第2話 花梨と拓人

「先輩。.....聞いたんですけど美人な女性とやけに親しいらしいですね」


「.....え?.....あ、いや.....うん。マジか」


「あ、いや、うん、じゃないです。これは一大事なんですけど」


いや。と言うか何で知ってんだよ。

女子怖い!

俺は思いながら屋上で後輩の友山みうを見る。

みうは俺をジト目で見ながら盛大に溜息を吐いていた。

そして人差し指で俺に指し示してくる。


「先輩。あまり仲良くしないで下さいね。その女の子と」


「.....え?あ、ああ」


「だって先輩は私の.....ですから」


「ま、まあその.....分かってる。大丈夫だ」


だけどそうは言ってもな。

俺の幼馴染なのだ。

どうしたものかな、と思いながら顎に手を添える。

でも先輩をそこまで揺るがすなんてどんな人なんでしょうねぇ、とジト目で俺を見てくる、みう。

俺は脂汗が吹き出してきた。


「と、取り敢えずは良い子だぞ」


幼馴染が戻って来たとか言ったらどうなるだろうか。

俺はあまり想像したくない。

思いながらみうを見る。

みうは、ほほーう?、と眉を顰める。

先輩の浮気者、と言いながら。


「私はこうして先輩に食事を作っています」


「あ、ああ」


「そんなひょっこりな女に取られてたまりますか。先輩を」


「.....お、おう」


そんな感じで俺達は会話をしながら飯を食う。

そしてそのまま俺とみうは別れてから。

そのまま階段を降りて俺の教室に向かう.....と。


教室のドアの前に花鈴が立っていた。

何しているんだ、と思っていると。

俺を見るなりそのまま寄って来ながら凛とした顔を向けてくる。


「教室の方々があまり好きじゃないの」


「.....ああ。そういう事か。成程。でもお前ずっと立っていたのか」


「待ち合わせるだけだから問題は無いでしょう」


「いや.....キツイだろうに」


そんな会話をしつつ。

俺達は職員室に向かって歩き出す。

周りの奴らが皆、可愛い、とか、スッゲェ美人、とか言う。

そりゃそうだろうな。

こんな美人になっているとは思わなかったし俺も。


「何かしら。こっちを見て」


「.....いや。変わってないなお前も、って思ったんだ」


「変わってないかしら。.....ふむ」


「まあでもその。友人を作らなくなったのは変わったよな」


「.....友人なんて要らないわ。私には。ずっと思っていたけどいらないって気が付いたの」


「.....そんなもんかな」


そんな会話をしていると.....職員室に着いた。

それから職員室に入って行く花鈴。

俺はそれを視線で追いながら溜息を吐く。


そして壁に背を向けてから。

そのまま目の前を見る。

すると3分ぐらい後に職員室のドアが開いた。


「待たせたかしら」


「いや。何の用事だったんだ?」


「宿題、書類などね」


「.....成程な」


じゃあ行くか、と言いながら歩く。

すると花鈴が俺に向いてきた。

ねえ、と言いながら。

俺は?を浮かべて花鈴を見る。


「私って冷たい女の子かしら」


「.....いやまあ。それも個性があって良いと思う。.....でも1人ぼっちじゃ寂しくないか?」


「.....寂しくないわ。.....2年の間に絶望したしね」


「.....?.....何があったんだ」


「色々ね」


言いながら眉を顰める花鈴。

俺は首を傾げながらも、まあ良いや。学校を案内するんだよな、と花鈴に切り出す。

花梨は、ええ。お願いします、と話す。

俺は、分かった、と案内を始めた。

職員室、音楽室、保健室、事務室.....という感じで。


「.....羽柴くん」


「.....何だ。花鈴」


「.....昔みたいに拓人って呼んで良いかしら」


「それはまあ任せる.....が。幼馴染と知ったら教室がヤバくなるかな」


しまった、と俺は考える。

配慮が足りなかったな。

花鈴と呼んでいたが、だ。

すると花鈴が察した様に、私は名前で呼ばれて問題ないわ、と答える。

それから、拓人って呼んでも問題ないわよきっと、と言ってくる。


「だから貴方も私を花鈴って呼んでちょうだい」


「.....まあお前がそう望むならそうする」


「そうね。.....それから.....」


言い辛そうな顔をする。

俺は?を浮かべて花鈴を見る。

だが花鈴は、何でもないわ、と黙ってしまう。

その姿を見ながら俺は、そうか、と答えた。

その代わりに花鈴は外を見る。


「.....それにしても良い学校ね」


「.....海辺にあるしな」


「貴方が.....拓人がこの学校に行っているとは思わなかったわ。.....確執があるって聞いたけど」


「.....まあな」


親との確執。

俺は考えながら肩を竦めた。

それから、また今度案内するよ。帰ろうぜ、と言う。

時間がマズイと思ったから。


「.....ええ。拓人。戻りましょう」


「.....」


コイツもそうだが。

みんな悩むのが人生だよな。

そう考えながら俺は花鈴を見る。

花鈴は俺の事を気にしないで無言で廊下を歩いていた。

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