第12話  ワープ出撃

3日後、時間はあっという間に過ぎた。僕にとっての晴れ舞台だ。クラスメートたちは色々噂はしているが全く気にならなかった。僕たちに感情はない。あるのは自分にとっての有利な結果。データーで生きている。自分とデーターのみを信じる。合理的、機械的、本当に無駄がなく素晴らしいシステムだ。僕は便宜上地球への戦闘部隊に選ばれたことを父、すなわち国王に報告した。彼は表情を変えることなく言った。「ケイ、素晴らしい。戦闘部隊に選ばれるとは。星のため、気高き民、アトリナのために働いてくれたまえ。地球時間の回収、すべて任せた。この宇宙すべての時間は我々アトリナのものだ。時間の民。我々は我々の時間のすべてを回収し、回収し、帰還させる。揺るぎなき秩序のもとに。」その後,僕は戦闘部隊、司令官に会った。呼び出しと言うかたちで。「ケイ入ります。」初めて入る司令官室は壁一面データー機で覆われていると思っていたが至って殺風景だった。正面に大きな窓があり天井からの長い透かしが入った柔らかな真っ白カーテンが目を引く。書記官は居らず司令官のみだった。「司令官、お久しぶりでございます。」ケイは敬礼し挨拶をした。「王妃、母君が亡くなられて以来、6年ぶりかな」「いいえ、今日でちょうど7年目です。17歳になりました。」「7年ぶりか、時間が経つのは早いな。」「そうですね。ところで今回戦闘部隊に推薦いただきありがとうございます。地球時間回収の任務に就きます。司令官の口添えがあったかと存じます。」「学長が何か言ったのかね。」「いいえ、学長はご自身の推薦でとおっしゃっていました。ですが学長のことです、裏が無いわけがなく察しただけです。」「そうか、学長が。」「ケイ、君も知っての通り表立ってはいないが母君は幼きときに地球へ派遣された。戦闘部隊として。辺境の地、地球は不思議な星位置で我々は空間移動、大気中移動は自由にできるが地上部隊の潜入隊員は過去誰一人戻らない。母君を除いては。確かに地球の揺らぎは、かなり大きい。とても魅力的な星だ。時間回収値はかなり大きい。時間=金。すべての時間は元来我々アトリナのものだ。我々の秩序の元で時間をお金に変換し管理する。しかし今だ未回収だ。あのときも、そう、幼き王女母君と6人の部隊で地球潜入。ワープ後、電磁波交信システムが途切れた。予想到達後、地球時間3年が時間が経った。我々の時間に変換すると3日だ。リミットだ。幼き王女救出のため上空を旋回。母船での地球着陸突入を判断した。「面舵一杯」次の瞬間王女のみ母君のみがワープし母船まで戻られた。だが地球潜入6人は戻らなかった。母君は無事だった。が無言だった。ただ、しきりに左手の星の文様を大事そうにみられていた。無論それが何なのか、聞くすべもなく。ただ触れてはいけないものだと我々の頭の上部より指示表示あり。無の文字が。そしてそのことは国王に報告はしなかった。「司令官かなり詳しいですね。なぜですか?」「その母船に君の母君、王女と戦闘部隊、母船クルーとして私と学長がいた。そして今回ケイが所属する戦闘部隊の隊長ビルもその一人だった。」「司令官、とても興味深いお話、ありがとうございます。もし僕が10歳の僕のままだったら、動揺したかもしれません。ですが僕は17です。気高き民、アトリナ人です。今回の任務、母のこととは別物です。任務遂行いたします。本来の我々が持つべき時間の回収、地球時間の回収に行って参ります。」「ズキン」バグが動いた。次の瞬間司令官室の両サイドの壁からデーター機が浮き出た。一斉にデーターがはじきだされた。「ケイ、そのバグは?」「司令官大丈夫です。」「僕は僕です。」司令官は目を閉じた。そして僕は司令官室を出た。港で母船が僕を待っている。ワープ出撃の時。

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