第51話 薬師育成16 研修本番 / 後半戦3 最終パート開幕
と言う訳で、最終パートが開幕した訳だが、初日はなんと座学1とそこで習った内容をおさらいする為の実習1の1日目だ。
今日取り扱う魔草は…
大豆だ。
この研修で取り扱う魔草類の中で一番癖が無く取り扱いが楽な《魔草》である。
大豆に含まれるポリフェノールである大豆イソフラボンには、活性酸素の働きを抑制する抗酸化作用があり、コレステロールの低下や、血糖値の上昇を抑制する効果が期待できる。また、女性ホルモン(エストロゲン)と分子構造が似ている為類似した作用を呈す事が期待でき、更年期障害の緩和などにも期待できる実にアンチエイジング向けの効能を持つ。
また、魔草としてみた場合、抗酸化作用、コレステロールの低下、血糖値の上昇の抑制作用が強化されている上に、魔力投射の影響で往々にして発生し易い突然変異の発生が起こり難く、下手糞な魔力投射でも極端に変質して期待する薬効を失い難い実に基礎練に適した性質を持っている為、魔力操作を生やす研修で殆どの研修生が世話になった馴染みの深い魔草の内の一つだ。
今回の研修では、ある程度育って、もう少しで収穫と言う段階の大豆系魔草に性質調整を目的として、魔力の性質を調整した上で投射を行ってもらう。
そうは言っても、この段階の研修生に難しい微妙な性質調整の必要なもの魔力投射を求めてもどうにかなるものでは無い事もわかっている。
当然、今の段階で可能なはずの比較的簡単な性質調整でも多少ぶれても問題無い事は織り込み済みだ。その上で先ず、座学で教室での実習と言う形で投射する魔力の性質を確認しながら調整すると言うステップを踏みながら技術を習得してもらい、それがクリア出来たら畑で実習をしてもらうと言う手順を予定している。
ここで2人1組になってもらった事の意味が出て来る。
訓練中は2人の内のどちらか一方が実習をしている時に必ずもう一方がフォロー役としてがその実習を見学してもらう。この見学と言うのが実は馬鹿にならない。
武術などで言う看取り稽古に相当する訓練、正に『他人の振り見て我が振り直せ』を想定している。
相方がどの様に魔力放射を出来たかを看取って、成功や失敗に関わらず、お互いに行った感想や見ていて思った事などの意見交換を行う。
これで、成功していてもより精度を高める事が期待できるし、失敗の場合でも周りから客観的に見た感想が期待出来る訳だ。
この座学実習では魔感紙の変色具合を確認しながら行う事で客観的に自分の投射した魔力の性質を確認出来る手はずにしている。魔感紙と言うのは、投射された魔力によって変色するする特殊な塗料が塗布浸潤されている紙で、魔力版リトマス紙と言えば分かり易いかも知れない。
実際には、リトマス紙の様に複数種類ある訳ではなく、感知精度が高いのでその変色具合で周辺に存在する魔力の状態や量をざっと出来るのだが、ダンジョンの様にベースの魔素量が高い場合、事前にそれを想定して調整しておかないと、使う前に全部が変色してしまうリスクを背負う事になる等使いどころが難しい代物でもある。
今回は、あえて研修生が自身が出来る範囲で投射された魔力の強度や何にフォーカスされていたのかを変色度合いや色目で判断出来るので今回の訓練で採用した訳だが、本来は魔力漏出事故などの簡易調査などの為に開発されたものだそうだ。
この訓練を約1週間程続けてもらい、放射する魔力を微妙に調整する感覚を掴んでもらい、第2段階の座学2+実習2で更に微妙な調整が必要な魔草3種を相手に1週間程かけて磨きをかけてもらう。この段階で上手く適性が噛み合えば、魔力操作がLv3に至るかもしれない。
そして第2段階の座学2、実習2でを熟し、実力テストを合格できた者だけが、第3段階の座学3を学ぶことができ、座学3でOKの出た者だけが、実習3で今回の研修で最も取り扱いの難しく、かつ微調整が必要な魔草3種(魔茸を含む)の取り扱いを学ぶ権利を得る。
