第二話 告白

「行くか……」


 昼ごはんを速攻で食べ終えた俺は、約束をしていた屋上へ向かおうと、廊下を歩いていた。


 窓越しに見る空は、どこか赤黒く異様な雰囲気があった。

 何もなければいいが……


 告白……とは到底思えない雰囲気の中、俺は屋上への扉の前に立つ。


「……よし」


 俺は決心し、扉を開けた。

 

 しかし屋上には、誰の姿もなかった。

 ……誰もいない。


「騙されたか……」


 呆れた。高校生にもなって、まだこんなことしてくる奴がいたとはな。

 これで、人生で5度目の告白詐欺になったな。

 記録突破だ。


 俺は戻ろうと振り返った。

 

「遅いよ」


 振り返った先で、女がそう言った。

 どうやら、俺の記録が限界突破することはなかったらしい。


「……普通に出迎えられないのか」


「私なりのサプライズだったんだけど」


 女は気を取り直して、と本題に入ってきた。


「そ、それじゃあ言うよ……」


 女はどこか緊張した様子で話だした。

 雰囲気は、告白ともいえなくもない……

 

「お、おう……」


 俺も少し緊張する。

 いや、女子と会話する時はいつも緊張してたから……今はめっちゃ緊張してる。


「正直、こんなこと言っても信じられないのは分かってる。でも聞いてほしい。これが必ず、あなたにとって良いアドバンテージとなるはずだから」


 こう溜められると、緊張感よりも好奇心が勝ってしまうな。

 それでも、破裂しそうなくらいに音を立てる心臓を、俺は抑えながら話を聞く。


「私ね……実は……《闇の組織》に入ってるの!」


「……は?」


 思わぬ答えに、疑問を直でぶつけてしまった。

 こんなに素直に"は?"と出たのは初めてかもしれない。


「や、やっぱりそうなるよね!でもね、本当なの。ほら、漫画とかでよく見る敵軍団っているじゃない?あれみたいな感じのやつ。本当にいるのよ」


 こいつ、本気で言ってるな。

 さすがにネタかと思ったが、ここまでくると重症だな。

 厨二病が中学二年生なら、こいつは煌一病ってか。


 こういうタイプには、しっかりと乗ってやるのが大人のつとめってもんか……


「あぁ知ってるぞ。何せ、俺も光の組織に潜入しているスパイだからな!」


「え?本当に!?じゃ、じゃあ情報交換しましょ!こっちの組織能力を一つ教えるから、そっちのも教えて!」


「あ、えっと……さ、先にそっちのを教えてくれるならいいぞ!」


「分かったわ。じゃあ《契約》をしましょう。我等が契約において、自組織の能力を一つ、情報完全開示することをここに誓う。……あなたも手を添えて」


 女は俺に手を差し出してきた。


 ……何が起きてるんだ。

 さすがにここまでくると異様だ。

 

 俺はここら一帯の謎に満ちた雰囲気なやった気づいた。

 ただ、俺は気づくのが遅すぎた。


「さぁ、手を」


 俺は戻れないことを悟った。

 とりあえず今は、言う通りにするしかない。

 

 そして俺は、女の手に自分の手を添えた。


「……うぐっ!」


 瞬間、掌に静電気のようなピリッとした痛みが走った。

 ……何だ?だんだんと意識が薄れていく、、、、、


「……なぁんだ。まだ《組織者メンバー》じゃなかったのね」


 何を言っているんだ……くそ、意識が薄れて……いく……


 バタッ


「この情報が、あなたにとって良いアドバンテージとなりますように」


 それが、俺が最後に聞いた言葉だった。


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俺の知らない組織だらけ 鮭に合うのはやっぱ米 @snakeyphaky

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