第2話 待って、俺何か悪い事した?
結局、その日わかった事は、家の中庭に出来た穴には、人口物にある様な掘削痕や支柱等は無いものの、天然の洞窟と言うには整っており、挙句に行き止まりに石仏と思しき何か構造物がある事で、人が入っていたんじゃないかと判断するに至った事だった。
問題は穴のある場所でこれだけ家と近いと、軽い地震などがおきただけでもその影響で崩れてくる可能性が否定出来ず、特に坑道の様に何かで補強されている雰囲気も無かった事から放置する事も考えられなかった。
先ずは不動産屋に連絡したが、事前に十分な調査はしていてそんなはずは無いとの一点張りでらちが明かず、役所に連絡しても管轄が違うとたらい回しになった。
警察に連絡したらパトカーがサイレンも高らかに出動してくる羽目となり、近所一帯大騒ぎになった挙げ句に封鎖される騒ぎになり、後日話を聞いた妻には何故先ず私に相談しないのかと、大目玉を喰らう羽目になった。
いや、こんな事態、あんたが居ても役に立ってないだろう…!
紆余曲折あって、当初は警察による調査が行われたのだが、どうも天然の洞窟にしても、人口の地下道にしても様子がおかしい。これはダンジョンの可能性があるんじゃないかと言う事であちこちに連絡を行った結果、結局自衛隊のダンジョン探索部隊による調査が行われるを事になった。
その結果、この洞窟?は自然に出来た天然のものでは無く、この段階で発見されるのはとても珍しいものの、誕生したばかりのダンジョンでは無いかと言う事になった。
この時点で本来ならば、ダンジョン一帯(最低100m四方)は隔離されて、踏破(コアへの到達)ミッションが実施されるものらしい。
と言うか、行われたらしい。
通常、ミッションが失敗した場合、周辺からの建造物は取り壊され、出入りを制限する為のゲートが設置されて、一般人のゲートへの接近も制限される。
ダンジョンの出入り口が完全に閉鎖されるのではなく、ゲートに拠る封鎖と言う半端に出入りを制限するという形にするのは、完全に封鎖してしまうと魔物が溢れて出てきて封鎖を突破しようとするからなのだそうな。
もっとも、このダンジョンには魔物は全くいなかったので、踏破はアッと言う間に出来たと思うのだが…
そんな事を考えていると、別の意味で大変な事が判明した。
ダンジョンと言うものは、初めて踏破してコアに触れた者に所有(マスター)権が委ねるらしく、全く魔物が出てくる事も無く、わずかに50m程進んだだけであっても、踏破してコア(崩れかけた石仏っぽい何かがそうだったらしい。)にお供えをする為に汚れを払おうとして触れてしまっただけであっても、俺がマスターと認められてしまったと言う事がわかったのだ。
こうなると、俺が死なない限りダンジョンの所有権は俺の物に固定されてしまうらしく、自衛隊の隊員さんからこういう時は迂闊に物に触らない様に、と注意される事になったのだが、そもそも魔物がいない洞窟もどきをダンジョンだと判断するのが無理筋と言うもので、生きている内にそんな機会が再びあるとも思えない。
私の感想がそんな感じのものだったとしてもおかしな話では無いと思うし、そんなことで文句を言われても…、と言うのが正直なところだ。
後で知ったのだが、この手のダンジョンを一番乗りで探索をする探索隊には明文化されていないが先乗り特典として、ダンジョンの所有権の先き取り権的なものが認められていたらしく、今回の様な未成熟なダンジョンの探索は難易度的にもかなり美味しいものになるはずだったのに取れなかったので、文句が出たと言うのが本当のところだったらしい。
前にも書いたが、ダンジョンについては知られていない事も多く、魔物が湧いて出て周囲の生き物を食い殺してくと言う面倒な側面に目が行きがちではあるが、生きる資源の産出場であると言う側面もある。
特に所有者のいるダンジョン場合、コントロールがある程度出来る様になるので、採取や採掘がスムーズに行くらしく、所有者はその恩恵に与かれるだけでなく、他者が行った採取や採掘から一定率の権利料の様なものをもらう事が出来るらしい。
それを既得権益の様に考えられた挙句に権利が得られなかったからと言って文句を言われてもたまらないのだが、まぁ人のやる事ではあるし、仕方が無いのかもしれない。
そんな感じでダンジョンの所有者(マスター)になってしまったのだが、そこからが大変だった。
所有すると言う事は、所有権を持ち利益を得る権利を得ると言うだけでは無く、湧いた魔物が他者を襲ったりする前に迷惑をかけない様に管理すると言う義務も生じる、と言う事だ。
特に日本では、生きたダンジョンは今まで日本で産出しなかった様な資源等の産出場と考えられる事が多く、国の指導の下で育成を行う事は義務では無いにせよ推奨されている。また、湧いてくる魔物の駆除も重要な仕事になる。
…ここで、大きな問題が発生した。
私の所有するダンジョンは、あまりにも幼な過ぎて資源の産出どころか、モンスターの湧き出しも起きないのだ。モンスターが湧かないと言う事は、モンスターを倒した時に得られる何某かの収奪品、いわゆるドロップも得られないと言う事で、コスパが悪いどころか、投入産出比=0と言う最悪の数字となる。
仕方が無いので、ダンジョン内、コアの所に定点カメラを設置して、食べない様に言い聞かした上でリアルタイムでストリーミング配信を始めたのだが、基本的に殆ど変化の無いストリーミングなどそう流行る訳も無く、一部のマニアや研究者からのわずかな視聴に基づくかすかなインセンティブのみしか得られず、完全にこれも赤字にならなかったというだけで旨味がなかった。
唯一のメリットとなったのは、ダンジョンでは内部に放置されたものは何であれ定率で吸収される事だ。しかもこれらは吸収されるまでの間も周辺に一切の影響を出さない。と言うか、ダンジョンは入口こそ周囲に接しているが、その内部は事で完全に異次元とも言うべき別空間で、その周辺に存在している訳では無い。よって産業廃棄物や建築残土などから出る何某かが周囲に与える影響を考慮しなくても良いという事で、大きさ的にそれほど大量には受け入れる事は出来なかったのだが、廃棄場として利用できる様になり、ある程度の収入を得る事が出来る様になった事だろう。
もっとも、産廃を積んだトラックが引っ切り無しとは言わないまでもある程度の頻度で出入りする様になったもで、周囲の反応は聊か悪かったが…
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