第32話 新薬開発1

例のイベントでSNSサロンのメンバーへのインビテーション(招待)を受けた公開立会員たちの内、入会を希望した者(結局全員)は、改めて魔法契約でサロンの規約や情報を漏らさない事を誓約した上、サロン内の古参メンバー間で必要情報を共有され、最終的に全員がサロンに参加する事になった。


その分の増産が必要な分の作成は(妻には事実上不可能なので)俺が受け持つ事になっていたのだが、実際に生産作業をする事で更に製薬スキルのレベルが上昇した結果、現在では月に2回、1回につき半日(12時間程度の意)程度の作業で妻が10日に1度、1回につき3日+αかけてする生産分も含めて全てを賄える程度に能力が上昇した事で、俺が担当する事になった。


最近では更に、妻からメンバー増員の打診を受ける羽目になっている。

このメンバーの増員の打診は、現行のパトロンメンバーからの要請らしく、問答無用に断る事は難しいらしい。

なので、薬の生産能力が向上しないとこれ以上の増産は難しいと言う話を盾に、俺のレベルアップ待ちになっているらしいのだが、今のままだと得られる経験が少ないので、当面は無理と言う事になりそうだ。


製薬スキルに関しては、同じ薬を延々生産しているとある程度で得られる経験値は頭打ちになる感じで、中々スキルが成長してくれなくなる。

既に前回のレベルアップから半年ほど経過して、結構な量の薬を生産したにも関わらず、スキルが成長しいないことから、これ以上の成長は難しいと判断せざるを得ないのが現状だ。

それこそ、ヒールポーション等の今まで俺が作った事のない上にレシピはわかっている薬作りにチャレンジでもすれば上がるのかもしれないのだが、ヒールポーションではアンチエイジング薬に薬として近すぎる事を考えると、微妙なチャレンジになるかもしれない可能性もある。

また、作ったとしても、それ見た事かと、製薬会社を喜ばせるだけの事になりかねない事を考慮すると、作ることに消極的にならざるを得ない。


それ以外の方法でどうしたらスキルレベルを上げる事が出来るんだろう、等と考えていたら、コアの方から提案があった。

どうやら、今育成をしている農場エリアをもう少し拡張して、作物を何種類か増やせば、今まで作った事のない新しいポーションの材料揃うらしい。

期待できる薬効は、特定能力の一時的な増強効果が期待出来るものだと言うのだから、所謂バフポーションと言う事なのだろう。

これまた何種類も類似ポーションがあって、それぞれ毎に効果が相違するんだとか。

『今ある農場を発展させる形で育成する作物を増やすのであれば、

2種類の作物を増やす事で1種類のポーションを、

4種類の作物を増やす事で2種類のポーションを、

5種類の作物を増やす事で3種類のポーションを、

8種類の作物を増やす事で6種類のポーションを作成可能になります。

これらのポーションの使用によって使用者に継続的に有害な影響を及ぼす事や中毒性・習慣性はありません。

また、最近の生もの(探索者)を色々吸収した結果、農場の拡張や管理に関しても能力的な余力は十分です。』

との事だった。

何か最近食い物(探索者)が悪いせいか、性格が変わってきてないか、こいつ、と疑いたくなる部分も無くもないのだが、どんなもんだろうな。

妻に相談しても、諸手を上げて喜ぶだけだったし。

この手の話題になると妻のブレーキは完全にぶっ壊れになるから、相談相手としては全く不適格なんだよな。


作成できるバフポーションは、服用によって身体能力の一部を一時的に増強させるものになるで、増強される身体能力は、

・ストレングス(肉体的な頑強さ)

・アジリティ(俊敏さ)

・デクスタリティ(器用さ)

・スマート(頭の良さ)

・メモリー(記憶力)

・ペイシェンス(我慢強さ)

の6種類だ。

ラック(運)を上げる事は出来ないらしい。それとももっとたくさんの種類の薬草を育てて、スキルレベルも育てれば上げる事が出来る様になるのだろうか?

