第2章 帰ってきたみな子

第8話 帰ってきたみな子➀

 伏見稲荷を楽しんでから数日後、もと子が帰宅するとアパートの部屋の前に知らない男が座り込んでいた。男はヨレヨレの上着に膝の抜けたズボン。疲れているように見えた。

「あの、すみません。私、この部屋のものなんですが退いてもらえますか?」

「アンタ、この部屋に住んでるって、もしかしてリュウの奥さん?」

もと子は恐る恐る首を縦に振った。



男はホッとしたような顔をして立ち上がった。

「俺はリュウのオヤジやねん。長いこと待って疲れたわ。早よ部屋ん中入れてくれへん?腹も減ったし、何か食わせてくれるとうれしいねんけどなあ。」


男は部屋に入る気満々でもと子に詰め寄る。リュウの父というが男は40過ぎで、どう見てもリュウの父には若すぎる。

この怪しい人と家でリュウさんを待つの?

しかも二人きりで?

ピンチのもと子はひらめいた。


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