第34話 新薬開発3

そんな何のかので、すっかり製薬担当の様になってしまったが、製薬自体はスムーズに進んで、一応の完成を見る事が出来た。

と言っても、未だ半分の3種類までだ。バフポーションである以上、人が服用する事を前提にしている訳だが、そうであれば最低限の毒性と言うか有害性の確認が必要になる。

一応、鑑定を使って、恒常的に何らかの後遺症が残る様な害は無いらしい事は解ってはいるのだが、だからと言って無確認で外に出して良いと言う物でも無い。

被験者は、先ずマスター権限で即死しない程度の毒耐性を与えられている俺と妻の2人、それが終わったら希望者を募って服用してもらうか…

いや、イクシ氏に連絡する方が先かな。

無期限の魔法契約で氏を行動を縛っている以上、同じ縛りは俺にも生じる。

魔法薬としての無害性と有効性が確認出来た時点で氏に知らせないと、契約違反に基づくペナルティが俺を苛む事になる。そうなると、アンチエイジング液の製薬にも支障が出る事になる訳で、それだけは避ける必要がある。

この前みたいに、届かないと言ってサロンのメンバーにこっちに怒鳴り込まれても困るしな…、

はぁ…、仕方が無い事だったとは言え、めんどくせぇなぁ。


とは言え、結局、妻には製薬スキルが生えなかったからな。

今後も継続して作る必要がある以上は、コスパを考えれば、俺が作る事になるんだろう。

そう言えば、アンチエイジングと言う言葉でごまかしているんだが、うちの夫婦もサロンのメンバーも事実上不老モードに入った様なものなんだが、これが一生続くとして、どれだけの長さの一生になるんだろうか?


それと、地球には何人か運よく?ダンジョンマスターに成った御仁が居るんだが、彼らが不老になったと言う話は聞かないんだが、何かそう言う情報の流出を防ぐ何かがあるんだろうか?


ざっと調べてみた感じでは、ダンマスだからと言って、不老化したり、若返った風でも無いんだよな…

どう見ても元々の俺より齢を召していると言う風貌の爺さんもいれば、ゴリマッチョの俺より齢喰ってる風のおっさんもいるし。


これはもっとずっと後になって知った事なのだが、ダンマスになったからといて、何でもかんでもコアとの間で良好な意思疎通が出来る物ではないらしい。

一応、マスターが強く希望する事で、ダンジョンの維持や存続に抵触しない事であれば、叶えてもらえるらしいのだが、逆にダンジョンの存続や維持に影響する様な事は無理だし、そうで無い場合でも強く願わないと叶えられる事は少ないらしい。

そもそも、ヒューマンタイプのマスターと良好な関係を築けるコアがそう多くは無いらしいのだ。


そんな訳で、出来た新作バフポーションは、

①鑑定で最低限の安全性確認

②マスター夫妻が試飲

③イクシ氏に連絡(希望に応じてレシピとサンプルの引き渡し)

④ダンジョンを訪れた探索者の内、希望者による試飲

の順で試験を行う事にした。


なにせ、1度に作るポーションは、用意した設備の関係で、業務用大型寸胴鍋換算で半分ほどの量になる。ざっと少な目に見積もっても50L程にはなる目算で、それを栄養ドリンク用程度の大きさの小瓶入れて服用するのだ。

ざっと少なめに換算しても1種500本分程にはなる訳だが、うちのダンジョンに来る探索者全員に贈呈しても1週間やそこらでは普通に捌ききれる量ではない。

それをモニターの募集要項に同意した人にだけ提供して、帰りに感想を投函してもらう事で効果を確認する。

もちろん、服用は俺の目の前でしてもらい、瓶も回収するし、服用者の名前と言うか探索者カードのIDもチェックしておく。

これは帰りに投函する約束の感想をちゃんと記載したかどうかをチェックする為で、ちゃんと記載しなかった奴には、次回のポーションの試供はしないからだ。

(あくまでも、贈呈するのでは無く、効果の程度や副作用の有無などを広くチェックするのが目的の試供だから、こちらの目的に協力しなかった者には今後サンプルを提供しないと言う建前だ。)


最終的に、6種のバフポーションのそれぞれについて、最低でも300件程度の試供データが収集出来て、概ね効果の程度や効果時間、効果終了後の反動などについての確認が出来た。

結果から言えば、今回の作成した6種の(低ランク)バフポーションは、多少効果に個人差が出たが、対応する能力を1割程度上昇させる効果が3時間ほど継続し、その後少しずつ効果を落としながら何某かの効果が6時間程度は続く事が期待出来るものだった様だ。また、効果終了後を含めて、反動・副作用の報告は無かった。

この反動が確認されなかった件についてコアに確認したところ、低レベルポーションの反動である為、認識するほど大きなものでなかった為ではないかとの事だった。


更に、捌ききれなかったポーションを使っての実験になった為、サンプルとしては不十分としか言い様が無い数のデータしか取れなかったが、複数種類のポーションを重複して使用しても効果に変わりはなく、明確な反動・副作用的な問題も確認されなかったが、多少の違和感を感じたがそれが反動なのかバフが切れた為にそう感じただけなのかはわからなかった程度の回答が複数あった。

更に更に、効果が落ちてきたタイミングで追加して飲んでも、重複した効果は期待できないが、効果はリフレッシュされて、そこらかカウントが始まる事が確認されている。また、一度に多量の同じポーションを飲んだ場合の影響は、現時点で悪いものを含めて確認されていない。


尤も、この国の法的な問題が解決出来た訳でもない以上、薬として売る事は出来ないので、試供品としては十分な成果を残せたと言って良いだろうと考えている。

なお、完成したポーションは、基本常温保存となるのだが、使用期間は、賞味期間、消費期間共に現在継続して確認中だ。


まぁ、もともと俺の製薬スキルのレベルアップを目的にした製薬だったのだし、実験の規模もお察しで、俺のスキルレベルが1上がった事が最も重要事と言う判断だったので、余程うちに有利な条件での引き合いでもなければ、今後作る事は無いだろうと軽く考えていたのだが…

どうもこの判断が甘かった様で、結果として国内を含む世界中の探索者関連の団体から、作成オファーが殺到する事になってしまった。


曰く、明確な副作用も無く、特定の能力(ステータス)を1割も一定時間引き上げてくれる事を確実に期待できるクスリなど、世界中探してもここにしか無い、のだそうだ。

この件に関しては、うちとしてもそれなりの収入増につながりそうな事でもあるので、アンチエイジング液の作成に影響が出ない範囲でと言う条件さえ問題なければ、前向きに検討しようと言うスタンスで対応をする事になった。

ただし、やはりと言うべきか、当然と言うべきか、効能が確認されている生薬原料を一定量以上使ったものの販売や、効能と受け取れる効果をうたった形でのクスリの販売は、法によって制限を受ける事になり、少なくとも国内では販売出来ない可能性が高い。


正直、この件については、うちで積極的に対応する気は無いので、恐らく法の規制の厳しい国内での販売は出来ないと言う判断になるだろうと思われた。

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