第55話 薬師育成20 研修本番 / 後半戦7 最終パート4
追加された実習3の1週間が経過した。
その間、魔力操作スキルLv3だった3人がLvアップを果たし、Lv2組の4人がLv3となった。その結果、Lv4は4人となり、Lv3は15人に。Lv2は3人になった。
課題の達成状況から考えると、魔法操作スキルがLv4の3人は完璧と言うか要求を100%満足できるLvで魔力操作が出来る様になっており、Lv3の8人について90点のできと言って良いだろう。
残りの7人は、元からLv3だった3人が85点の出来で、Lv組の4人が70~80点の出来で及第点ギリと言った感じだろう。
Lv2組の残りの3人は55~65点位で、Lv1の2人の内1人は50点位、もう1人は40点と言ったところか、どうも本当にギリギリの適性しか持っていなかった様だ。
彼ら5人については、残念ながら今回のスケジュールでは落第と言う扱いになる。
ただし、自主的に努力する事自体は禁止する訳ではなので、来週からの座学には参加してもらい、実習の方も流れのおさらいだけはしてもらっておいて、後は会社に戻るにせよ、自習してもらうにせよ、各々の判断に任せる事になっている。
依頼元からは残余期間の料金はいただいているので、どうするかは各々の判断に任せるしかない。
まぁ、魔力操作スキルの素質と薬師スキルの素質は必ずしも”=”で結ばれない可能性もあるので、もしかしたら、座学/実習4~6を受講中に薬師スキルが生える可能性自体は否定しない。
ただし、薬師としてある程度以上難しいポーションを作るには、魔力操作を使う作業は必須なので、このスキルのLvが高くないと、伸びしろと言う意味でかなり厳しい事になるだろう。
コアとの遣り取りで俺的に理解出来た範囲で考えると、薬師が作成するポーション類の品質は、薬師スキルのLvと製薬に関連する各種スキルのLv)、材料(魔草類等)の品質、作成環境(場、機材等)の良し悪し、に影響されるらしい。
また、品質の評価はその状態のグレードよって、最高品質(++)、高品質(+)、通常品、低品質(-)、最低品質(--)に分けられるらしく、当然最高品質が最も効き目が高く、最低品質が最も効き目が悪くなる。
その他に、失敗(状態評価:効果なし(一部再使用可)~飲んだら死ぬまで色々)等のポーションと認められない状態もありうる。
薬師や魔力操作のスキルLvが低いと言う事は、ポーション作成がうまく行かなくなる可能性が高くなったり、作成に多くの時間を必要としたり(時短が出来ない)、特に工程6の合成時に行う効果の調整がうまく行かなくなる可能性が高くなる(高度な魔力操作が安定しない。)、と言う事で、最終的に製薬を失敗したり、出来たポーションの品質の低下を招く可能性が高くなると言う事だ。
結局依頼元の意向もあって、希望者全員で残りの座学/実習を受ける事にはなったが、Lv1&2のメンバーは実習6に関しては、軽く流れをなぞるだけで、魔力操作能力を高める自習がメインになる予定だ。
正直、下手に実習6に手を出されて製薬を失敗されると、どんな妙なものが出来上がるかわからない。
一応、アンチエイジング液と言うか、たいして効果の高くない低レベルなヒール・ポーション系の派生ポーションで扱う材料とその程度っしか扱えない意製薬スキルのレベル程度では、失敗して出来た薬剤が妙な変性をしたとしてもそれほどヤバい代物が出来る事はないと見込んではいるが、思惑通りにいかないのが人生と言う物だ。
万が一の保険も仕込んであるとは言え、そんなもん使わずに済むならその方が良いので、妙な真似をしない様に確り監督する予定だ。
そんな感じで、24人揃っての、座学/実習が始まった。
先ず始めに行うのは、座学4/実習4の製薬材料の《下処理》実習だ。
材料によって幾つかの処理に分かれるが、乾燥させる事で薬効成分が揮発しない様なモノについては乾燥させる。これによって嵩や重量等が減って保存性が高まる。
また、今回は関係ないが、モノによっては成分が熟成されて効果が高まる物もある。
揮発性のある材料を採取する場合は薬効成分が揮発するのを避ける為にも、使う直前に採取する事が基本になるが、季節性等の関係で保管をしなければならない場合なども有り得る。(きっちり環境まで管理されたダンジョン内にある薬草農場でも無ければある程度採取できる時期に偏りが生じるのは仕方ない。)
