第23話 魔法契約3・製薬レシピ公開2
イクサ氏側からは製薬会社に対して、半金の支払いが無いのであれば、レシピを一般に公開して、レシピの妥当性を問う事にする、と言う内容で事実上の最後通告が行われた。
これに対して製薬会社側からは、レシピで作成できる薬剤に効能が確認できない以上、半金の支払いには応じられないとの回答があった、と連絡が来た。
某SNSのアンチエイジングサロン(同好会)からも、薬液の提供に影響を出さない事を条件に、レシピ公開の同意が得られた。
これで、何の問題も無く話を進めることが出来る。
そんな訳で、ダンジョンのストリーミング配信経由で、アンチエイジング液の公開作成実験のお知らせと立ち合い人の公募のお知らせを発信した。
公募内容は、下記の通りの内容だ。
●アンチエイジング薬液の公開作成のご案内
・現在、当ダンジョンでSNSのアンチエイジングサロンの会員向けに生産をしている薬液(アンチエイジング原液、維持液の2種)について、深層踏破者向けに魔法契約に基づくレシピの公開を行いましたが、有効性に疑義があるとの確認照会がありました。
本件に関して、魔法契約に基づくレシピ公開である以上間違う事はありえないのですが、その事実を客観的に証明する為に、材料、作成工程等を一般に公開する形で公開作成を行う事といたしました。
公開は当ダンジョンの運営するストリーミング配信を利用してリアルタイミング配信の形で行う徒弟ですが、立会希望者がいた場合に限り、最大10名迄を限度として作成に立ち合ってもらい、服用の上で効果の確認をしてもらう予定です。
公開立合に参加を希望する方は下記の公募要領をご確認の上ご応募ください。
・実施日時:
・薬液の公開作成:2xxx年xx月xx日 10:00 ~ 翌日 15:00
・薬液の効果確認:2xxx年xx月xx+1日 15:00 ~ 翌日 15:00
・公募期間:2xxx年xx月yy日 ~ xx月yy+10日
・公募条件:
1.立合人はレシピがネット上で適正に公開・配信された事を自己の所有するネットワーク接続可能な機器を利用して確認する。
2.立会人は、その場で作成し、提供を受けた薬液を全量その場で服用する事とする。また、一部を服用せず持ち帰る事は許可しない。
3.提供を受けた薬液を服用した結果生じる効果の確認の為に、服用後24時間は可能な限りストリーミング配信によって確認可能な場所に居る事。ただし、入浴等、過度にプライバシーを侵害する可能性のある状況については、配信要件から除外する事が出来る。
4.立会人は服用の結果生じる影響について、それが立会人の望む内容でなったとしても、異議を申し立てない事とする。
5.立合人がこの公開イベントに参加する為に必要とした交通費、宿泊費等に関して、その一切を支給しない。
6.立合人の参加は無料とし、費用請求は行わない。
7.立合人への謝礼の支払いは行わない事とする。
8.立会人として参加を希望する者は、下記リンク先のフォーマットに基づき立会いの申し込みを行う事とする。
『公開作成会への立会を申しこむ。』
9.実験は下記の要領で実施する。
ⅰ)当日、実験開始時間にレシピ並びに使用機材を公開する。
ⅱ)当日、実験開始時間に使用する原料を育成しているダンジョン内の農場を公開する。
ⅲ)当日の使用原料公開に合わせて、その場で原料の公開採取を実施する。
ⅳ)採取した原料は、その場で洗浄等を行い、そのまま作成を開始する。
ⅴ)薬液の作成には、概ね24時間程度の時間を必要とするが、その間立ち合い人は自由に作成場に立ち入りする事が許され、作成状況の確認ができる事とする。
ⅵ)薬液の作成過程において発生する中間生成物に毒性を有する物が生じる可能性が想定される。その際には事前に注意喚起を行う事とするが、その注意喚起を無視して現場に近づき影響を受けた者にはついては、一切の補償を行わない事とする。
ⅶ)作成が終了し完成した薬液に関しては、その場で立会人に配布する。
ⅷ)薬液の配布を受けた立会人は、その場で薬液を全量服用する事とする。
