第58話 薬師育成23 研修本番 / 後半戦10 最終パート7
色々と整えたとは言え、最後の合成工程で丸1日近く続けて魔力投射を行うのは、アンチエイジング液を作り慣れている我々でも結構辛い作業だ。
それを不慣れな研修生が実施するのだから、順調に進む方が奇跡なのかもしれない。
でもアンチエイジング液は、低レベルヒールポーション派生のポーションなので、難易度はさほど高くなく、薬師スキルを保有さえしていれば、8割程度の製薬成功率が期待できるレベルの。
もっとも、これから薬師スキルを得ようとしている面々だと、色々環境を整えてあげたとは言え良くても3割、熟練度の低いメンバーでは2割を超える事は無いだろう。
成功率を少しでも引き上げてあげる為、程度の実習5で作った原液は俺製の程度の良いものに差し替えておいたし、設備や作成環境も可能な限り配慮した心算ではあるが、それでも全体としての成功率は2割に届くかどうか…
最後の堪えどころでもあり、気合の入れ処でもあるので、是非頑張ってもらいたい。
そんな感じで1回目の合成を始めた訳だが、結果は全滅…、惨憺たるものだった。
集中力が足りないのか、堪え性がないのか、それとも前日にこちらのアドバイスを無視して遊び惚けて心身を整えておくのを怠ったのか…
何とも良くわからないが、みんな周囲の魔素を取り込んだ上でその魔力出力を細く絞り込んだ上で偏向をかけて魔力投射を維持してやる事が上手く出来ない感じだ。
正直、魔力操作スキルがLv5もあれば、きちんと集中を維持できさえすれば、その程度はどうと言う事も無いはずなのだが、特に『維持』すると言う部分が出来ていな様だ。
これは、一度それだけの訓練を入れた方が良いかもしれない。
と言う事で、少しロスと言うか脇道に逸れる感じになるが、時間は有るのだ。せっかくなので周囲から魔素を取り込んで魔力に変換し、それを細く絞り込んだ上で偏向させて連続で魔力投射を維持する訓練を急遽実施する事にした。
正直、自分の時はこんなところで躓かなかったので、何故出来ないのかわからないが、用意した材料は魔蔵庫の中に入れておきさえすれば、1~2週間で使用に適さない状態いなる様な物でも無い。
と言う訳で、出力を絞っての魔力投射の練習だ。
この練習では、実習1でも使った魔感紙を使う事にした。
実習1では、単に魔力をうまく投射出来たかどうかの確認をする為にさほど精度の高くない比較的安価な物を使ったが、今回の練習では、それなりの物を使う予定だ。
魔感紙と言うのは、魔力版リトマス紙とも言うべきものと言う説明をしたと思うが、正確には魔力版感熱紙的な性質も持っているのだ。
要は、投射された魔力の強さや性質に応じて、変色度合いが変わるのだが、上等な魔感紙になると、感度や変色度合いがが大きく変化する。
余り質の良くない魔感紙だと、紙のどこかに魔力が投射されるとその当たったポイントを中心に結構な範囲が単色で変色してしまう程度だが、質が良い物になると変色する範囲が魔力が当たった部分にピンポイントに限られてくるし、変色の具合も多彩になる。
要は低品質のものは投射した魔力が当たったかどうかや投射出来たかどうか程度の判別にしか利用出来ないが、高品質なものになれは、どの部分にどの程度の範囲でどの程度の強さでどんな魔力が投射されたかがある程度判別可能になるのだ。
今回の様に投射する出力を縛り込んだものの場合、範囲は兎も角どの程度の出力でどの様な魔力が投影されたか判別するには良いアイテムだと言える。
また、出力を絞り込んでいるので、時間単位での変色度合いで、ある程度単位時間にどの程度の魔力が投影出来ているかを判別できる。
要は出力を絞り切れていなければ、想定より深く変色する事になるし、逆に絞り過ぎで間欠的にしか出力できていなければ変色度合いは薄くなると言う訳だ。
同じ様に、変色した色目を確認すれば、投射した魔力が上手く偏向出来ていたかどうかの確認が出来る、と言う具合だ。
ここで目的の形に偏向させた魔力を一定時間投射できる様にする訓練を重ねれば、実習6も格段に楽になると言う訳だ。
(それでもスキル無しだと、製薬成功率は2~3割を超えない程度だろうが…)
明日からの特訓で使う為には、明日の朝までに相当量の魔感紙を量産しておく必要があると言う事で、こちらはこれからかなりの超過労働を負わされる事になるが、ぶっちゃけ依頼元の製薬会社に思う所は有っても、研修生達自体罪がある訳では無く、特に敵意がある訳では無いのだ。
何名かの研修生の日頃の態度に対しては、若干思う所が無い訳では無いが、嫌うと言う程ひどい物でも無い。
さて、ここまでがんばって来た以上、出来るだけ多くのみんなに頑張ってスキルを生やして欲しいと言うのが本音だ。
みんな頑張れよ。
一夜明けて、特別実習とあいなった訳だが、実際に実習生にやらせてみてわかったのだが、全般的に出力を絞る事と、ある程度以上の時間に渡って連続して安定した出力で魔力を放出する事は大変な事だと言う事が判明した。
どうも適性の有無や向き不向きも大きく影響する様で、特に連続して一定出力で魔力を投射しようとすると、常に一定の注意をそちらに向けておく必要があるらしく、中々成功率を上げる事が出来ない様だった。
どうもダンマスとしてどの様な職業スキルや技能スキルも最低レベル(Lv1相当)で行使できると言う特権は相当にチートなものだった様で、特に俺の場合はクラフト系スキルへの適性、特に薬師スキルへの根本的な適性の高さもあいまって、その相乗効果で大分楽をさせてもらえていたらしい事が判明するのだった。
大分買わんでも良い余分な恨み…、妬みを買った様な気もするが…
そんな事言っても、正直、投射する魔力の出力を小さく絞るのも、長時間安定した出力に調整して魔力投射を続けるのも、特に苦労する事無くサクッと出来たから、研修生のみんなが何を言ってるんだか分らなかったんだよ。
仕方ないだろ?!
そんなこんなで悪戦苦闘を続ける事約1週間、ようやく魔力操作Lv4~5チームの魔力操作が安定してきた。
これならいけるか?
と言う事で先ずはこの面々で再度合成実習にチャレンジだ。
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こんなヨタ話のネタを信じて使う人は居ないと思いますが、この小説で記述する処方はいい加減です。何となくホントっぽく書いている心算ですが絶対真似しないでね。
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