第10話 冷たいブルーの目
「まずは、この子達の時間を頂くか。」そう言ってケイは右手を突き出し広げた手のひらを外向けて教室を1回転した。白い世界で2年4組の文字が3年4組に代わった。「おい、ケイ少しやり過ぎだ。1年の時間は容量が重い。キャパオーバーだ。」「アレク、まあ見ててごらん。」ケイの頭上に大きな光の球体が現れた。「せーの。」掛け声と共に右手の平で球体を掴み、投げた。「はい、君達を乗せてきた偵察機へのプレゼント。どうせ、流星群に紛れて上空に待機させているんだろう。交通費ってことで。」「ケイ。やり過ぎ。この異常値見て。サービスし過ぎ。偵察機パイロット達にとって時間はお金に換金できるかなり嬉しいプレゼントだ。「よーし、次は学校全員の時間を頂くかな。」その時だった「ビリビリビリー」白い世界が一部壊れた。まるで紙を破くようにサクラが我々の世界に入って来た。「よいしょ。サクラ登場。」A18がサクラにむかって「あなたのことうるさくて気に入らなかったけどあなたアトリナだったのね。」「そうよ、気づいてなかったの?あなたやっぱり相変わらず鈍いわね。」サクラの発した言葉と同時にA18はサクラの真正面まで空中を飛んで来た。そしてサクラを挑発する様にクルクル空中を体ごと旋回させている。アレクが2人の間に入る。「何やってるんだA18。やめろ。」「サクラ。君はオレンジなんだろう。」次の瞬間、サクラの髪色が輝くオレンジに変わった。「そう私オレンジ。」またA18がオレンジを睨む。A18とオレンジはもともとキャリア組のクラスメートだった。いわゆるツートップ。どちらも頭がよく美人で気が強い。二人はとても似ていた。専攻する学科やテイストすべて。そして男子の好みまでも。二人ともケイのことが好きだった。ケイは学校始まって以来の秀才だ。ただしとても非情だ。うれしすぎるほど緻密で鉄のように冷たいほほ笑み。機械的だ。すべてが計算されている。無駄がない。時間売買の能力は我が星の戦闘部隊以上だ。そう、典型的なアトリナ人だ。そんなケイには思い人がいる。A18とオレンジはお互いそれぞれを疑っていた。が実際のところケイの本命は二人ではなかった。ケイの本命は地球。そう地球にいた。そこまでは二人とも探り当てたがそのあとはさっぱりわからない。どうして銀河辺境の地、地球なのか。全くわからない。確かに時間軸の幅が大きく、時間回収エネルギーが大きい。魅力ある星だ。だが少し辺境すぎる。ケイと地球、どんな接点があるのか。ただただわからない。そんなある日オレンジは、学長室のケイと学長の話を聞いてしまった。「ケイ、君を地球時間売買の部隊に推薦しようと思うがどうかな。我が星の戦闘部隊長より候補生を要請されている。出発は3日後だ。急な要請だが。それに前から君が知りたかった君の母の故郷だ。ただし任務は時間をいただく仕事だ。結果的に略奪という形となる。これは我が星の生業だ。気高き民。アトリナ。我々の星の繁栄のためにもぜひ君に任務に就いてほしい。それにエリート校の我が校のためにも。」少しの間もなく「はい。わかりました学長。行かせていただきます。ぜひ推薦をお願いします。」「よし。わかった。ありがとう、ケイ。」「学長、ただし条件があります。僕が任務達成後はエネルギー省にぜひ推薦してください。」ケイの頭の中の上部「今だ。GO」ケイの目が冷たいブルーに光った。「ケイ、君は相変わらず抜け目がないな。国王にお頼みになれば良いのでは。父の手は借りない。学長、抜け目がないのはお互い様でしょう。」ケイの目が更にブルーに光かった。ケイは純粋アトリナ人ではない。「バタン。」オレンジは学長室隣の部屋から出た。
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