俺の知らない組織だらけ

鮭に合うのはやっぱ米

第一話 主人公

俺の名は鶴馬太平つるまたいへい。

 極々普通の高校1年生だ。


 高校生になったら、イメチェンしてモテモテ男子になると、彼女作ってラブラブな高校生活を送ろうと、そう臨んでいた。

 だがまぁ、現実はそう甘くないもんだ。

 中学の間は楽に友達はできず、女子との会話もなく、恋愛なんてものとは無縁であった俺が、高校生になったからといってそんな陽キャプレイができるわけもなかった。


 いや、別に一人だって辛くないし。

 正直言って、彼女作るのとか面倒だったし。

 別に悲しくなんてないし。


 そう、俺は……俺は高校〜ここでも孤高〜休み時間は女子の観光〜そして浴びる鋭い眼光〜行きたくない帰りたい学校〜そんなネガティブじゃモテないだっろぅ〜yea yea yea 〜


「なぁ、鶴馬!私の話聞いてくれないか?」


俺は机に突っ伏して妄想世界に溶け込んでいた。

 そんな俺的世界を吹き飛ばしたのは、頭上から聞こえたある一声だった。


「……はっ!」


 ハッとして起き上がって見たものの、声の主が見当たらない。

 何だったんだ?

 妄想に浸りすぎて、遂に幻聴まで聞こえてきたか。


「わぁっ!」


「うひっ!」


 急に後ろから大声で叫ばれたせいで、俺は気持ち悪い声で反応してしまった。

 うひっ!といった、まるで馬のような人とは思えない声。

 周りの目を見ると、案の定全員がこちらを向いてキモがっていた。


 理不尽としか言えない。こんな理不尽が許されていいのか!


 今の俺の感情は、喜怒哀楽でいう《怒》にあたる。

 ものすごく苛立っているんだ。


 俺は溢れ出そうな感情を抑えつつ、声の主がいる方へと振り向いた。


「さっきから何だよ!お前のせいでこっちがどれだけ迷惑かかったと思って……」


 見ると、声の主は俺から距離をとって、気持ち悪……と言っていそうな目で俺を見ていた。

 まるで醜い豚でも見るような眼光だな。

 

「うわーー……………」


 お前が引くなや。

 そもそもはお前が原因なんだぞ……。


 俺は愚痴をこぼしながらも、相手への目線をそらさなかった。

 ここで逃げたら、俺の負けだからな。

 自分でも何の勝負をしているのかわからないが……


「あ、えっと……鶴馬には私の話を聞いてほしくて来たんだけど……」


 何のことだろう。

 俺指名ってことは、よほど俺関係の何か何だろう。

 

 ……というかまぁ、声で何となく分かってはいたが《女子》だな。

 俺が女子と会話するなんて何年ぶりだろうか。

 間違いなく、高校では初と言えるだろう。


 などと思っていると、女子はこちらに近づいてき、俺の耳元に手をあててこう言った。


「機密事項だから、二人だけで話すことはできる?」


 女子の吐息が耳元にあたり、俺はぶるっと体を揺らした。

 今の状況だけで信じられないのに、さらには二人だけで話そうだなんて。

 これはもう、間違いなく……告白だな。


「も、もちろんでふっ!」


 大事なところで噛んでしまった。

 そして本日二度目の《醜い豚》を見るような眼光。

 さすがに二度目は辛くなってきた……


「そ、それじゃあ昼休み屋上で待ってるからね。じゃあね!」


 女子は、一刻も速くこの場から立ち去りたいのか知らないが、まるで逃げるようにして猛ダッシュで去っていった。

 

 まぁ、女子との初会話にしてはよくやった方だろう。

 すごいぞ俺。偉いぞ俺。頑張った俺。


 ……それにしてもあの子、すげえいい匂いだったな。

 ひひひひひひへへへへへへへへへへ〜〜〜〜〜

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