第2話「入学試験2」
「三人目…」
殺すことへの抵抗が段々無くなって来て感情の起伏が薄くなってきた。このままだと私の能力の身体強化が薄れてしまう。合格のボーダーラインが分からないし、試験官の清水さんは”何人でも殺していい”とはいったが、殺したら合格とは言っていない。深読みしすぎかもしれないが、多めに人を殺すべきか殺さず逃げ回るべきか。まぁしかし既に三人殺したのでこのまま殺し続けるか。
息切れが続く。体力もそろそろ限界かも知れない。けど、案外、案外、
「楽しい、かも…!」
悲鳴をあげながら逃げ惑う女子のセーラー服のひらひらとした襟を掴む。木のバットは二人目を殺す時に頭を殴打していたら壊れてしまったので、私の武器は校内の窓ガラスを割ったものになっていた。
「ぃや、だ!!!やだ、止めて、怖い…死にたくなっい!!ぉ母さ…!!!」
「…ごめんね。私も殺したくないよ。でも、合格しなきゃいけないから。」
彼女のその言葉で悲しい気持ちが増幅されたから再度腕に力が入りだす。腕を振りかぶる。心臓めがけて刺そうとした瞬間、わき腹に強い衝撃が走った。体が吹っ飛ぶ。何度もバウンドする。いや馬鹿力すぎない?
「ふぅ、間に合ったぁ!」
そこには青緑の髪に…狼か犬か、獣の耳を生やした女の子。よく見ると同じ色の尻尾も生えている。
「大丈夫っすか!大丈夫そうっすね!なんか助けてほしそうな悲鳴聞こえたんで誰かわかんないけど蹴り飛ばしたんですけど!じゃ、早く逃げてくださいよご主人!また捕まっちゃいますよ!」
勢いよくそう捲し立てる彼女。いや君、誰?なんで私の邪魔するの?
数メートル先まで吹っ飛んだ私の存在を軽くスルーしセーラー服の女の子を逃がす獣の彼女に私は問いかけた。
「この入試で正義の味方をしてるの?あなたは受験生?それとも高校側から差し向けられた敵?」
すると、こっちを向き、笑顔のまま首をかしげる。ついでに獣耳も垂れてちょっと可愛かった。
「なにがっすか?わっちは悲鳴が聞こえたから助けただけっすよ!」
シーンと静まる。空気が凍り付く。
「あれ?わっち何かおかしなこと言いましたかね?」
ふむ。天然な子なのかな。それともこの入試の趣旨を理解してない馬鹿なのかな。
「この入試の説明聞いてた?」
「鬼ごっこですよね!多分!いやぁ、わっち実はちょっと緊張して昨夜眠れなくって!寝坊したんすよー!あ、でもでも、受付の人が入れてくれて!」
後者の方みたいだ。馬鹿だ。
「で、受付の人が”今頃、恐怖の鬼ごっこをしてるごろだぜ…”って言ってたっす!だから鬼ごっこっすよね!」
満面の笑みでそう言う。
再度言おう。馬鹿だコイツ。
「違うよ、これは鬼ごっこじゃない。殺し合いだ。」
「…?」
「制限時間2時間以内で何人でも、誰でも殺してもいい。それで合格になるとは言われてないがね。」
段々と言葉を理解したのか、顔が青ざめていく彼女。
「…わっち、いろんな人の殺しの邪魔したっぽいっすね」
馬鹿だ。
どうしよう、この馬鹿力女も殺そうかな、と考えていると彼女がいきなりパン!と力強く両の手を打った。
「まあまあ!ここで会ったのもなにかのご縁ですし!ご主人!仲良く致しましょう!」
とことこと近づいてくる。なんだろう。とても犬みたいな人懐っこい感じがあるが、彼女と仲良くして私にメリットがあるのだろうか。うむ、確かに馬鹿みたいな素直さ…純粋さがあるので私からの命令にも深く考えずに従ってくれそうだ。能力で身体強化中の私も軽々と数メートル吹っ飛ばせるくらいなのでその脚力も瞬発力も十分戦力となるだろうな。
「わっちは
「ご主人じゃないけど…涙雨衣。涙に雨でるいう。衣でころも。よろしく。」
時計を見る。残り1時間。あと1時間で…五人は殺したいな。
「…狼姿さんは何人殺したの?まさかとは思うけど…」
「硬いっすよ!真優でいいっす!むしろ真優と呼んでください!殺した人数はゼロっす!」
だよね。ふむ。この
ちょっと難しいかもしれない。
能力「狼」
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