まぁ、この種のポーションは物理攻撃力や魔法攻撃力に関係する部分(裏ステータス)を刺激する事で一時的に上げて敵に与えるダメージを増やす事効果があるだけで、本当の意味で能力が上がる訳では無いらしい。更に効果時間経過後の薬効切れから暫くの間一時的にナーフ(弱化)する副作用があるらしい。

しかし、一時的とは言え弱体化すると言うのだから、使い所が難しい薬だ。

しかもこれを国内で薬として販売する事は出来ない。

正確には、この国で未認可の何かを薬効をうたって販売すると、薬機法違反を問われる可能性があるのだ。

魔法薬と言う物は何であれ、検証が難しく、薬事の承認が極端に取りづらい。

と言うか、薬事審は魔法薬を目の敵にしていると言う話だ。


よって、薬を作るのは自己鍛錬の為、若しくは、海外等のそういう制限を受けない所での販売を目す、と言う事になる。

さてはて、どうした物か…、

等と考えていると、妻方面から解決策の提示があった。

例のSNSサロンのメンバー経由で販売してはどうか、と言う話だ。

良いのか、そんな話して。

少し前まで散々揉めたので、懲りたんじゃないのか。

とか言いたい部分ではあるのだが、所謂ヒールポーションでなければ、研究中の健康食品的な扱いで抜け道があるのだとかどうとか…

かなり前のめりにやる気満々な感じだ。


良いのかねぇ。

また、ひどい目にあっても知らないよ。

そう言っても、とてもその気は収まりそうもない感じだ。


まぁ、俺はとしてはとりあえず、新しい薬作りをためせて、その成果としてスキルのレベルの伸ばす事が出来れば良い訳で、その結果として出来る余剰生産物の始末に関しては、余計な後始末に巻き込まないと約束出来るなら良いよとしか言い様がないんけどね。

妻は、さっそく、パトロンメンバー相手にあーでもないこーでもないと相談を始めた様だ。


あーぁ、碌な目に合わない未来しか見えて来ないんだけどなぁ、などと聊かブルーになりながらも、畑の拡張と新薬作成の準備を指示するのだった。


まず1つ目は、オタネニンジン?

なんだこれ?

ん?

…この形は、チョウセンニンジンじゃねえのか、これ?


だとしたら、土地枯らしじゃねぇか!

俺の聞いた話じゃ、商品にするには、育ちの悪い分を間引いて、状態の良い物だけを選んでいく形で育てるらしいのだが、商品に出来るレベルの物を育てようと思えば畝1本の長さ1mについて1本位しか育てられないって話じゃなかったっけ?

それも、3年物以上の上物と言えるクラスのものを育てると、土地から滋味が失われてしまうので、たっぷりと有機肥料等を与えて1年以上世話しながら休ませて、滋味を回復させないといけないとか聞いた気がするんだが?

こんなもん、ダンジョンでまともに育つのか?

と言うかポーションの材料にするのにどんなだけ広大な土地を使って輪作する心算だよ???


「なに?」

《不足した栄養はダンジョン内の魔素が補うから大丈夫?》

《ポーションの原料として使う分は、他の作物と大して変わらない頻度で収穫できる?》

「ほんとかよ?」


次の作物は…、モリンガ?

なんだそれ??

聞いた事無いんだが???


「なに、なに?」

《別名『奇跡の木』と呼ばれる、栄養価だけでは無くて、水の浄化効果や、過剰なCO2の吸収効果も期待できるスーパー植物?》

「ふ~~~ん、熱帯性なのか…、まぁ、ダンジョン内で育てるなら大丈夫だと思うけど…、大丈夫なんだよな?」


3種類目は、藜(アカザ)?

「なになに…、あぁ、キヌアの親戚なのか。」

いや、別にキヌアについて詳しい訳じゃないけど、一時、妻がスーパーフードとか言ってはまってた奴だよな。

確か灰汁が強いから、良く水洗いしてサポニンだかを確り流さなきゃいけないとかで、その後で煮たり炊いたり蒸かしたりして食べる奴だったよな。

いや、一時嫌と言う位食卓にのぼったと言うだけで、他意はないんだ。

そっか、あれの親戚ね…


んで、次は…、モロヘイヤか

何か、やっと馴染のある名前が出て来たな。

あれだろ、ビタミンやカロテンが豊富なやつ。

何と言ったら良いのか…、うん、ねばねばするホウレン草?

なんか旨くなさそうなイメージなんだよな、確かえぐみが強くて生食には向かないんだっけ。

湯がいて食べるんだよな…。


そんな感じで新しく育てる直物をチェックしていくと、何処かで聞いた事がある様な無い様な名前の植物が…

何となく、真面に育てようとしても一筋縄ではいってくれなさそうな悪い予感に見舞われるのだった。

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