第13話 ヌコ

離陸は瞬間ワープのためあっけなく。アトリナは小さくなった。母船は銀河辺境の地、地球までは5回ほどワープを繰り返さなければいけない。それほど地球は遠い。この部隊で僕が一番若い。承知はしていたものの不安だ。戦闘能力、潜在能力では自信がある。しかし僕には経験が無い。経験値がないことはやはり不安だ。しかし僕には使命がある。気高き民のもと、我々の繁栄のために時間を回収しなければならない。銀河辺境の地、地球。なぜ誰も回収できなかったのか。なぜ母を除き誰も帰還出来なかったのか。そしてなぜ母だけが帰還出来たのか?僕はぼんやりワープする母船の窓を眺めていた。高速のため星と星が線となる。幾つもの線が光を放ちとてもきれいだ。“ワープとは時間、時空を越える路。その路は生命体の命でできているのよ。その輝きは命を超えて進む路。そして母は小声で輝きは命の犠牲。だからとてもとてもきれいなのよ。”母が話したのを思い出した。『ほんとにきれいだ。』「ケイ。」母船の船長兼戦闘部隊長のビルが来た。「ケイ、調子はどうかい?まさかワープ4回目突入で参ったかな?」「隊長、大丈夫です。休憩中だったので少しボーっと休んでいました。」「そう、じゃあ、大丈夫かな。以前小さい子供を乗せたことがあった。戦闘能力は僕たち以上あったが、船酔いがひどくて、4回目のワープ直後にちょうど今の君のように窓辺の椅子で動けなくなっていた。」「隊長もしかして、それは母のことですか?」隊長は目をそらし窓の外を見た。「隊長大丈夫です。離陸前に司令官にお話し伺いました。隊長、司令官、学長、そして母が同じ戦闘部隊で地球に向かう母船で同じだったと聞きました。」「司令官が話したんだな。あの派遣で僕ら3人はインターンシップの学生で乗船した。経験値を積むためにね。だから僕らは実際地球には潜入してはいない。母船での待機だった。地球突入部隊は6人。プラス君の母、すなわち王女様だった。5歳にして戦闘能力は計り知れないくらい高い力をお持ちだった。その王女様がさっきの君のように窓の外の光をみてしきりに「きれい。きれい。」と吸い込まれようにつぶやかれ、その直後に気を失われた。しかし意識はすぐ戻り何事もなかったかのように振る舞われたため、そのままとなった。がもっと早くにお伝えするべきことがあった。そのことを今の君に言うとは、なんとも不思議な感覚だ。ケイ、外の光の線は見えるかい。」「はい。見えます。とてもきれいです。」「そう、きれいだ。あの光の線は”ライフライト”と呼ぶ。ライフライトはあらゆる生命体の命でできている。もちろんきれいな心の生命体もいれば毒々しい悪魔の命の光もある。もっと言えば、呪いの光もある。その光にあたってしまうと生命体のエネルギーを吸い尽くされる。危険な光だ。ケイ、あまり長いこと見てはいけない。王女様にお伝えできなかったことを後悔している。すまない。」「隊長、大丈夫ですよ。母はその後、元気でしたから。」「ピョン。」一匹のヌコが入ってきた。そして僕に飛び込んできた。母船にヌコが?「隊長このヌコ・・」そう僕が聞いた瞬間、画面が切り替わり、空間時間移動を僕は、してしまった。白い世界。オレンジが。A18が。アレクが。そして”ビリビリー”再び白い世界が破け、リサが入ってくる。「あれー?みんなこんなところで何しているの?テスト始まちゃうよ。サクラ、髪、どうしたの。オレンジだよ。さすがにオレンジはまずくない?わあー、可愛いネコ!ケイくん、なんでネコ抱いてるの?」「うるさい娘だな。」「うるさい?わあー、ネコが話した!」「本当にうるさくて、馬鹿な娘だな。わしはヌコ。ネコじゃなくて。ヌコだ。よく見ろ。ヌコ、ヌコ、ヌコ。地球にいるのは、わしのコピーだ。ネコはコピー、ヌコのわしがオリジナルだ。」ヌコ登場。

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