第9話 使命
アレクがA18を睨んだ。A18は睨み返した。「なんだ、君達睨みあうなんて案外地球人ぽいよな。まるで人間だ。」僕はまた口からつい言葉が出てしまった。僕にはバグがあり使命を忘れ、アトリナでの記憶もなかったが、A18 の話を聞いてなんとなく思い出した。アトリナ人には感情がない。例えば電車の長椅子に座るとき人間は他人との距離を考える。空いてる時には一人、二人分ほど他人と距離をとる。狭い空間での目で見えないお互いの感情という電波が飛び交っている。そして嫌な時は顔に出るし、睨んだりする。まあ、感情豊かだ。だがアトリナ人には感情がない。お互い体から電磁波を出している。仮に電車に乗ったとしても自動的に他人との距離がはじきだされ体が浮いて自動的に着席。好き嫌いなしにね。いたってシンプル。機械的といえば機械的だ。ただ人間のように感情がない分、疲れはない。いわゆるメンタルがやられることはない。だからこそ、今更だけど僕にはあまり感情がなかった気がする。他人にあまり関心がない。ただ僕は時々僕と同じような人間を感じた。彼らは地球人?それともアトリナ人?「それ、アトリナ人よ。ケイの前にも何回かこの地球に派遣したみたい。でも居心地がいいのか未だ、だれも戻ってこなかったのよね。たしか手の平に星のマークがあるのよね。」「おい、A18、勝手に僕の頭に入るなよな。」「いいじゃない、このほうが口動かすより楽。」あと思い出したことがある。”時間だ。”時間に僕はとても執着する。分単位、秒単位でこだわる。だから今まで一度も遅刻をしたことがない。学校もプライベートの集合時間でも遅刻はしたことがない。頭の中でそう思ていると今度はアレクが頭の中にはいってきた。「ケイやっと思い出してきたようだね。」「ケイもどった?」そう言ってA18も僕の頭の中にまた入ってきた。「ケイ、だいぶんアトリナ人に戻ってきたんじゃないかい。」「アレク何遠回りしているの。ケイ、元に戻ってるんじゃないの?時間を無駄にしないでよ。私は早くアトリナに帰りたいんだけど。」「へーえ、デートの約束でもあるのかい?」「デートなんかじゃないわ。次のターゲットが決まったの。早く行かなきゃ海賊に時間持ってかれるわよ。太陽のフレアの周期も近いし。今度のフレアは大きいわよ。逆風のエネルギーも回収できるしね。いいお金になるわよ。」「A18、まさか独り占めはないよな。君はまだエネルギー省につけないんだろう。レベル的に。」「アレク、だから今回私が先にケイを見つけてケイの莫大な地球時間の権利を私がいただくのよ。ケイの代理としてね。」「A18、ほんと君は抜け目がないな。」「アレク、あなただけには言われたくないわよ。ずるがしこいのはあなたのほうでしょう。」「ちょっと待った。一番ずるがしこいのはケイだ。僕じゃない。悔しいが成果も出しているし。トップだ。ただし手段は選ばずのかなり、汚い手も使うけどね。ねえ、ケイ。だから君がこの地球に派遣されたんだ。思い出したかい?僕を差しおいてこの地球のすべての時間を買い取るために君がアトリナの代表になったんだ。この星地球の芯は揺らぎのずれがほかの星よりかなり大きい。大きいと時間の誤差が生まれる。その時間のダブリをほかの星に売る。その富は巨大だ。ほんと僕らアトリナ人って天才だ。A18君もそう思うだろう。」「まあね。」僕の頭の上部より”使命遂行”の表示あり。僕は二人に言った。「そろそろ使命遂行しましょうか。」
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