第3話 とりあえず

とりあえず僕は走った。振り返らない。前を見てただ走った。何が何だかわからない。宇宙人?はあ?僕は騙されているのか、それとも誰かが騙そうとしているのか、もしかしてよくTVやってる番組の一コマとか?わからない。とりあえず、学校に。僕はひたすら走った。ただ頭の中では、さっきの出来事の状況処理を行っている。昔から僕の特技の一つで同時に頭の中でいくつかのデーター処理ができる。頭の中が3つの部屋に分かれている。左右は右が今現在。左は過去記憶。そして上部は最終結論処理箇所。だから自分で言うのもなんだけどやっぱり僕は頭がいい。息が苦しい。さすがに体力だけは人並みレベルだ。「はーあ。」無理。歩こう。人生初の遅刻でもかまわない。“気配がない。” 僕は後ろを振り返った。誰も追いかけてこない。よかった。あのお姉さん。確かに人間に見えた。しかし1か所違和感があった。耳だ。耳がエルフのようにとがっていた。長い髪で隠れていたがほんの僅か動いた瞬間に僕は見た。一般人ならあの一瞬で気づかないが頭の良い僕は見逃さない。こんな時でも自分で自分を褒める性格も小さいときから変わらない。まあ、ともかく彼女は人間じゃなかったことだけは確かだ。でもTV番組のやらせ?それにしても、いったい何だったのか?幻?夢?やっぱり昨日見た人生初の流れ星のせい?とりあえずわからない。頭上部の回答が出ている。だが今はわからないことにしておこう。それが今は賢明な答えだ。曲がり角、学校までの緩やかな坂道が見えた。横断歩道、青が点滅、赤に変わる。僕は立ち止まる。左右からの車。僕は横断歩道の赤信号を睨んだ。赤が笑った。「えっ?」目をそらす。まさか僕は後ろを振り返った。いない。よかった。一瞬、見られている気がした。僕は自分を自分でごまかすように携帯を見た。携帯の時間は7:48。はあ?「7:48」信号が青に変わる。僕は歩き出した。横断歩道を渡り切ってもう一度携帯を見た。時間は7:49。おかしい。おかしい。時間が戻っている。おかしい。変だ。待てよ。起きた時の携帯の時間は6:00。いつもより10分遅い。いつも遅刻の兄貴が「お先ー。」と先に学校へ行った。小学生の登校班を見たし、台所の時計も8:05だった。携帯が故障したのか?僕の見間違えか?両親は出勤後。間違いなく僕は人生初の寝坊をしたはずだ。僕は操作されているのか。「お姉さん。」僕は横にいるお姉さんを睨んだ。「とりあえず校門までのこの坂道、急がず歩きましょう。」僕の一歩前を一つの影が動き出した。

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