半透明な白い液体となっており、ややトロミが増した状態となる。


4番目に投入するのは、チャガ(カバノアナタケ / シベリア霊芝)で、これも下処理が済んだ状態で、細かなサイコロ状の応対になっているはずで、適量投入する。

チャガには:細胞の異常増殖抑止効果や免疫力の強化作用など、体の恒常性維持・強化、活性酸素除去作用などの体質の強化に欠かせない効果があるが、この辺も魔力投射によって、強化・誘導して行く。

チャガの投入で薬液はかなり茶色味をますが、馴染むとかなりきれいなクリーム色を成す様になるので、色味の変化に要注意だ。


次に麻黄(マオウ)の薬液を投入する。

この辺の薬液は、元の薬元が茶色くなる程度に乾燥させた植物だったりする事もあって、どうしても抽出液は茶色味を帯びる事になるので、中々色の変化によって薬効成分の馴染み度合いが判別し難い上に、材料の状態によって元の色も変わって来るので、中々判別し難しいのだが、わずかに色味が強くなるので、頑張って元の色を憶えておいて色変化に気を付けて欲しい。


ここで、魔茸(笑茸系催眠茸)を投入するのだが、この茸は胞子部分も含めて一つの重要な薬効を構成しているので、胞子も忘れずに投入する事が重要なポイントで、併せて新陳代謝機能の向上を留意して魔力投射を行う。

傘が赤味ががっているので、投入後、薬液が赤く染まる事があるが、馴染むにつれてほぼ発色がおまり、元の薬液がクリーム色がわずかに赤味がかる程度の状態で定着する。


最後に投入するのは、当帰(トウキ)と言う薬草だ。

茎葉に血液循環を高め、呼吸や物質代謝を高める効果があり、不眠症や肩こりなどの解消も期待できる薬草で、更に延髄中枢に対して刺激作用があるため魔茸類の副作用対応の為の催眠効果の打ち消しも魔力投射による強化を行って対応する。

この薬草は、有効成分が精油で揮発性がある為、最後の投入となる。


ここまで来ればあと残るのは、成功か失敗かと言う事になるが、実を言えば魔法製薬ではこれからが大変なパートで、これから魔力が完全に薬に馴染んでポーションとして熟成するまで、延々と煮溢さない様に火の調整をしながら釜の中をかき混ぜ、かつ魔力投射を続ける必要がある。

想定される作業時間は、丸1日、24時間程度がみこまれる。

ただし、どの程度安定して魔力投射を続けられるかと、過熱させない様に丁寧にかきまぜつつ加熱を続け、釜の中を安定させていられるかにもかかって来る。


あせると、この段階で変な感じに変質させて薬効を台無しにさてしまう事もあるので、ここは『耐』の一時だ。


それでもアンチエイジング液は、低レベルヒールポーション派生のポーションなので、さほど難易度は高くなく、薬師スキルさえ保有していれば、8割程度の製薬成功率が期待できる。

もっとも、これから薬師スキルを得ようとしている面々だと、色々環境を整えても良くて2割あるか否かと言う感じになってしまうとは思うが…

成功率を少しでも引き上げる為、程度の良い原液を使える様にこちらで試料は用意したし、設備もなるべく配慮したが、それでも成功率は3割に届く事は難しいだろう。

最後の我慢のしどころでもあり、気合の入れ処でもあるので、是非頑張ってもらいたい。


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こんなヨタ話のネタを信じて使う人は居ないと思いますが、この小説で記述する処方はいい加減です。何となくホントっぽく書いている心算ですが絶対真似しないでね。

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