第46話 薬師育成11 研修本番 / 前半戦4

そもそも、ダンジョンと言う物が発生する様になってから、それなりの時間が経過している訳だが、分かった事はあまり多くないのだ。

例のジダン…氏の一件以来、うちのダンジョンコアが成長して、真面にコミュニケーションが取れる様になってから分かった事の方が、それ以前に判明していた事より多い位だ。

そして、うちのコアの言っている内容に関しては、それなりに納得できる部分もあるのだが、未だ検証されていない部分も非常に多い。

そもそも、事実(論)や法則と言う物は、事実の検証の上で認定されるもので、検証されていない情報は、論や説では無く仮説の一つに過ぎない。

それは、いずれ事実の確認によって裏打ちされ、論や説となる場合もあるし、間違いとして葬り去られる可能性もある、と言う事に他ならないのだ。


そもそも、現時点で分かっていると考えられている部分についも、うちのコアに本能的にプリセットされている情報が元ネタである以上、それがどこまで正しいものなのか等検証しようがないのだから。


そんな不確かな情報に基づいて話を進めなければならないのだから、忸怩たる思いを抱きながら、なるべく自信満々に見える様にやってきた心算ではあるのだが、内心は常にいつばれるか冷や冷やだ。

ただまぁ、お陰様で人の褌で相撲を取れる訳だから、製薬会社には感謝しかない。少しくらいはこれまでの経緯を水に流してあげても良いかも、とか考えちゃうよね。

どうせまた、そんな事考える必要なかったか、とか思わせてくれるんだろけど。


ただ、研修生たちは想定以上に順調な仕上がりを見せてきている。

このまま行けば、予定より早めに魔力操作を覚えて、後半戦に折り返せるかも知れないな。


そこから最後の薬師に成れるかどうかは保証の限りではないけど。こればかりは適性次第だからね。

薬師になる為の訓練は過不足無くやっているんだから、なれなかったら、適性が無かったとあきらめてもらうしかない。

実際に、マスター・サブマスターと言う裏技的なサポートがあったとは言え、スキルが生えた者(俺)と生えなかった者(妻)の実例があるんだから。



何のかのと言いながら、研修も約2ヶ月、9週間を経過していた。

その間、探索者スキルを生やした者は更に増えて、24名に達していた。

現在、研修受講者は29名で内訳は、魔力操作コース:24名、農民コース:3名、《ダンぶら》コース:2名になる。

なお、1名は中々スキルが生えてこない事を苦に依願(自主)退職している。依頼者側からは、今回の研修については特に適性の大小を見極める事を目的とする部分が大きく、十分な成績を上げていると評価されているとして、残留させる方向での交渉が行われた様だが、意思は固く慰留する事は叶わなかった様だ。

また、《ダンぶら》コース継続中の2名については、研修記録を確認してサボり等の履歴は無く、十分な探索経験を積んでいるにも関わらずスキルが生えてこない状況から判断して、適性が無いか低い事が想定されたため、農民コースへの方向転換を製薬会社側には提案した。


この件に関しては、碌な適性判断の根拠となる検証データの集積が無い事から、研修開始時点での適性判断は不可能として、研修状況に応じてコース変更等の提案を行う事で依頼者側と同意しており、研修途中での方向転換等にクレームを受け付ける心配は無いので、安心して提案出来た。


なお、本件については、依頼者側と当人達との相談の上、今後の為のデータ収集(適性の低いもしくは無い人の見極めの為の基礎データ収集)の為に、当人達からの中止の要望が無い限り《ダンぶら》コースでの研修を継続する事になった。


余り実りの無い事に人を使うのは気が引けるが、確かにそれなりに頑張った場合、どの程度のタイミングでスキルが生えるのか、或いは生えないのは気になると言えば気になる話で、こんな公開処刑みたいなやり方は関心しないが、当人達も納得の上と言うのであるので、問題ないと判断した。


ある意味貴重な機会ではある事だし、こちらも確りサポートするので確り頑張ってほしいものだ。


そして更に1週間が経過し、研修開始から10週間が経ったある日、遂に技能スキル:魔力操作が生えた者が現れた。

時間にして、魔力操作コースに転換して5週間。

まぁ、想定通りと言えば想定通りだ。


どんな人間であれ、ダンジョン内を探索するのであれば、量の大小の差は有れど体内に魔素を吸収し保持していない者はありえない。そもそも探索者スキルと言うものが魔素吸収による身体能力の底上げの結果なのだから。

