第9話 第4段階ダンジョン③
このピッケルからのっ衝撃によってコアに傷が付くことはなかったが、この衝撃を打撃攻撃と判断したコア(と言うかコアの生存本能)は自衛の為に許されている行動を行おうとした。
すなわち、攻撃者をダンジョン外に飛ばして放逐しようとしたのだが、これを赤い小箱が張った結界が妨害した。
結界の小箱(赤)は、半径数m程のドーム状の結界を展開して、箱に込められたエネルギーが続く限り一定以上のエネルギーを帯びた存在がこの結界通過する事を遮断する言う機能を持つ。
その結果、氏はドームの内側から外に飛ばされる事無く、閉じ込められたままの状態を維持する事が出来た。
もっとも、それは別の悲劇をもたらす事になった。
氏がコアを攻撃する前に強制跳躍を避ける手段として、結界の小箱(赤)を用意したのは疑うべくもない。
その点だけを取れば、確かに有効な方法だったのだろう。
しかし、その結果もたらされる影響について、氏がどの程度考察を行っていたのかは、知るべくもない。
ただ、結果だけからいえば、概ね氏の希望は叶えられた事になった様だ。
何故なら、氏はコアの前で死ぬことで、自らの全てがコアに吸収される事を望んでいたからだ。
すなわち、彼のピッケルによる打撃攻撃への反撃として行われた対応措置、ダンジョン入口への強制跳躍がキャンセルされた瞬間、氏を跳躍させる事で消費されるはずだった魔法エネルギーが周辺空間を氏の体ごと蹂躙したのだ。
それは攻撃者に余計なダメージを与えない為に可能な限り緻密に制御されたエネルギーによって行使された魔法であった。しかし、一流の冒険者として鍛え抜かれた体を持つ成人男子1名をダンジョンの最奥から入口近辺まで跳ばすに足るだけのエネルギーを内包した一撃でもあったのだ。
消費される事が出来なかった魔法エネルギーはコアに戻ることなく周辺空間を駆け巡り、氏の体を突き抜け、人体をズタズタに引き裂き、焼き焦がす形で消費される事となった。
残ったものはズタボロになったかつて人の体であった残骸だけのはずであったが、何故か頭と体の一部(胸周り)だけは焼け残た様だった。
最後の瞬間、駆け抜ける激痛に苦悶の表情を浮かべて果てたのかと思いきや、まるでこの結果に満足したかの様に笑みを浮かべ倒れ伏した氏が最後に何を思ったのかは知る由も無いが、多分、氏なりに満足して逝く事が出来たのだろう。
問題はその後だった。氏が仕掛けた結界はその後も力を失う事無く動作し続け、結局エネルギーを消耗しつくして停止するまでの丸3日結界を維持し続けたのだった。
その間、コアがダンジョンと隔離され続けた事で、産廃などの吸収もかなり限定的にしか行われず、うちはえらい損害を被る事になった。
また、3日と言う時間は、コアと同一空間に隔離された氏の死体がコアに吸収されるには十分な時間で、実際に吸収されることとなったのだが、その間うちはもとより警察も国防軍も結界の外から遺体が消えて行くのを指をくわえて見ている事した出来ず、大いに苛立たせられるのだった。
しかも、全ての過程が氏の事前通達とうちのシステムに基づいたストリーミングで研究者に配信されると言うおまけ付きでだ。
予め言っておくが、俺が警察でも多分共犯を疑うレベルの疑わしさだと思う。
だから、黒を前提にした取り調べが行われたとしても、仕方ないとあきらめるしかなかいのだが…
それはこれとは話は別と言う訳で…
確り嫌いになりましたよ、国家権力。
その後、話が落ち着いた頃、氏の共同研究者団体を名乗る、ダンジョン研究者団体から謎ワード満載の質問状が届き、適正(ぼったくり)価格で対応して、結構な収入を得る事が出来たのだが、ちっとも有難く無かった。
ついでに後追いで多額の寄付金を某団体からいただく事になったのだが、全く感謝する気にならなかったよ。
フン!
因みに、何か腹が立つので認めたくは無いのだが、最近うちのダンジョンコアは、少し頭が良くなって、言動(動かないけど)が鼻に就く様になった気がするのは、きっと気のせいに違いない。
誰が認めるかよ、第5段階だなんて!
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少し短くて申し訳ありませんが、ストーリーの切りの関係で、第4段階ダンジョン③はここで終了です。
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