第7話 時間止まる

教室に着いた。いつも通りだ。入口近くに真面目でおとなしい朝比奈さん。ノートを見ている。「おはよう朝比奈さん。」「おはようケイくん。」相変わらずきれいだ。この朝比奈ユイさんは僕と同じ朝比奈だ。ただ苗字が同じだけで特に親戚でも何もない。もちろんきょうだいでもない。「きゃあーきゃあー」教室中央でさっき声をかけた女子達が騒いでいる。「ねえ、ケイくん昨日、流れ星見た?」「流れ星?」「リサが見たんだって。いいよね。私も見たかった。リサ教えてくれたらよかったのに。ねえ、リサ、ネットでつぶやいたの?」リサに次いでうるさいサクラが言う。僕は話を聞きながら彼女達の横をすり抜け席に着いた。「ねえ、リサほんとに見たの?見間違いとかじゃないの?ちなみに私、流れ星見たことないし。」「サクラ、ほんとだってば、見間違いじゃないよ。私3個も見ちゃった。」「ちょっとリサ、欲張りすぎ1個にしなさいよ。」「でも、しょうがないじゃない、勝手に見えちゃったから。22時ぐらいかな?期末の勉強しててちょっと眠くなってきてたから目覚ましのためとか思ってベランダに出たの。そしたらスーッと右に1個。”見たー”って感動してたらすぐに左に2個続けてスーッと見えたの。もう、ラッキーとしか思えないでしょ。私ついてる。って感じで結局そのあと勉強できずに寝ちゃった。あーどうしようテスト。まずいかも。」「えーほんと?」「ほんと、ほんと」「きゃあー!」ほかの女子達もみんな、きゃあきゃあ騒いでいる。”うるさいな。”僕は思った。そしてサクラが僕にまた聞いた。「ねえ、ケイくんは見てないの?」「僕は見てないよ。僕の場合、期末の勉強まじめにやってたから。それに寒いし。夜は出ない。」僕はサクラに返事しながら首をさすった。首が痛い。昨日空を見てたから。今更彼女達には言えないけどね。「ねえ、ケイくん、首痛くない?」朝比奈さんがなぜか僕の真後ろにいた。気配はなかった。そして耳元で「嘘つかないでね。見たよね。流れ星。彼女と同じ3個。」「朝比奈さん。」僕は体を起こし立ち上がって朝比奈さんを見た。その瞬間。教室の色が消えた。みんな止まった。教室正面の時計も止まっている。すべて真っ白になった。あるのは物体の線だけ。「パンパン。はい。そこまで、よくできました。」アレクが動いている。近づいてきた。朝比奈さんも動いている。もちろん僕も。「はい。これで3人そろった。」僕の頭の上部に回答を求めた。”エラー”の文字。「アレク、これはどういうことだ。正直、僕は昨日流れ星を見た。朝比奈さんが言うように3個見た。それからおかしなことが起こった。時間に正確な僕がいつより2時間10分朝寝坊をした。しかし、そのなくした時間はロボットのお姉さんと登校中に7:48、いつもの時間に矯正された。動揺はしないが説明が欲しい。時間の売買。アトリナ人?アレク、朝比奈さん、どちらでもいいから、早く、早く説明してくれ。」「じゃあ、僕が話すよ。ケイ。」”危険値大”のアレクが動いた。

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