ⅸ)服用した結果、どの様な作用があるかについては、その後24時間について、ある程度プライバシーに配慮した条件で公開を行う事とする。
プライバシーに保護に関する条件は別に定める。
ⅹ)アンチエイジング薬液は継続して服用する事を前提にした薬液であり、新陳代謝を活性化させる事で老化を防ぐ効果が期待される。
この薬液を継続服用しない場合、その効果は最終服用後数日~1週間程度で低下を始め、最長でも2週間ほどで効果が切れる事が想定される。
その結果、活性が常態に戻った状態を不調と誤認する可能性があるが、その状況は立合人の公募条件4のに合致するものと判断し、一切の補償を行わない。
要は、アンチエイジング液の無償の公開作成をするよ。目の前で材料を採取して薬を作るよ。また立会人を公募するよ。立会人は作ってる最中に邪魔しなければ、自由い見学して良いよ。ただし、こっちの指示に従わずに状態異常を負う事になっても補償はしないよ。作った薬はその場で立会人に飲んでもらうよ。その結果どんなことになっても保証はしないよ。
と言う事だ。
はっきり言って、正常な人間なら誰も応募しないと思ったんだが、実際には結構な応募があった。どうやら以前から某SNSのアンチエイジングサロンの噂が、社交界とやらで流れていたらしい。
曰く、本当に若返りが期待できるらしい。
曰く、某家のxx婦人は、実年齢xx歳なのに、20代にしか見えない。
曰く、某家のyy婦人は、数年前まで実年齢yy歳として妥当な老け方をしていたのに、今では30代で通じる位に若く見える。
曰く…、曰く…、曰く…。
実に色々な噂が飛び交っていた様だ。
実際にアンチエイジング液は、連続服用する事で新陳代謝を活性化させて、テロメアの状態に依存しない最盛期に近い細胞分裂を促進し、肉体を活性化させる。
正直、どういうメカニズムなのか専門家では無いので今一分からないのだが、要はこの薬液を飲んでいる限り、活性化された新陳代謝の影響で老化を抑える事が出来るばかりか、限定的ではあるが若返り効果も期待できるらしい。
限定的と言うのは、無限に若返って赤ちゃんの様になる訳では無く、その人の最盛期(個人差もあるので一概に言えないが概ね10代後半から20代位)に近い身体の状態を維持できるかららしい。
正直、俺はマスターに成った影響でこの薬液よりかなり緩やかではあったが若返りを体験しており、その辺の感じはピンとこないんだよな。
それと、これは一般には公開していない情報だが、アンチエイジング液による新陳代謝の活性化は、身体の恒常性を活性化させる。
それ自体は本来良い事なのだが、この機能が聊か強力に働き過ぎるきらいがある。
恒常性を活性化させると言う事は、体内に生じる異物を排除する機能も強化されると言う事に繋がる。その影響でガンなどの細胞分裂時の遺伝子コピーミスによる異常増殖等も抑制・抹殺される訳だが、一部抑制されるべきではない部分まで抑制されてしまうのだ。
そう、生命の生命たる要因として、生命の継承に関わる重要機能、生殖機能に基づく減数分裂細胞までが異物認定の上で抑制・抹殺されてしまうのだ。
実際の問題として考えてみた場合、短期使用にはさほど影響は無い様であるし、アンチエイジングにこだわる世代になると、殆どが既に次代の継承者を育て終えた、乃至は育てている最中の世代になる可能性が高く、実際にサロンのメンバーもそういう人たちばかりだったので、今迄問題になる事は無かったのだが、今後、この薬液が一般化されるとなると、その辺に問題が顕在化する可能性がある。
ぶっちゃけ、男性の場合、遺伝子継承の為の精子は都度作成されるので、一時的に服用を制限すればどうにかなるのだが、女性の場合、減数分裂に基づく卵子細胞の作製は、胎児段階で作成が終了している訳で、それがアンチエイジング液を常用すると破壊されてしまい子を為せなくなってしまう可能性が出て来る、と言うか生命の継承が事実上不可能になってしまうのだ。
この部分への対応は、現時点で解決する見込みが立っていない。
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