王の反抗
1話
「ハァ、アポロン様は今日も麗しい……」
物陰から恍惚の表情を浮かべている男の名はアーサー。部隊のエースとも呼ばれている人物である。部下には絶対に見せない顔を王、アポロンに向けている。
「アーサー、アーサーってば」
「おわっ、何だお前か。気配を感じなかったぞ」
眼鏡をかけた白衣の男は周(あまね) 諭史郎(ゆしろう)。通称、周瑜(シューユ、三国志より)
「やあ、アーサー。今日も楽しそうだね」
「ああ。今日はアポロン様とすれ違って、挨拶までして頂けたからな!」
「ていうか、アーサー、特命見てないの?」
「何だ、それは」
「僕に来てるくらいだから、アーサーにも来てると思ったんだけど」
「来てる? どこに?」
「軍用端末のメールボックス」
「端末? ああ、これか」
アーサーは胸ポケットの中から薄い端末を取り出す。
「ええっと、メールボックスは」
「おいおい、何でメールボックスを探すのにも戸惑っているのさ」
「使っていないからな」
周瑜はクソデカため息を吐いた。
「全く、これでアポロン軍の次期エースパイロットとか……」
士官学校時代からの友人であるアーサーは、体力や実戦は強いが、機械方面では落第スレスレだったなと思い出した。
「ちょっと、貸して」
見兼ねた周瑜はアーサーの端末を引ったくると、一瞬でメールボックスまで辿り着いて、再度クソデカため息を吐いた。
「通知が千件溜まってるとか、どんだけだよ」
まあ端末を見なくても、朝礼や他の奴に聞けば何とかなるか。これだから脳筋は。
「ほら、これ読んでみて」
周瑜は「特命」メッセージを開いてやる。
通常、個人宛のメッセージ、特に今回のような重要なものは本人にしか開けられないような二重ロックがかかっている。しかし、技術室室長の周瑜にかかれば、端末のロックを解除するのは可能だ。しかも以前、アーサーがパスワードを忘れた時の再発行も周瑜が行ったので、こんなものは一瞬である。
「すまないな。……ええっと、差出人は、アポロン様!」
「あのさ、特命の意味分かってる?」
「ああ、そうだった」
「とりあえず僕の部屋来なよ」
「ああ」
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