第39話 薬師育成4 研修開始・オリエンテーション1
いきなりの波乱を含みながらではあるが、薬師研修がスタートした。
まぁ、スタートしたと言っても、先ずやることは資格の確認だ。
製薬会社との約束で、スキル入手の為の研修の為とは言え、ダンジョンに立ち入る為には原則、探索者資格の取得が必要となる。
これは、一般的な意味でもダンジョンに立ち入る為に必要とされる資格なので、この資格の取得を以て、ダンジョンに立ち入る際にはらうべき最低限の注意事項を承知していると判断する事が出来るのだ。
まぁ、これに関しては、ダンジョンのある自治体ではどこでも月に1回は研修込みの試験を行う事になっていて、さして狭き門と言う訳では無いそうなので、問題無く取得出来ているのだろうが、偶にその手の事を調べもせずに、安全帽被ってゲバ棒片手に凸ろうとする強者もいるので、一応ではあるが調べる事になっている。
と言うか、ゲートと言うシステムは、その手間を避ける為に出来たのものだそうだから、人生と言うヤツは侮れないモノだと思う。
一応、特例的に無資格でも立ち入りが認められる者(産廃業者:ダンジョンに恒常的に立ち入りが必要な業者向けに発行される立ち入りエリアが限定された有期許可証があり一定期間毎の更新が必要、葬儀参列者:葬儀に関係するエリアへのみ立ち入りが許可される1Dayパスの様な物が発行される。)もいるにはいるが、今回の研修では所謂探索に類する行為をするので、その種の忖度は無しだ。
因みに、通常のゲートを通った後で一般の探索者が入り込まない様に研修で使用するエリアへの出入りは、専用のゲートを通らないといけない仕組みになっている。
このゲートへの登録を以って、資格の確認とする予定だ。(有効な資格証が無いと、ゲートに登録出来ない。)
今日は、このゲート前に集合する手はずとなっており、到着した時点順番に資格確認兼ゲートへの登録を行う予定だ。登録の終わった研修生はゲートを通ってすぐにある玄関ホールで全員が集合するまで待機してもらう事になっている。
研修生の男女比は、想定通り女性がやや多めの17人、男性が13人だ。
式典の様なモノは要求されていなかったので、特にすることなく、全員揃ったところで、レストルーム(全員が着席して話が出来る施設はここか製薬室しかない。)へ移動して、明日以降の予定のオリエンテーションを始めた。
明日からの予定(職業スキルが生えるまで探索をしてもらう)をざっと説明して、探索用の装備を配るり、それを持って更衣室に移動してロッカーを割り当てる。探索用の装備を入れる都合上、ロッカーは大きめのものを用意してもらった。
ロッカーの割り当て終えたら、実際に探索着(探索者用に開発された丈夫で衝撃吸収性、耐刃性が高い専用着)に着替えてもらい、ちゃんと動けるかどうかの確認だ。
事前に確認してサイズに合ったものを申請してもらっているが、中には見栄を張って小さいサイズで申請する人もいると聞く。
しかし、事は探索の成否、と言うより着る者の命に関わって来る問題だ。
念を入れて。ちゃんと動けるか確認しておくに越した事はない。
探索者として活動を始めると、結構な運動になる為、先ず暫くの間、体が慣れるまでは、サイズが絞られると聞く、その後で探索を続けると筋肉が付いていくらしいのでサイズアップしていくらしいが、今回の研修でどの程度体型に変化が出るかはまでは分からない。
よって、体型の変化に合わす事が出来る様に、かなり幅を持って余分に服の用意はしてある。
着替えが終わったら、玄関ホールに再度集合して、研修施設の見学だ。
とっても、現時点で準備が終わっている施設は大したものは無い。
先ほど案内したロッカールームの先に用意したシャワールーム、トイレ、食堂兼レストルームとそれに付随した給湯設備・小型ジム等、休憩用の小部屋、製薬(研修)室位だろうか。
あぁ、研修用のダンジョンの入口とそれ用のゲートを忘れていた。
一通り案内が終わり、玄関ホールに戻って来たところで、レストルームに移動して、
装備品の使い方や装着法を覚えてもら講習がスタートした。
自分で一通り装着をして、確認を行い、2人1組になって、お互いの装着状態を確認しあい、ちゃんと装着できている事が確認出来たら終了だ。
大切なのは、自分だけでは無く、相手にも必ず確認してもらって漏れが無い事をちゃんと確認する事だ。
これが終わったら、装備品の使い方の勉強だ。
基本的にこの研修では、魔物を倒してもらい職業スキル:探索者(探索者でなくても良い)を生やしてもらう予定になっている。
その為には魔物を倒してもらう事が早道な訳だが、これはマストと言う訳では無い。
ぶっちゃけ時間がかかって良いなら、ダンジョン内にいるだけでも魔素を吸収する事は出来るのだ。ただし、その速度は魔物と戦闘する場合と比べると遥かに緩やになる見込みであり、効率もかなり落ちる事になると想定されている。
また、この方法の場合、職業スキルは生えて来ない可能性もある旨の説明を合わせて行った。
因みに職業スキルが生えないと言う事は、職業スキルによるサポートが受ける事が出来ないと言う事で、そうなると自分でどうにか技能スキル:魔力操作を生やしてもらう必要が出てくるのだが、生憎、私はその方法に心当たりがない。
また、魔物と戦う事を受け入れてくれた研修生には、こちらで用意した魔物と戦ってもらい、倒した上でその経験(魔素)を吸収してもらい、職業スキルを生やしてもらう予定なのだが、困った事が一つあった。
と言っても大した問題ではない。
ぶっちゃけてしまえば、比較的簡単に倒せる魔物は、大概かわいい系哺乳動物(リス、コアラ等)の魔物かキモい昆虫系(芋虫等の変態前の昆虫類)、軟体生物系(イモリ、ヤモリ、ナメクジ等)の魔物かの3択なのだ。
一応、こいつらより少し強いが楽に倒せる魔物も居るには居るのだが、流石に、人型の魔物(ゴブリン等)を倒せ=殺せと言うのは、違う意味で酷かなと思うので候補として例示はするが、実際に戦ってもらう候補から外して考えている。
一応、安全な魔科植物の育成・採取作業等でも魔素を吸収できるので、魔物と戦うよりも効率は落ちるし、余分な時間が必要になると思われる。また、得られる職業スキルも探索者では無く農業系になる可能性もあるが、そう言う方法も無くも無い旨の説明を行った。
「…と言う訳で、基本的な育成法は、戦闘、農業、散歩の順で必要とみなされる期間が短くて済む見込みですが、そちらから与えられているスケジュールから逆算すると、皆さんには、魔物と戦って頂くしかないと言う結論になります。
もちろん、この後で会社側と話し合って頂いて、時間のかかる散歩コースなり、農作業コースなりにシフトする許可を取って頂いても構いません。
会社側から、誰それについてはどのコースへの変更を認める、と言う連絡さえ頂ければ、その方法にシフトした育成スケジュールに調整します。この後、会社側と調整してください。
とりあえずここ迄で、何か質問のある方は?」
そう水を向けて、研修生達を見ながら暫く待ってみたが、特に質問等がある様な素振りの者はいなかったので、話を先に進める事にした。
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