第50話 薬師育成15 研修本番 / 後半戦2

更に1週間が過ぎ、後半戦が始まって2週間が経過した。

この間に魔力操作をLv2にした研修生は6人にとどまり、残念ながら全体で過半数に達しなかった為、もう1週間魔力操作研修を継続する事にした。


そして更に1週間がすぎ、7人がスキルのレベルを上げた事で、ようやく過半数の12人を超え15人がLv2の魔力操作を得りにいたった。

出来ればもう少し多い方が良かったのだが、まぁ他の面々にしても(ごく一部を除けば)遠からず上がるだろう見込みであるし、最初に上がった2人にしてみれば2週間も足踏み状態で待たされて、散々焦らされている状況だからな…


来週からの製薬研修最終パートは2人1組で実習をしてもらう事にしている。

流れとしては、俺の製薬工程の説明と実演を見学してもらった上で、それをなぞる形での実習をしてもらう形になる。

2人1組なのは、一人が実習で製薬工程を進めて、もう片方がそれを見学する。

互いに互いの動きを見て、感想を交わし合いフィードバックしあう形で実習を進める事で相乗効果を期待しての事だ。

本当は3人1組でやった方が色々視点での意見を交換出来て学習効果を高める事が出来そうだとは思うのだが、生憎研修期間が通期で半年、製薬研修だけで3か月と短期な為、十分に取る事が出来ない。

そうである以上、実際の製薬作業を行う時間を大目に取れる2人1組にせざるを得ない。はっきりと言える程実感している訳では無いが、スキルと言う物はそう言う物らしいのだ。


元々スキルと言う物は、各個人の適性と実際にそのスキルに関連する行動をした時間の相乗効果で経験と言う名の下に体の特定部位に魔素の割り振りと蓄積が行われ、それが一定の閾値を超えると生えるモノなのだ。

実際に、《生える『らしい』》と言う仮定の下で実習の計画を組んでやっている訳で、現時点では凡そ事前の情報に基づく見込み通りに事が進んでいる訳だが、絶対の保証がある訳ではない。

何せ、この話のネタは《ダンジョン・コア》からの情報を基にしているモノなのだ。

今の所明確な誤情報は無い様だが、何処まで確実で何処まで信用して良いのかはわからない。こんな事を言うと《コア》はいじけるかも知れないが、《コア》の持つ知識は基本的に《コア》が生まれた時点で持っている《プリセット》された類の物で、何らかの検証を行って確実性の確認が済んでいる物では無いのだ。

であれば、「他人の褌で相撲を取る」では無いが、俺にとってどうなっても良い他人(製薬会社)が金を出してくれる時に、ついでに検証しておくのは悪い話ではない。


また、研修生達に直接他意を持つ程の人間関係は構築されている訳でも無く、研修生達が特にこちらに対して隔意をもって悪意のある行動した訳でも無いので、向こうが何某かの悪意を示さない限り、こちらも誠実に行動する予定だ。


と言う訳で、来週からの組み合わせを抽選で決める事にした。

先ず1~12×2のクジを使って、先にLv1の9人に引いてもらい、残りの15枚をLv2のメンバーが引いて、同じ番号の者同士で組んでもらう事にする。

ついでに基本的に暫くの間はメンバーのチェンジは無しだ。

メンバー同士で互いに意見を出し合って高め合う方向での実習をしてもらう以上、そうそうコロコロメンバーを交換していたのでは相互に高め合う事は難しいだろうと言う判断で、依頼元からも了解を得ている。


最終パートの薬師研修の流れは、こんな感じで予定している。

1.座学1:魔草育成1+2.実習1:魔草育成1 : 1週間

3.座学2:魔草育成2+4.実習2:魔草育成2 : 1週間

5.座学3:魔草育成3+6.実習3:魔草育成3 : 1~2週間

7.座学4:製薬1+8.実習4:製薬1 : 1週間

9.座学5:製薬2+10.実習5:製薬2 : 1週間

11.座学6:製薬3+12.実習6:製薬3+ 自由実習 : 研修終了まで


要は、先ず、今回の実習で使用する材料の魔草について学んでもらい、製薬工程で使える程度に初期処理を出来る様になってもらう。

基本的に先週までやっていた魔力操作を生やす為の魔草の世話同じ様な感じの研修になるが、1点決定的に違う部分がある。

それは、魔力操作で行う魔力の放出にきちんと方向性を持たせて行う事だ。


今週までの研修では先ず魔力操作を生やす事とレベルを上げる事を目的に体内魔力が枯渇するまで放出をさせて魔相に魔素を吸収させてきた。

この訓練は、魔力操作のレベルを上げると言う意味では正しい方法だ。

体内魔力が枯渇するまで放出をさせる事で魔力操作に慣れる事ができるしその時点での体内魔力量の最大値を体感する事ができ、枯渇>休息のサイクルを繰り返す事で体内に蓄積可能な魔力量の最大値の上昇が期待できるからだ。

そうして、上昇させた魔力値とレベルによって、より繊細な魔力操作が出来る様になっている事が期待できる。まぁ、何度も言うが繊細な操作に関しては適性が影響するので、どの程度できる様になるかは断言できない訳だが。


来週からの研修では、世話をする魔草の種類を絞り、その魔草をどの様に使うかを考えて薬草としての性質を魔力投射を介して特化させる事を考慮して魔力放射をしてもらう事になる。

先ずは、座学1及び実習1で1週間かけて、1種類の魔草の世話と魔力放射による特性の誘導に慣れてもらう。

座学1及び実習1で魔力の誘導放射に慣れてもらったところで、次の1週間で行う座学2及び実習2で、追加の3種類の魔草の世話と魔力放射による特性の誘導もしてもらい、更に慣れてもらう。

この追加で世話をする3種類の魔草は、誘導すべき特性の伸ばす方向性が違うので、魔草ごとに魔力放射の特性を切り替えなければならず、切り替えの訓練になる。

そして、3週目から実施する座学3及び実習3では、やはり誘導する特性の違う薬草を2種類世話する事になるのだが、加えて取り扱いを注意しなければならない毒性のある魔草の世話を経験してもらい、ある程度慣れてもらう事になる。


5週目から始まる座学4及び実習4では、やっと製薬工程を実習してもらう。

先ず5週目の座学4及び実習4では、実際に使用する魔法製薬機器の取り扱いを覚え、比較的癖のマシな魔草の下処理を覚えてもらう。

6週目の座学5及び実習5では、取り扱いに注意が必要だったり、聊か癖の酷い魔草処理を行ってもらう。

最後の座学6及び実習6では、座学4及び実習4、座学5及び実習5で作った下処理済み魔草類を合成して最終的に期待される薬効を持つアンチエイジング液を完成させてもらう予定としている。


こちらの想定では早い者で実習6の途中から製薬スキルが生えて来てくれる事をしているのだが、適性の見極めも出来ていない状況での正直初めての試みなので断言できない所が辛いと言えば辛い部分でもある。

まぁそれでも実習6を含む自由実習を最低でも2週間程の期間する事が出来るので、適性が微妙な者でもスキルを生やす事が出来る見込みだ。

一応依頼者(製薬会社)との事前の打ち合わせで、達成できなくとも文句は言わない。状況を見て追加料金を支払う(もらう)事で研修期間を1週間単位で延長を出来る事を同意しているが、こちらの面子もあるので、かなりギリギリのタイミングになったとしても、どうにか最低一人でも薬師スキルが生えてもらいたいと感じている。


そんな感じでドキドキの薬師研修最終パートが開幕した。

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