これをある程度避ける為、採取した魔草類の切り口に封蝋等を塗って蠟封を施した上で気密性高い容器で保存する様にする事が基本となる。
その他にも、長期保存する事で周囲の環境から(特に吸湿等の)良くない影響を及ぼされる可能性の高い材料については、なるべく薬効成分の変質を抑え採取時の状態を維持する為に医療用・薬用の油紙等に包んで保存したり、その状態から更に蝋封などを施して、保管用の油壺などに入れて保管する事もある。
この辺は、殆ど普通の漢方薬の保管処理と変わらないはずなので、そう言うやり方がある程度の紹介程度で軽く流す予定だ。
そして、魔草類と漢方や生薬などへの下処理の最大の相違点は、魔蔵庫による保管と熟成の有無だろう。
魔蔵庫と言うのは、ダンジョン内に偏在する魔力を吸収して一定範囲に凝縮・固定する事で、魔草類に含まれる魔力の散逸や薬としての劣化を大幅に防ぐことの出来る魔道具の事だ。
魔道具と言うのは、ダンジョン内に充満する魔素や魔石(魔物を討伐すると採取できる事のある魔素を濃縮した謎の鉱石。)、使用者の保有する魔力を動力として動作する魔法工作物の事で、本来は魔剣やポーション等を含む魔法絡みのアイテム全般を表す概念なのだが、魔剣は魔剣(魔力で切れ味などが増強されている刀剣類)、ポーションはポーションと呼ばれ、別カテゴリーの様に扱われている。
安価な1回使い切りの物(通称マッチと呼ばれるティンダーの魔道具(*1)等)から天井知らずなほど高価な物(極稀に宝箱から産出されるエリクサーなどとも呼ばれる高レベルヒール・ポーションや高性能な魔剣等)まである。
要は、これに適切な形で魔草類を入れて保存しておくと、品質の劣化を大幅に抑えられると言う代物で、時間を止めるのではなく、魔素の影響で劣化の進行を大きく鈍化させてくれると言う代物なので、成分の熟成が必要な魔草類の下処理には必須のアイテムとなる。
ただし、基本に入手するには宝箱からのポップ待ちになるのでかなりレアで高価な入手困難な魔道具だ。
今回の研修で使用する魔蔵庫は俺によるクラフト品(品質-(低))で、現時点で真面に動作稼働しているクラフト品の魔蔵庫はうちにしかないはずだ。(俺が知らないだけかもっしれないが。)
どうも俺はこの種のクラフト(生産)系に高い適性がある様で、妻がアンチエイジング液の研究をする為に製薬機材を必要とした時も、コアの助けを借りて比較的簡単に機材を作成する事が出来て、その際に職業スキル:クラフトマン(木工、金属加工、ガラス加工等)、技能スキル:工作(樹木、金属、ガラス等)も得て、現状で最も高いスキルはLv3に達している。
流石に、ダンジョンマスターとしての補正がかかるとは言え、適性が無ければそうそう簡単にスキルは生えたりレベルアップしたりしないので、それなりに高い適性があったのだろうと考えている。
*1:ティンダーの魔道具は、通称マッチとも呼ばれており、1回使い切りの使い捨ての熱源として使われる魔道具の事を指す。名前の意味の「ティンダー≒火口」で想像される物とちょっと違って炎自体を発生させるのでは無く、一定(炎が発するレベル)の熱を一定時間発生させる事が出来るので、ダンジョンの様な密閉した空間内で物を燃やすのではなく煙を発生させずに食べ物などを温める事の出来る熱源として探索者御用達の魔道具だ。
宝箱などから保存用ケース(30本入り)単位で比較的良くポップするおかげで比較的安価に流通している。マッチ程の大きさと形で濡れても使える携行性に優れた魔道具だが、ダンジョンの様な一定以上の魔素が充満している空間でないと使えない上にケースから取り出すと劣化が始まると言う難点を持つダンジョン限定のアイテムとして知られている。
*************************************
こんなヨタ話のネタを信じて使う人は居ないと思いますが、この小説で記述する処方はいい加減です。何となくホントっぽく書いている心算ですが絶対真似しないでね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます