第11話 儚い

ケイが地球へ行く。オレンジは動揺した。正しくは頭の中のイレギュラー部分が震えた。アナトリア人に感情はない。すべてオートマッテックに回答が出され行動となる。ケイを地球人にもA18に渡すわけにはいけない。オレンジの頭の中でデーターが動き出す。「バタン。」学長室からケイが出てくる。ケイは不敵な笑みを浮かべている。”3日後。”まだ3日も待たないといけないのか。僕はあの謎を知るためにこれまで努力をしてきた。このエリート校にも入った。こんな早くにチャンスが巡ってくるとは。僕は僕が嫌いだ。だが僕は僕が一番好きだ。矛盾が僕を僕らしく活かす最大の環境だ。僕はこの星の民を見下していた。価値観の違いか。それとも母の教えだったのか。母はこの星の王妃だった。だが母には秘密があった。彼女は幼少期、彼女の父、すなわち前アトリナ星の王の命令で彼女の異常なほどの戦闘能力を買い星の戦闘部隊に配属した。もちろん、彼女は王族のため非公開だった。彼女の時間軸探知能力、回収能力は100もの戦闘部隊以上。一部では神とまで言われていた。それと真逆に悪魔だとも。光と影。同時に必ず存在する。そして彼女は銀河まで到達し、すべての時間を支配した。そしてその莫大な時間はこの星が気高き民といわれる礎となった。もちろん時間はお金となり莫大な財となった。アトリナの繁栄。僕の父、現アトリナ星の王は母の幼馴染だ。父もまた母に匹敵するほどの力を有す。だが幼いあの日戦闘部隊の選ばれたのは母だった。その母は僕が幼いころ寝る前に時々地球の話を聞かせてくれた。この星、アトリナ人とは全く違い。色が存在する。緑色や青色、茶色の世界。そして夜は真っ暗。唯一アトリナ星と同じなのは夜。宇宙の黒と星たちが輝く金色で覆い尽くす。”きれい”だから母はアトリナを思い出したいときには必ず一人で夜空を見上げていたという。あと、地球人についても話してくれた。精密でなく、もろい。体は柔らかく、ほとんどが水分でできている。データー処理は一部上頭部で行うがデーター処理能力は我々の3歳時レベル。地球人はそれを補うべく我々のような機械を自ら作り出しPCとして活用。だがそのレベルも子供レベル。空間移動もできない。時間操作もできない。無論タイムトラベルもできない。故障、けがや病気をした場合我々のように交換メンテナンスで再起動できず、生命体としての時間はかなり短い。彼女は時々”儚い”という言葉を使っていた。我々の言語にない言葉だ。僕にその意味は分からない。わからなかった。そして彼女は僕が10歳の時、宇宙の塵となった。彼女は”儚い”を選んだ。それから僕は”儚い”を憎んだ。”儚い”がなにかわからずに。そして時がたちこの時が来た。僕は地球へ行く。地球のすべての時間を回収し回収して僕が今度はアトリナの次の王となる。『ズキン』頭の中の上部一部が”儚い”というパスワードに反応した。バグが発生した。



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