そして探索者スキルがあれば、間接的なサポートになるが、多少の魔力操作や身体強化は出来る様になる。

と言うか自然回復量で賄えてしまえるレベルのパッシブで微弱な強化がその個人の資質やレベルに応じて常時行われる様になるから、パンピーよりはるかに強力な身体能力を持ち得る事になるのだ、探索者は。


探索者スキルのサポートで魔力操作や身体強化を繰り返せば、やがてそれは確りとした技能スキルと言う形で実る事になる。

まぁ、身体強化スキルは製薬スキルや薬師スキルを生やすのに必須では無いが、製薬時に材料として使用する生薬はそもそもダンジョン内でしか得る事が出来ず、うちのダンジョンの場合なら、通路脇などに雑草の様な形で生えている。

それを刈って手に入れる以外となると、深層エリア内にある農業エリアか、研修用に臨時に作った農業エリアで農作物として得るしかない。


そして、こいつらをそれなりの量を得るには、農作物として効率的に育成する必要があるのだが、この農作業と言うヤツが基本的に結構な体力勝負なのだ。

薬師コースは兎も角として、農民コースをスムーズに進めようと思えば、身体強化スキルを得ておくに如くはなく、準必須スキルと言って良い。(農業スキルを得るのに必須スキルでは無いが、農業スキルを育てる事で不慣れな体へ大きな負荷を与える形になるので、身体強化スキルを育てるのと同じ形になり、その都合で途中で生えて来る事の多いスキルだ。)


と言う訳でもう少し今のコースでの研修を継続して、後何人か魔力操作スキルや身体強化スキルが生えてきたら、少し予定より早くなるかもしれないが、最後のコース変更、薬師コース・農民コースへの最終変更を提案をして、調整を行い、後半戦の最終育成に入る事になる。


そして更に1週間、研修開始してから11週間が経過した。

その間、魔力操作スキルが生えた研修生は更に1名、身体強化スキルが生えた研修生ガ2名出た。ただ、流石に3人では流石に少なすぎて、後半戦の薬師コースを開設できない。

と言うか依頼者側は、それでも早めに後半戦を始める事を希望したが、そうなると今のレベルの肌理の細かさで、魔力操作コースのフォローが出来なくなる。それで良いかと確認したところ、正気に戻った様で、もう少し現状維持での研修を継続する事になった。


そして更に1週間、研修開始してから12週間が経過した。

その間、魔力操作スキルが生えた研修生は一気に10名増えて12名、身体強化スキルが生えた研修性も15名増えて17名、重複してスキルの生えた者が10名居るので、現状でスキル保有者は19名、未保有者が5名となっていた。


実は、ダンぶらコース2名中1名は探索者スキルが生えたのだが、最後の一人に未だ生えていない。そこで当人達と面談して依頼側と相談した結果、もうしばらくは最後の2人でダンぶらを継続して、状況のモニターをする事になった。


なお、流石に魔力操作持ちの12人については、更に1週間継続で遊ばせておく訳にも行かないので、予定より1周早くなってしまったが、本格講習スタート前のお試し講習と言う名目で、魔草に自身の保有している魔力を付与する練習を始めた。

この訓練は、自身が保有する魔力を魔草に付与すると言う、自身の魔力を枯渇させる形の地味にきつい訓練だが、この先製薬する際に材料の魔草の品質が今一だった場合、魔力付与で薬効を調整する事になるので、非常に重要な訓練になり、また、この訓練で魔力を枯渇させると、当人の魔力保有可能最大量が増えると言う地味に重要な訓練になるので、余裕のある時、寝る前などに行って最大量拡張を目指す重大な訓練になる。


そして運命の前半最後の1週間、研修開始してから13週間が経過した。

その間、更に魔力操作スキルが生えた研修性は一気に11名増えて23名、身体強化スキルが生えた研修性も6名増えて23名、重複してスキルの生えた者が22名居るので、現状でどちからのスキルを保有している者は24名、片方のスキルが未保有の者が各1名合計2名となった。

さらに、農民コース3名、ダンぶらコース2名となっている。




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