第10話 贈り物

俺はその後、一人で歩いていた。

目の前には商店街がある。

そこを歩きながら魚屋のおっちゃんとかに挨拶してから。

商店街にある古書店に行ってから.....本を見て。


時間をずらす様にそのまま帰宅した。

するとめぐみが顔を見せてくる。

お帰り。にーに、と言いながら、だ。

俺は、ただいま、と挨拶する。


「.....にーにどうしたの?顔が晴れやかだね。いつもより」


「色々な。良い本を見つけたからその事で浮かれているのかもしれないな」


「.....そうなんだ。.....今日.....私も良い事があったよ。にーに」


「.....そうか」


そんな感じで会話をしながら、あ。お鍋放ったらかしだった、と台所に戻って行くめぐみ。

俺はその姿を見ながら苦笑しつつ襖を開けると。

新聞読んでいた爺ちゃんが、お帰り、と言ってくる。


「ああ。爺ちゃん。何か面白そうな本があったから2冊だけ買ってきたぞ」


「おお。これは有難いな。.....実はワシも買ってきたんだ」


「.....え?何を?」


「本。恋愛の」


「.....」


じ、爺ちゃん.....?

俺はまさかの言葉に困惑しながら爺ちゃんを見る。

すると爺ちゃんは嬉しそうにニコニコしながら本を取り出す。

何と『彼女と愛しい子供を作るには』と書かれた雑誌が.....おいぃ!!!!?


「爺ちゃん!!!!!」


「孫が欲しい」


「コラァ!!!!!まだ早いし!俺はそんな気分にならない!!!!!」


「駄目か?我が息子よ」


「駄目だろ!」


色々と突っ込みごたえがある!

と思っていると背後から蔑視の視線を感じた。

背後を見ると.....婆ちゃんとめぐみがニコッと笑顔を浮かべている。

だがその.....あくまでその笑顔は死神の笑顔に見えた。


「.....爺様?何をお考えで?娘が居るのですよ?」


「ま、待て。妙子。どうしてもな!ほら!ワシもそうだが!」


「にーに。最低だね」


「待て!俺は被害者だぞ!ふざけんな!?」


そしてそのエッチな本は没収された。

それから落ち込む爺ちゃんに本を手渡してから。

苦笑気味になる俺。


そうしてから俺達はご飯を食べる。

今日はがめ煮などだ。

相変わらず美味しいもんだ。



爺ちゃんの本は没収されたが。

何というか爺ちゃんは諦めなかった。

廊下で本を手渡された。

本は更にもう1冊あったのだ。

爺ちゃんは興奮気味で言ってくる。


『ワシは今日決意した。.....お前が彼女を作ってくれるのを信じておるぞ』


と、である。

何言ってんの爺ちゃん、と思ったが。

俺はそのまま『彼女の作り方』という本を読んでいた。

これはエッチじゃない。

ただの彼女の作り方の本だ。


「.....それにしても.....な。.....やっぱり興味が持てないんだよな.....」


今はそんな事をしている場合じゃない、と思ってしまって。

そして絶望に感じるから、だ。

でもみうは答えを待っているだろう。

だからその思いに必ず返事をしないといけない。

俺は思いながらページを捲る。


「.....どうしたら良いのだろうな。俺は」


そう考えながら.....本を見る。

そうしていると、とあるページに目が止まった。

それは.....プレゼントのページ。

日頃の感謝でプレゼントをすると喜ぶ、と書かれている。

アイツもそうなのかな。


「.....みうに買ってみるか。.....花鈴にもお礼を込めて」


花鈴は俺に対してどう思っているかどうかは分からないが。

だけどこうやってお礼をするのも得策だろう。

思いながら俺は少しだけ浸る感じで見てから.....そのまま、よし!、と立ち上がる。

それから襖を開けてから、爺ちゃん。婆ちゃん。めぐみ。出て来る、と挨拶する。


「にーに?何処行くの?」


「ああ。ちょっとな。.....買い物」


「.....あ。そうなんだ。.....じゃあお醤油買ってきてくれる?にーに」


「ああ。分かった。んじゃ買ってくる」


それから俺は断りを入れてから。

そのまま表に出る。

そして歩いてから.....近所のスーパーをちょっとだけ通り過ぎてから。

また商店街にやって来た。

アクセサリーショップに寄る為だ。


「こういうので良いのか分からないけど.....まあ見てみるか」


俺はそんな事を呟きながらそのままアクセサリーショップを覗く。

すると、いらっしゃいませ、と店員が言ってくる。

その店員にビクッとしながらも、すいません。安い.....何て言ったら駄目ですけど予算にあったアクセサリーが欲しいんですけど.....、と言ってみる。


「畏まりました。ご予算に合われた商品ですね。因みにどの様なものですか?」


「.....そうですね.....すいません。イメージがつかないんです」


「.....そうなのですね?.....では.....お相手様のお写真などはございますか?」


「.....あ、はい」


そして俺は2人の写真を店員さんに見せる。

それから納得した店員さんと一緒にアクセサリーを選ぶ.....が。

センスが無いな俺は。

考えながら.....1時間経った。

何とか選べたが.....。


「大丈夫です。きっと喜ばれると思います」


「.....そうですかね?自信が無いです。俺.....」


「失礼ながら恋をしてらっしゃいますか?」


「.....いえ。恋とか恋愛とかじゃ無いです。.....ただ相手は俺に恋をしている事は知っています。先程の短髪の子です」


「.....きっとお客様の思いを受け止めてくれます。こんなに悩んでいるのですから。お2人の為に」


「そうですかね」


はい、と笑顔を見せる店員さん。

俺はその姿に自信を持てた気がした。

それから、妹の分も.....買いたいです、と店員さんに言う。


「.....はい」


店員さんはそう返事をしてくれた。

俺はその姿に笑みを浮かべる。

帰り道で爺ちゃん婆ちゃんの分も買おう。

そう考えると.....何だか弾む気がした。

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