第35話 新薬販売?
新しく開発?したバフポーション6種については、法の規制の厳しい国内での販売は出来ないだろうと言う判断をしていたのだが、少し状況が変わって来た。
調べてみると、本来、薬の審議と言うものは、厚労省管轄の薬事審議会と言う所で行うものだったのだが、現在では薬事・食品衛生審議会と言う組織に統合されて、その下に置かれている医薬品第一部会、食品規格部会などの各部会と、更にその下の調査会が、医薬品の承認や副作用調査、劇薬の指定、食中毒の予防対策、食品添加物の基準設定等、薬事・食品関連の事柄の調査・審議を行っているそうだ。
恐らく、そうする事でより総合的な審議が出来る様になると言う言い訳なのだろうが、元々利権や派閥争いなどが複雑に絡み合った碌でも無い組織だったのを、椅子の数を少なくして、その争いを更にひどい事にしたところで、碌な事になる訳も無く、実際に碌な事になっていない様なのだ。
そもそもこの国は、ほんの150年程前までは、鎖国をしていると言う状況と合わせて、食料自給率ほぼ100%を誇る農業国家だったのだ。
それを諸般の外圧等に負けて開国し、開国進取・富国強兵を国是とする国作りを始めた。実を言えば、これは討幕戦争当時に掲げた尊王攘夷の攘夷(実力行使で外国人を排斥しよと言う思考)部分を一方的に破棄する公約違反とも言える蛮行だったのだが、討幕戦争時に主に国外より借款した技術や金銭の返済等の都合によって、破棄される事になった。(因みに、「尊王」の部分も実際には天皇をお飾り程度にお祭りしただけで、薩長同盟の首班で実権力を独占した時点で違約率80%以上の公約違反だ。)
その結果、強力なプロパガンダが展開され、開国進取・富国強兵を前面に押し出した強硬策が採られる事になった。開国進取と言うのは、「開国して〔鎖国を止めて〕進んだ(海外の)技術などを取り入れていき、外国と並び立つ国になろう。」程の意味だそうで、その意図が飾られてごまかされているが、戊辰戦争等でイギリス等から大きな借款を受けた明治政府(薩長同盟)が返済の為に開国を断行する言い訳と言うのが現実に近い所だった様だ。
その結果、自国民向けの食料生産を担う第1次産業を蔑ろにして、加工産業をメインとする第2次産業を推し進める国への変貌していく訳だが、その結果が、150年後の世界で、片方の手で使い切れない食べ物を大量に廃棄する様な文化?の育成と国内での食糧生産の減産を推し進める政策を、もう一方の手でいずれ食料不足になるので昆虫食を推進しましょう等と言うでたらめなプロパガンダなのか何なのか分からない様な矛盾した事を訴える政策を推し進める訳の分からん政府を形作る様になるのだから皮肉なものだ。
そんな訳で、どうせダメだろうと全く期待せずに薬事の審議を全く受ける気も、その為の準備もして来なかったのだが、何処で嗅ぎつけたのか、ハイエナみたいな連中が、審査を受けてはどうかと、勧めてくる様になるのだった。
問題は、審査を受けるには、最低限審査官を納得させるだけのデータの積み上げが必要で、そんなものの積み上げ為に薬作りに精を出す気に全くなれなかったので、無視して放置を極めていたのだが、外野がギャンギャン吠える様になってきて実に五月蠅い、と言うかウザイ状況になりつつあった。
因みに、俺が普段の業務で使っている時間の割り振りは、
・アンチエイジング液の作成:1Day(原液作成0.5Day+維持液作成)/2Week
・産廃業者等への対応:2~3Day/1Week
・葬儀業者等への対応:2~3Day/1Week
・その他雑務:1Day/1Week
位の分配になっており、かろうじて週一の休みだけは死守している状態なので、余程たっぷりと(金を)積んで貰える事がわからないのであれば、余計な事に廻す時間は全くないと色々お断りしている状況だ。
なお、産廃の搬入及び葬儀と言うのは、基本的に5Day/1Weekで行われており、私が対応出来ないタイミングでの業者への対応は妻が実施している。
また、私が対応する時間が無いので、農業エリアでの材料生産の監督は原則妻の担当で、私が出来る時間が取れる時だけ、私が統括する感じだ。
今まで言及してこなかったのだが、製薬スキル程では無いのだが、植物の育成に関しても適性があったらしく、妻には何も生えてきていない(むしろ事務職に適性があるらしく、そっち系のスキルが生えてきていて、ダンジョン関連の事務職って何?って感じな)のだが、俺は《緑の手》と言うスキルが生え、低いながらLv2にレベルアップしており、最低限週1で数時間程度のスパンで関与する事で、生産性と生産量、品質の向上に影響を与えているそうだ。
まぁ、そう言ってもあくまで関与出来る時間が少ないので、全体でも若干としか表現できない様な程度の向上しか見込めず、現行の使用量:生産量比で考えた場合、俺の関与がある事でかろうじて1を割り込まなくて済んでいて、関与できなくなると1を割り込むので、それを見越して妻が業者への対応業務を分担している、と言う感じだ。
実を言えば、俺が製薬を分担する様になった当時は、そこまでギリギリでは無かった(元々妻は、10日に1回の割合で3D+1Dかけて製薬を行っていて、残りの日々をその他の市民生活に割り当てていたはずなのだが、礼のイベントで増員した分や、サロンのメンバーからの捻じ込みでと言うか、事実上断れない類の新規メンバーの参入などもあり、向上した生産分はほぼ全てそちらに吸い上げられている現状の様だ。
そんな感じで、のらりくらりと余計なことを躱しながら過ごして来たのだが、とうとう年貢の納め時を迎える時が来た…の、か、な?
どう言う事かと言えば、これまでの経緯を考えてみれば当たり前とと言えば当たり前なのだが、こちらの今迄の塩対応に切れた製薬会社が、人材育成契約のオファーをぶっこんで来くさったのだ。
今迄、さんざんうちに対してやってくださりかがった事を考えれば、受け入れてやる必要性を全く感じなかったのだが、ヨクヨク考えてみれば、かなり楽に稼げる新しいダンジョンビジネスのチャンスかも知れない。
そう思えて来る部分もあったので、関係するかも知れないイクシ氏に連絡を取る事にした。
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