第37話 薬師育成2

はっきり言ってしまえば、ここでの半年でJobが生えないのであれば、基本的に探索者としての(魔素を体に取り込む)適性が無いと判断されて仕方が無い程度しか適性が無いか、やる気が無いと判断されてお帰り頂く事なってもやむをえない程度にしか向き合わなかったか、のどちらかだろう。


研修開始(此処に派遣されて来た)時点で、その旨の告知も行うので、真面目に向き合う気のある者はそれなりに真面目に訓練と探索もどきを経験して、Jobを生やす事が出来ると見込んでいる。


実際に、探索時間が制限される兼業探索者(週末探索者)でも無ければ、殆どがうちに出入りする様になって1~2か月でJobを生やし、その後1か月ほどの馴致期間?を経て卒業していくと言うデータがある。

(コアが保有している記録をチェックして判明した。)


この段階をクリアした者には、第2ステップとして魔力操作をスキルとして習得してもらう訓練に入ってもらう。

何某かのJobスキルを得た時点で、その探索者には最低限、ダンジョン内に充満する魔力(魔力の素と言う意味で魔素と呼ぶ)を感知し、その魔素を取り込んで、操作する能力を得る事になる。

ただし、出来る操作は自身の持つJobスキルやスキルのレベルに応じてと言う事になるので、探索者等の所謂初級職のJobスキルしか持たない状態では、大した事は出来ない。


一般に、初級職の探索者が最初に出来る様になる魔力操作は、身体強化だ。

自身の体に魔素を取り込み、その魔力を使って、身体能力を一時的に向上させる。

文字にすると簡単そうに見えるが、それまで、魔素を感知する事が出来ず、取り込むことも操作する事も碌に出来なかった者が、ある日突然出来るはずだからやって、と言われても、急に出来るものではないらしい。


らしいと言うのは、私や妻は、マスターに成った時点で全てのスキルを低レベル(Lv1)で使う事が出来る様になったので、魔力操作に関しても最低限の事は出来たし、それで苦労した事も無いからだ。しかもこの魔力操作、製薬作業などで魔草などに魔力を浸潤させる作業を行う事で経験を積める様で、比較的簡単にスキルとして生やす事が出来たし、今では、アンチエイジング液の製薬を俺が担当している事もあってLvも5まで成長している。


だが普通の探索者は、訓練によって魔力操作の経験を積んだり、日頃の探索の中で魔物を倒す事での経験の積み上げたりする必要があり、いきなり使える様なものでは無いらしい。

一般的には初級職を得て、この魔力操作スキルを使って身体強化が安定して出来る様になる事で、初心者を卒業したとみなされるそうだ。

この場合、適性によって魔力操作スキルが生える場合と、身体強化スキルが生える場合、両方がスキルが生える場合があるそうだ。


とりあえずここまで来て、魔力操作スキルが生えてくれれば、製薬スキルを使って製薬する際の魔力付与の補助をさせる事が出来る様になる。

そうすれば、あと製薬スキルが生えるまで時間の問題だろう。


問題は、どんなクスリを作る時の補助として修練させるかだな。

ぶっちゃけ、アンチエイジング液ばかり作っても、どうにもならない。

研修中に俺がメインで作ったポーションは、俺の物になる約束だ。

経験を積ませる為にサポートに入らせて作るのは構わないが、その結果、使う予定の無いクスリばかりが積み上げて行っても仕方が無い。

こいつをサロン以外で市販する予定は無いのだ。

幾らアンチエイジング液は、ダンジョン内で保管する限りはほぼ劣化すること無く保存できるとは言えだ。

何より俺の経験にならないのだ。

どうせ仕事でやるなら、その辺も積み上げる事が出来た方が良い。


今から準備を始めるとして、研修生が製薬のサポートに入れる程度に育つまで恐らく最低でも2~3カ月ほどは時間がかかる見込みだ。

その間に製薬に使える程度に育つ魔草類を使って出来る薬で、適性の微妙な者による補助(邪魔)があっても確実に作れる難易度の薬…

だかと言って、使わないから捨てると言うのも、なんか違うしな…

何かいいやつ(薬)は無いかな?

