第12話 エメラルドの2人

「花鈴。ちょっと良いか」


「.....拓人?.....何かしら」


1時限目の終わりに俺は在津に断りを入れてから俺は花鈴の机にやって来た。

それから花鈴に笑みを浮かべる。

花鈴は戸惑いながら?を浮かべる。

そして俺を見てきた。

その姿にゆっくり誘う。


「今からもし良かったら少し外で話さないか」


「.....良いけど.....何かしら.....」


「.....お前がビックリする事だ」


「え?」


花鈴は???を浮かべながらも教科書を整えながら立ち上がってくれた。

それから俺に付いてくる。

そして人気の無い場所に向かうと.....花鈴は赤くなり始めた。

ね、ねえ。どうしたの、的な感じで.....っていうか何で赤くなるんだ。

俺は!?と思いながらも息を整える。


「花鈴。.....お前に渡したいものがある」


「.....え?」


「これ。.....何時もお世話になっているから。プレゼントっていうかお礼な」


「.....拓人.....嘘.....」


「ああ」


かなりビックリしながら。

渡した小さな紙袋をゆっくり受け取る。

それから開けてみてさらにビックリする。

中身は.....ネックレスだった。


「これはお前に似合うと思ってな」


「これってロケットペンダント?」


「.....そうだ。ゴメンな。色々と好きそうなの選んだんだけどネタ切れだった。俺の中では」


「そ、そう」


赤くなってから戸惑う花鈴。

それからモジモジし始めてから。

俺に渡そうとしてくる。

何だ?、と思っていると。

花鈴は言う。

私に身に付けてほしい、と。


「は!?」


「.....い、嫌かしら。今直ぐにでも身に付けたいわ」


「ヘあ!?お、お前さん!!!!?一人で出来るだろ!」


「.....嫌なのかしら?.....ふーん.....」


ジト目になる花鈴。

どうせこのプレゼントはみんなに渡しているでしょうしね。

特にみうさんとか、みうさんとか、みうさんとか、とぶつぶつ念仏の様に言いながら、であるが。

私に対してもっとサービスしてちょうだい、とも聞こえた気がするが?


そして俺を見てくる。

俺は冷や汗を流す。

すると。


「まあそれならそれでも良いわ。貴方が着けてくれないなら私は在津くんに、貴方に今、痴漢された、って言うわ」


「うへぇ!!!!?冗談じゃねぇ!教室が荒れるっての!」


花鈴は信じれない事を言い出した。

俺は真っ赤になりながら、わ、分かった!俺の負けだ!、と慌てる。

そして後ろに回った。

花鈴は笑みを浮かべてから渡してくる。


「エメラルドのこのペンダントなんて趣味が良いわね。貴方にしては。.....もしかして選んだのはこれの販売元の店員さんかしら」


「.....悪いかよ。.....でもこの色はお前の好きな色だろ」


クスクス笑っていた花鈴が目を丸くして俺を見てくる。

そしてボッと真っ赤になった。

それから俯く。


「.....!.....貴方.....そんな事.....よく覚えて.....」


「小学校の時の文集に書いてたろ。.....お前が好きな色って」


「.....恥ずかしいわ。貴方。.....良い加減にしてちょうだい.....と言いたいけど」


またもぶつぶつと文句を垂れる花鈴。

そして俺は手際が悪い中。

花鈴にロケットペンダントを身に着けさせた。


なんという良い香りだろうか。

女の子特有のうなじの色気と、うぐ。

ドキドキしながら前に回ると.....とても穏やかな笑顔を浮かべてロケットペンダントを見る花鈴が。

俺に対して赤くなりながら見上げてくる。


「.....有難う。.....とても嬉しいわ」


「.....全く。お前は何をやっても似合うな。マジに」


「何をやっても似合うなんて言葉はきっとみうさんにも言っているんでしょうね」


「勘違いするな!?言ってねぇよ!?」


「どうかしら。貴方は新聞の号外をばら撒く様に喋るし」


そんな事無い、と思いながら花鈴を見る。

苦笑いを浮かべながら、だ。

花鈴。それは無いからな、と言葉を発した。

するとクスクスと笑った赤いままの花鈴は.....俺を見上げてくる。

そして寄り添って.....うん!!!!?


「.....もう良いかしら。.....貴方に伝えても」


「.....な、何を.....?」


「.....ねえ。拓人。私は.....」


そこまで言ってから。

男子学生の声がしてきた。

でさー、とか言いながら、だ。


俺達は慌てて離れる。

それから俺は、も、戻るか、と話す。

花鈴は、え、ええ、と赤くなったまま言う。

そんな花鈴に男子学生とすれ違わない様に別ルートで教室に戻りながら聞く。


「花鈴。さっきのは何を言おうとしたんだ?」


「.....それは.....まあ良いわ。何もないわ」


「.....そんな言い方だと気になるんだが.....」


「駄目よ。内緒ね。.....今はタイミングじゃ無いって事ね」


「.....」


何だこれ。

心臓がバクバクするんだが。

告白されるかと思った。

花鈴に.....まあそんな事はある訳無いけど。


俺は考えながら前の花鈴を見る。

花鈴は何か言いたそうな顔をしていたが。

直ぐに何時もの調子に戻った。


「ねえ。拓人」


「.....何だ?花鈴」


「.....嬉しかったわ。とても。.....でも貴方らしく無い。.....でもその中でやっぱり拓人であるのを実感したわ」


「.....そうかい」


俺は言いながら胸に手を添える。

マズイもんだな。

心臓がバクバクする。


告白とかなったらどないしようかと思っていたが.....良かった。

そんな事になったら脳内がパンクする。

血圧がマッシュアップするだろう。

思いながら俺は元に戻った花鈴を見届けてから。

在津を見ると.....こんな顔をしている。


٩( ᐛ )و


怒り、的な。

何だこれ?

お前どういう顔なのそれ。

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