第7話 先輩と後輩

未来は安泰とは言えない。

だが俺にとっては今は安泰している。

だからこそこの現在を守っていきたいと思う。


そんな事を考えながら俺は眠っていると。

にーに。朝だよー。ご飯の時間だよー、と声がしてきた。

めぐみの相変わらずの可愛い声。


それから俺は起き上がってから準備をしてから朝食を食べる。

鮭の朝食を。

そして俺達は登校の準備を始めた。


「爺ちゃん。婆ちゃん。行ってきます」


「おう。気を付けるんじゃぞ」


「行ってらっしゃい。2人とも」


2人の両親に見送られてから。

そのまま俺達は別々の学校に登校する為に途中まで歩いている.....と。

花鈴が立っていた。

俺の通学路に.....だが。

何やってんだ?


「あ。花鈴さん!お久しぶりです!」


「あら。めぐみちゃん。お久しぶり」


「.....?.....何だか雰囲気が違いませんか?」


「そうかしら。.....私は何時も通りだと思うわ」


「.....そうですかね?」


そういえばめぐみに説明してない。

変わっているって事を。

性格が、だ。

俺は。めぐみ。ちょっと大人になっているんだ。花鈴は、と言う。

するとめぐみは、なるなる!、と納得した。


「まあ2年経ちますしね」


「.....まあそうね。.....早いものね」


「.....そうですね。でも花鈴さんに遊んでもらった事は忘れていません」


「そう?嬉しいわ」


「.....はい。あ。.....時間無いですね。.....じゃあにーに。花鈴さん。.....良い時間を。花鈴さんはまた会いましょう」


ニヤッとしながら去っていくめぐみ。

何を誤解しているんだアイツは。

俺は考えながら花鈴を見る。

花鈴は?を浮かべて去って行くめぐみを見ていた。


「.....意味深な発言ね?何かしら」


「.....まあ良いんじゃないか。アイツは気にしているんだよ。俺達の関係を」


「.....か、関係.....」


「.....何を赤面しているんだ。恥ずかしいぞ俺も」


「貴方が余計な事を言うからよ。全く」


そんな事を言いながら横を見る花鈴。

何だってんだコイツは、と思いながら歩き出す。

そういえば今日はみう。


アイツはどうしたんだろうか。

思いながら俺はスマホで、みう。先行ったのか、と打ってみる。

すると、先輩。すいません。今日は部活だったので先に行きました、と帰ってきた。

ああ.....部活か。

アイツって確か文芸部員だったよな?


「誰とメッセージしているのかしら」


「.....ああ。みうだ。.....お前も会ったろ昨日。俺の後輩」


「.....ああ。あの子ね.....」


心なしか目が鋭い感じだが。

俺はゾッとしながら、ど、どうした、と聞くと。

何でもないわ、と横を見る花鈴。

うーん。何だコイツは?

調子が何だかおかしい気がする。


「.....そういえばお前さん。家族と一緒に越してきたのか?こっちに」


「.....それは違うわ。私は一人暮らしよ」


「は?1人暮らし.....なのか?それは寮に?」


「マンションね」


「.....ああ。そう言えば小金持ちだったよな。お前の家」


「そうね。医者だったから」


まあその医者の転勤でちょっと離れ離れになったのだが。

だけどまさか1人暮らしだとはな。

俺は?を浮かべて花鈴を見る。

花鈴は、私が1人暮らしなのが気になるのかしら?、と言ってくる。

俺は、まあな、と答えた。


「.....大丈夫よ。セキュリティは結構なのよ」


「いや。そうじゃなくて何でお前は1人暮らしなんだ。それを親がよく許したな。お前も確か.....」


「.....そうね。.....でもその目的は.....」


頬が少しだけ赤くなる花鈴。

俺は???を浮かべながら花鈴を見る。

すると花鈴は、とにかく今は良いでしょうそれは、と話題を切り替えしてしまった。

それから俺を見てくる。

もう直ぐ変わるわね、と言ってくる。


「.....ああ。制服な。.....確かにな」


「6月は嫌ね。梅雨も多いし」


「そうだな。雨が多いしな」


「.....そう言えば言い忘れていたわ」


「.....何だ?」


「昨日は有難う」


微笑みを浮かべる花鈴。

俺はその姿を見ながら見開く。

そして、いや。気にするな。友人から貰ったチケットだったしな、と首を振る。

それから前を見る。

こんなに可愛い笑みを浮かべれるとはな。


「.....なあ。花鈴」


「.....何かしら」


「いつか話せるか。お前が1人で何故こっちに戻って来たのか」


「.....そうね。今は内緒」


「そうか」


それから学校に登校する俺達。

そして教室に行くと。

みうが、お早う御座います、と声を掛けてきた。

花梨を見てジト目で。

オイオイ。



「先輩。一緒に登校したんですか」


「.....そうだな.....うん」


「ほほーう。良いご身分ですね」


「そ、そうだな」


俺はみうに呼び出されて屋上に居た。

何この新妻的なの。

俺は考えながらみうを見る。

みうは、私の事を忘れないで下さいね、と言ってくる。

当たり前だろ、と俺は返事をした。


「私が.....貴方の1番なんですから」


「.....そんな恥ずかしい事をよく言えるなお前」


「.....私だって恥ずかしいです。でも」


みうは手すりから離れる。

そして俺に寄り添って来た。

頭を俺の胸元にぶつける様に。

俺はその姿を見ながら赤くなる。


「.....みう.....」


「先輩。.....私はズキッと痛みます。.....心が」


「.....そうだな。でもアイツは.....」


「.....本当にそうでしょうか」


縋って来る様に見上げてくるみう。

赤くなっている。

まるで小動物の様に、だ。

流石にそれはあり得ないだろ。

俺は.....花鈴とは離れ離れだったんだしな。


「.....でもちょっと心が安定しました。.....戻りましょう。先輩」


「みう」


「.....はい?」


「.....何とも言えないけど。.....お前から受け取ったものは胸に何時もある。有難うな。だからこそお前を大切にしたいって思う」


「.....先輩.....」


涙目になるみう。

俺はその姿を見ながら笑みを浮かべる。

そしてその時間は取り敢えず別れた。


それから教室に戻ると。

(・∀・)という顔の在津が.....。

どういう顔だ?、と思っていると。

いきなり在津が俺に憤慨した。


「お主。女性を手玉に取るのはやめなされ」


と.....いきなり何言ってんだこの馬鹿。

俺はジト目で在津を見る。

在津はまるで金○一の様に歩き出して名探偵ぶりをアピールする。

屋上で何をしていた、と。

見ていたのかこの変態は.....。

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