こちらとしては、この段階を熟す事で、研修生たちの技能は、魔力操作がLv3に上がる事を期待している。
実を言えば、実習3は必須ではない。
恐らくと言う条件が付くが、実習2を継続して行う事でも同程度…、少し落ちる位の効率で放射する魔力に微調整を加える魔力操作を習熟する事は出来る。
ただし、少しでも品質の良い魔草を手に入れようと考えるのであれば、このレベルの魔力操作は必須であるし、製薬段階で同じ魔草(魔茸)を必ず取り扱う必要があるのだ。今の段階で正しい魔茸の取り扱いを学んでおいても間違いではない。
ここで取り扱う魔茸は、シリアス攻略者層向け抹殺ゾーン2:安眠ゾーンに生えている催眠胞子をまき散らす魔茸なのだ。
ゾーン3の狙撃ゾーンで、何も知らない攻略者を待っているスナバコノキの魔樹が放つ徹甲弾の様な狙撃種子に比べればマシとは言え、強力な催眠性を持つ胞子を吸い込み目覚める事のない眠りに落ちると、少しづつ胞子に体を侵食され、やがて養分としておいしくいただかれてしまう事になる。
実を言えば、アンチエイジング液を作成する為に欠かせない材料として育成する必要のある魔草類に含まれていて、その胞子の性質が作物としては厄介だがトラップとしてなら有効そうなので転用…、兼用しただけなのだ。
とは言え、胞子としては標準的な20µm(pm20)程度の大きさのもので、多少手で触れたからと言って炎症を起こす様な類のものでは無い。
それなりにきちんとしたマスクや手袋をして取り扱う等、ある程度弁えた当たり前の取り扱いをすればどうと言う事も無いものでもある。
それと、これは製薬会社側にも伝えていないのだが、後半戦の前半(魔力投射兼農作業)部分とこの段階で行う研修の合わせて1~2カ月程になる農作業的研修で、高い適性のある研修生であれば農業スキルが生える可能性もあると考えている。
こんな話をしてしまうと、
「俺たちは、薬師になりに来たんだ。」
と反発されてしまう可能性があるので、大きな声では言えないのだが、製薬材料の生産工程は、かなり農作物の生産工程と重複している。
ぶっちゃけ生産工程の9割方は同じなのだ。
残りの9割も目的の成分を多く含む方向に育つように魔力を偏向投射して誘導する等の調整作業を行うか、そう言う操作をせずに素の状態で汎用向けの育てるかの違いになるだけだ。
正直、3か月に渡って世話をしてきた生徒たちだ。ついでに言わせてもらえれば、性格もさほど悪く無い、と言うか社会人として相応の礼節を弁えている面々だ。
相性の問題等もあり、全く思う所が無いとまでは言わないが、総じてみんな無事に育って欲しいと言う思いはある。
だが、このままなら、薬師スキルが期間内に生えると見込めるのは8人程度、運が良くても最大で15人程度だろうと想定される。
この数字が高いのか低いのは分からないが、30人で始めた研修の半分が目的のスキルを得る事が出来ない可能性が高いと判断している。
勿論、もう少し研修期間があれば、取得者は増えるだろう。
しかし、それを判断するのは俺ではなく依頼者である製薬会社だ。
ならば、別の可能性を模索出来る様にして挙げるのも悪く無いと思い、わずかな可能性を添加する事にした。
また、薬師コースの面々は、本筋と関係ないので実習では教えない予定だが、魔草は普通の草木と比べると遙かに高い確率で変異を起こすので定期的に変異していないか確認しつつ変異株を除外する必要があるのだが、そう言う部分の見極めや除外作業にはそれなりのテクニックが必要となる。
さて、無事に育ってくれるだろうか、ガンバレよ。
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こんなヨタ話のネタを信じて使う人は居ないと思いますが、この小説で記述する処方はいい加減です。何となくホントっぽく書いている心算ですが絶対真似しないでね。
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