コアと話をかわしつつ、候補を絞っていく。


そう言えば、デバフポーションって分野もあったよな。

基本的に人に使う事の無いもの(薬)だから、薬事で審議してもらう必要は無い。

それでいて、手ごわい魔物相手に使って多少たりとも効果があるのであれば、相手を弱体化出来るので戦いを楽に進める事が出来るはずだ。

基本使い切りの消耗品だから、幾つ作っても問題無い。最も消費してもらえるのであれば、と言う条件が付くが…


確か探索者の身体能力に関するステータスは

・ストレングス(肉体的な頑強さ)

・アジリティ(俊敏さ)

・デクスタリティ(器用さ)

・スマート(頭の良さ)

・メモリー(記憶力)

・ペイシェンス(我慢強さ)

の6種類が基本だったはず。


このうち、メモリー(記憶力)は、ペイシェンス(我慢強さ)は直接戦闘に関係ないはずなので、デバフで低下させてもあまり意味が無さそうだ。

意味がありそうなのは、ストレングス(肉体的な頑強さ)、アジリティ(俊敏さ)、デクスタリティ(器用さ)、スマート(頭の良さ)の4種か…


ストレングスは物理攻撃の強さに影響するはずだし、アジリティは攻撃頻度、デクスタリティは器用さ…攻撃を確実に当てたり、攻撃をよけたりとかその辺か?、スマートは魔法の使役に関する事で、攻撃力や防御力の上下にも関わっていたはずだ。


スキル無しのお邪魔要員が手伝っても作成の成否にさほど大きく影響が出てこないクラスのポーションとなると…

俺の製薬スキルがLv7だから、素で邪魔が無い状態ならばLv6以下の中級ポーションまでなら殆ど失敗な意思で作れるはずだ。

ただし、ポーション類はLvが高くなると製薬にかかる時間も伸びるから、お邪魔虫の茶々が入る事を考慮したら低級ポーションって事にした方が色々都合が良い。

ただ、低級ポーションでは、デバフの効果は高めに作れても1割程度、効果時間もお察しレベルだったはずだ…

果たしてそんな微妙な物に需要はあるのか?


イクシ氏だけでは無く、氏経由で知り合いにばら撒いて使ってもらってて、ニーズの確認をしておくか。

特に、スマート向けのデバフポーションって、需要はどの程度あるんだろうな?


それと瓶の強度設定の調整も必要だな。

運んでいる最中に割れてしまう様だと、自分をナーフ(弱体化)してしまう可能性がある。

マジックポーション(魔法薬)だから重複して使用する羽目になっても効果が重複する様な事は無いはずだけど、敵を弱体化させる為の物で自分が弱体化する様では話に成らない。

でも逆に頑丈に作り過ぎて敵にたたきつけても割れずに、中身を浴びせる事が出来ない様では、これも話にならない。


果たして、うまく調整できるもなんだろうか…

この辺も要相談だな。


とりあえず、後はこの線でコアと相談して、当座受け入れ可能な研修生の数とか考えなきゃならないしなぁ。

研修用に農業エリアや製薬エリアの拡張も必要か…

今迄必要が無かったから2層目とか作らずに来たんだけど、いっそ育成要員受け入れ用に作った方が良いのかな?

今のコアの能力なら楽々対応出来るはずだし、

ついでに葬儀用にコア部屋を別階層にして、直行直帰出来る様にしておくか?

その方がややこしくないよな?!


とりあえず、今の探索者の傾向から判断すれば、最終的に魔力操作スキルが生えてきて残る事の出来るのは良くて100人に1人程度の線で落ち着くはずとは思うんだけど、きっと選ばれてやって来るのは、そっち系の頭に筋肉詰まっている様な連中ではなく、薬科学科とかで新薬開発とかしてた連中で、新しい薬の開発方法がどうとか言って、胸ときめかして来るんだろうからな…


道程を考えれば始めはガテン系のノリになるだろうから、逃げだす連中が出て来る可能性がかなり高いとは思うんだけど、どの程度残る前提で想定しておけば良いのか、想像もつかないのが現状だよな。


だからと言って、今更、やっぱりやめたとも言えないしな…


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