第5話 命を捨てるのであれば俺だけで十分だ

やれやれだ。

シェイクとアップルパイを飲んで食べただけでこんなに時間を食うとは。

思いながら俺は、送って行く、という声に、大丈夫、と答えた花鈴を見送ってから鞄を掛け直してから歩き出す。

歩道。

そして信号.....全てが何だか違うものに見える感じだ。


「.....何だろうな。.....今日アイツに会ったせいか」


俺は考えながら歩いていると。

公園で子供が遊んでいる。

そして.....何故か知らないが.....みうが混じって遊んでいた。

何やってんだあの野郎は?

蹴りをぶちかましてからサッカーをしている。


「.....みう?」


「あ。先輩」


顔を引き攣らせながら声を掛ける。

すると警戒する猫の様に、シャー!、という感じで俺を見てきたみう。

何というか泥だらけじゃないか。

走り回ったせいか。


「.....何やってんだお前は」


「何って先輩に嫌われたからサッカーしているだけです」


「.....嫌ってないって。誤解だ」


えー!姉ちゃんの事コイツ嫌ってんの!?、と男子小学生が言う。

3人組の。

いやコラ黙れクソガキ。


大人には大人の事情があるっつーの。

思いながらみうを見る。

みうも、だよねぇ、と納得していた。


「お前なぁ」


「まあ冗談は置いて」


さて小学生の諸君、と小学生側に向き胸を張るみう。

そして、遊ばせてくれて有難う。帰るよ、と笑顔を浮かべる。

俺はその姿を見ながら小学生達を見る。

小学生達は、おいっす!、と笑顔を見せる。

元気の良いクソガキどもだな。


「頑張って下さい!ししょー!」


「そうっすね!」


「応援してるっす!」


駆け出して行く小学生ども。

おう。師匠って呼ばれてんぞ。

俺は考えながらみうを見る。

みうは、あー。楽しかった、と笑顔を浮かべていた。

顔まで泥が付いている。


「おう。なら良いが.....」


「帰ってシャワー浴びないといけないです。先輩のせいで」


「お前な.....俺のせいとはどういう事だ?」


「だって先輩が私を振るからです」


「誤解されるわ!!!!!」


俺は額に手を添えながら盛大に溜息を吐く。

それから公園から出てから。

じゃあ私は何時もの通りこっちなので、と向いてくる。

俺は、ああ。じゃあまた明日な、と挨拶した。

だが.....みうはジト目で俺を見てきている。


「先輩。花鈴先輩に何かたらしこまれていませんよね?」


「そんな訳あるか。お前の気にし過ぎだ」


「ふーん。なら良いですけど。.....先輩は私のゆうじ.....じゃない。恋人に近いんですから」


「.....お前な。相変わらずだけど言い過ぎだ。俺達はその関係になるにはまだ早いって言ったろ」


真剣に解く様に説明する。

するとみうは悲しげに俺を見てくる。

そして、いつまでその状態のままなんですかね、と聞いてくる。

切なそうな顔をしながら。


「.....みう.....」


「.....私はかれこれ半年近くお返事を待っています。でもまあ駄目だって分かっています。.....でも先輩。今の貴方の状況が決して良く無いです。.....貴方のその顔を見たくない」


「.....」


「.....私は先輩。笑顔で居てほしいです。貴方には。だから.....何とかして下さい」


「.....そうだな」


そして複雑な顔をする俺。

それから空を見上げてから夕焼け空を見る。

そうしてから、じゃあまたな、と声を掛ける。

すると、先輩、と声がした。


「.....先輩。私は振られても構いません。でも最低でも.....貴方は貴方の道を見つけて下さいね。生きる道を。束縛されない未来を」


「.....みう。.....有難う」


「.....私は応援しています。.....貴方を」


「.....」


それから俺達は別れた。

そして帰ると、にーに、と声が。

俺は顔を上げる。


胸のデカい女が立っている。

というか俺の妹だが。

羽柴めぐみ(はしばめぐみ)、だ。


顔立ちはそれなりに幼い顔だが。

それなりにバストが.....。

何というか困る美少女である。

身長も低いし何もかもがそこそこだしな.....。


「またにーに冴えない顔しているね」


中学3年生だが。

俺を思春期にも関わらず慕ってくれる。

大切にしてくれる。

俺はめぐみを.....爺ちゃんと婆ちゃんと共に(家族)と思っている。

唯一の、だ。


「.....また母と父の事かな」


「.....あれはもう家族じゃない。死んでいる。.....お前と爺ちゃんと婆ちゃんだけだな。肉親の家族はな」


「また〜。にーに優しい」


「.....本当だぞ?」


俺とめぐみは両親に捨てられた。

いや違うか。

俺達が両親と仲違いした。


そして親に、お前ら死ね、と書き残し家を出たのが4年前。

母親は数学教師。

父親は学校の勉学が全ての理事長である。

その間でめぐみが勉強に殺されそうになったから家から出たのだが。


俺はその中で学校という監獄に今だに囚われている。

何故こうなっているのか。

これにはそれなりの事情がある。


めぐみを連れ返すという親の意見に反発してその間に入り込み俺が操り人形になっているのだ。


親が条件を突きつけてきた。

お前が必死に勉強をする、将来親を介護する、監視体制の中で居るなど。

それならばめぐみはそのままそこに居ても良い、と。

めぐみは頭が良いから親の操り人形と化しているからそれが許せなくて俺はめぐみに黙っている。

今の学校に通っている真の理由をめぐみにまだ教えてない。


「.....にーに?どうしたの?」


「.....何でもないぞ」


覗き込んでくるめぐみ。

無邪気な笑顔を守る。

正直、勉強面でキツイ状況が続いている。


でも全員が命を捨てるのであればその犠牲で止める事になるのは俺で十分だ。

めぐみが犠牲になる必要は無い。

そう考えながら俺は動いているのだが.....。

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