第33話 新薬開発2
新薬の材料となる魔化植物類の栽培を始めて3か月過ぎようとしていた。
材料植物類の中には、樹や多年草に類するものも多く、通常の状態で収穫出来る程度に十分に育つまで数年以上の時間を必要とするはずのモノも多かったのだが、魔化した事が原因か、ダンジョン内で栽培している事が原因か、或いはその両方が原因かは不明良く分からないが、どれももう直ぐ収穫が出来る状態になりそうな感じに育っていた。
新しい作物もそうだが、これらの薬用植物の世話は相変わらずガーデン・ノームにお任せしている状態なのだが、よくまぁ、あんな小さな体で世話ができるもんだと感心してしまう。
勿論、小さいが故に細かな部分にも手が届く、と言う事もあるのだろうが、何せモリンガなどに至っては高さで10m、幅で50cmもある様な木なのだ。それを体長30cm程しかない侏儒が甲斐甲斐しく世話している姿を見ると何ともシュールな感じがして仕方が無い。
一応、この辺の植物類を育てる事が決定した時点で農業エリアの拡張を行っており、幅だけでは無く高さも拡張して、成長しても問題無い程度の高さの天井にはなっているし、足りなくなれば追加で拡張する余地がある事は、コアの能力的な意味でも魔力の収支的な意味でも確認済みだ。
後は、十分に熟成した物を収穫して、正しく処理を行い、ポーション化すれば俺のスキルレベルも上がる事だろう。
まぁ、あくまでも、《多分》と言うレベルの話にではあるのだが…
スキルレベルをあげる事が出来る程経験値を貯めるには新しい事にチャレンジする必要があるらしい。
らしい、と言う曖昧な表現になってしまうのは、それがコアの言だと言うだけで、世界的に認識されて十分に検証されたとは言い難いからだ。
実は、ダンジョン絡みのアレコレと言うのは現実の追認で、誰かが言い出した法則を、別の誰かが自分の経験に基づいて検証し、一定の確認期間を置いた上で間違いなさそうだと分かったものについて認定される、と言う手順で法則視されていく。
まぁ、この辺は一般的な法則認定のルール通りと言えばその通りなのだが、問題は、現実と言うものは色々な事象が複雑に絡み合った上で成り立っているもなので、中々その中から何某かの法則性を見つけ出す事は難しく、現時点で見つける事の出来た法則はかなり数が少ない。
その中に、スキルレベルの向上に関するモノは無いのが現状だ。
と言うか、ダンジョン内での行動が関係する都合上、戦闘や探索系統以外のスキルが生える探索者は殆どいない、生えたとしても、探索の役に立つ様に思えないスキルを育てるどころか触れようとも思わない、と言うのが現状の様だ。
私や妻はどういう運命のいたずらか、偶然対人的な意味でも何にも染まってないダンジョンのマスター/サブマスターとなった事から、普通は育てないスキルを育てる機会を得た。と言うか、育てざるを得ない状況になってしまった。
まぁ、主に妻の自爆が原因ではあるのだが。
その結果、スキルと言うものは、その人に応じた適性とその活動状況に応じて生え、育つものだと言う事が判明した。
例えば妻の場合だが、アンチエイジング方面に興味を持っていると言うか、趣味にしていると言うか、人生かけてると言うか、そんな状況にあったのだが、サブマスになった事で出来なかった事が出来る様になり、嫌になる程その為のクスリ作りをするっ事になった訳だが、どう言う訳か、スキルは生えて来なかったし、未だに製薬を失敗する。
一応、サブマスとして俺と同等の権限を持っているはずなので、スキルを持っていなくとも下級クラスの製薬スキルが使えるはずだし、アンチエイジング液は下級相当のポーションに類するはずなのだが…
対して俺は、製薬を失敗して普通に作ったのではどうあっても納期に間に合わなくなった妻の手伝いでクスリ作りを始める事になったのだが、適性があったのか、1~2回作った程度であっさりスキルが生えてきて、その後も色々あって作ると言うより作らされたと言う感じではあったのだが、結果として今ではスキルレベルが6になるに至っている。
スキルレベルと言うのはそのスキルの熟練度の事で最高値が10とされているのだが、製薬スキルを含むもの作り系のスキルに関しては、レベルが上がる事で作れるものが多くなっていく方向への能力の拡張と成功率の向上、もの作りに必要な時間の短縮が見込める。
具体的には、薬を作る場合であれば、薬を作る人のスキルレベルをaとして、その薬の製薬に必要な製薬の難易度をb、作成に必要な基準時間をcとした場合、製薬の基本的な成功率は、(9-製薬難易度b+製薬レベルa)×(9-製薬難易度b+製薬レベルa)〔%〕(ただし、最高値は99)、製薬に必要な時間は、製薬基準時間c×(製薬難易度b÷2+0.5)÷製薬レベルa〔時間〕になる。なお、製薬難易度は1~10の範囲で薬毎に固有の値を持ち、製薬基準時間も薬毎に固有の値があるが私の知る範囲では最長72〔時間〕だ。
感覚として、製薬レベルと製薬難易度が同じ値の場合、大体8割位の確立で製薬は成功する。難易度が製薬レベルより低い場合はめったに失敗しないが、難易度の方が高い場合はその程度に応じて成功率が下る。
例えば、嫁とサークルメンバーが必要としているアンチエイジング液類だが、必要な製薬難易度は1、製薬基準時間は72時間だ。
これをマスター権限しか持たない妻が作成する場合、マスター権限よる仮の製薬レベルは1なので、基本成功率は81%、製薬に必要な時間は72×(0.5+0.5)÷1=72時間≒3日となる。
これが製薬の必要レベル2のクスリだった場合、基本成功率は64%、製薬時間は72×1.5÷1=108時間≒4日半となってしまう。
対して、同じものを製薬レベル6の俺が作ると、基本成功率は99%、製薬時間は72×1÷6=12時間となる。
また、製薬の必要レベル2のクスリだった場合でも、基本成功率は99%のまま、製薬時間は72×1.5÷6=18時間だ。
特に製薬に必要な時間に関して、俺が作る事で大幅に短くなる事から、原則俺が作る羽目になってしまった訳だ。
また、今回チャレンジするバフポーション類は、製薬レベルが2~3なので、俺が作成すると1種類について約1日の時間がかかってまず失敗しないと言う見込みになるが、妻がチャレンジすると1種類について4日以上かかって5割から6割程度の成功しか見込めない。(ただし、成功しても失敗しても経験は積めるので、運が良ければスキルが生えるかも知れないし、俺の場合はスキルレベルの上昇が見込めるかもしれない。)
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