第24話 製薬レシピ公開3・イベント準備

まぁ、卵子細胞の破壊による遺伝子の継承機能の喪失…子供を作れなくなる問題は、あくまでも継続使用して若返り状態の維持をしている女性限定の問題なので、今回の公開イベントによって作成した薬液を1回限定で服用した人に出る様な問題では無いので、無視しても問題ないと言えば問題ないだろう。


ただ、一応公募申し込み時の了解事項の中には、この辺の免責に関しても紛れ込ませて記載しておく事にした。

何かの間違いがあっても面倒だしな、責任は負えないからね。


だいたいこちらに来るための交通費から前後の宿泊費用まで自己負担なんてコスパが悪い上に何があっても免責事項で補償しませんなんてひどいイベントに応募する様なヤツなんて、専業の研究者でも無ければいるはずもない。

うちとしてもこんなしょうもないイベントに金をかける気になんてさらさらないので、出来合いの格安サービスWeb申し込みサービスを利用して公開立会人の応募の受付をしたんだが、これがかなり大変な事になってしまった。


そう、想定外に応募が多くて、格安サービスで受ける事が出来るサービスの範囲内では捌き切れなくなりそうになってしまって、慌ててオプションサービスを申し込んむ事になってしまったのだ。

交通費不支給で応募要領や応募フォームの記載は、この国の言葉限定でしか公開されなかったから、海外からの応募は原則無いものと考えていたのだが、応募してきた人の大半が海外からだった。

「何でこんなに?」とか頭をひねっていると、嫁さんから『女性の美しさを維持する事への執着を甘く見過ぎ。』と指摘されてしまった。


だって、1回限りのイベントで、クスリの効果は保っても2週間程度しかないんだよ。

しかも使用前後の変化を含めて、動物園のサルの様にストリーミングで一般に公開されると言う、罰ゲーム付き…

俺なら絶対応募しないよ?!

そんなイベントに世界中から1万人もの人が申し込んでくるなんて思わないじゃん!


仕方が無いので、公開立会人の選定もストリーミングで公開する事にした。

だって応募が多すぎて、そうでもしないとおさまりが付きそうにないんだもの。

先ずは、応募の中に申し込み内容に瑕疵が無い事を確認して、

問題が無かった分をリスト化して、

抽選用にリストにナンバーを振って、

ナンバーにリンクした番号札を作って、

番号札を収納できる大きさの抽選箱を作って、

ド●・キ×ー△で売っているイベント用のラメ付きコスプレジャケットやら色眼鏡からをの胡散臭いグッズを買って来て、

準備万端でストリーミングで抽選状況を公開を致しましたとも。

全参加者総数、10人分。

抽選前に箱が空で中に細工が無い事を見せて、

箱を組んだ状態で、番号札を放り込んで、

かき回した上で、番号札を抽選して、

その場で一人分づつ、抽選番号と名前と出身国を公開して、

申し込みフォームに記載してあったメアドにメールを入れて、

参加意思の有無を最終確認して、

確定いたしましたともさ。


あー、疲れた。


驚いた事にすべての当選者から直ぐと言って良いタイミングで、参加の意思有り、の意思表明の返信が来た事だ。

抽選なんてこっちの都合でやってるんだから、期間内ならいつ返信しても良いはずなのに、みんなリアルタイムで見てたの?

うちのストリーミングって、研究者向けの超ドマイナー配信だったはずなんだけど?


怖いわぁ

公開イベントで問題でも出たら、俺、殺されるかもしれないな…

問題がおきない様に、万全の準備を整えて行かないと…な。


結局、公開イベントは、ダンジョンのレベルアップに伴って余剰した力を使って作った別室で行う事になった。

最初は、コア部屋を使おうかとも考えたんだが、思っていたよりイベントの規模が大きくなってしまった事から、薬液を作成する為の作業スペースやら、製造機材を設置する場所やら、立会人のウェイティングスペースやら考えると、収まらなくなってしまったためだ。

あそこはただでさえうちの収益を支える重要な儀式空間で、日夜の区別なく葬式が行われている場所だ。

こんな無料のイベントで使って、収益が圧迫されるとかありえない。


とりあえず、入り口から簡単に入れる所に、追加のイベントスペースと作業台を作って、そこに製薬機材を設置する。

設置する機材は今まで製薬に使って来たものばかりだ。何分、レシピとレジュメにはそれらを使って作るやり方が記載されているので、下手に機材の改良をすると、そこを突っ込まれる可能性がある。


実を言えば、今回のイベントの為に一定期間ルーチンの作業(アンチエイジング液の生産)が出来なくなるので、妻の作業に協力する形で俺もストック用の薬液作りを手伝ったのだが、俺のこの種の作業への相性が良かったのか、あっさり俺に製薬スキルが生えてきて、しかもレベルが上がったのだ。

そのおかげで、薬液作りに必要になる時間が、従来の3日間から1日ちょっと(26時間程)に短縮出来る様になったのだ。

おかげで、当初イベントにかける予定だった期間を大幅に短縮できる様になった。

公募でイベント期間が作成1日確認1日の2日なのはこういう訳だ。

使用機材についても、スキルのおかげで改良点が見える様になり、作業性を向上出来そうなのだが、まぁ、これはイベントの後で考えればいい事だろう。

とりあえず今は、イベントの影響で薬液の供給体制に問題を出さない事と、イクサ氏と組んで某製薬会社をギャフンと言わせることが肝心だ。


そんな紆余曲折しながら、イベントの準備を進め、当初かなり余裕を見て設定していたはずのイベントもいよいよ直前に迫って来ていた。

後は、レンタルで手配済みのストリーミング用機材やら、立会人のウェイティングスペースに設置する設備やらの搬入が終われば準備は完了するのだが、こいつらは日貸しで料金が発生するので、直前のイベント前日にならないと搬入されない。

事がここまで来ている以上、今更焦ってもどうにもならないし、ストリーミング配信で使用する機材も、基本的にうちで通常配信に使っているものと同じものを手配した。配信する為の回線も増強の予約済みだ。

もう、後はなる様にしかならないな。


そんな感じで、まな板の上の鯉の気分だ、とか思っていたのが悪かったのか、前日になって問題が発覚した。

回線の増強が間に合わない?

どういう事だ?


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