第6話 純文学よりの
もちろん、アウトだとは思う。
「即座にアウトよ。個人的には好きだけど」
ああ、やっぱりそうだ。
下読みでは奇想天外な小説に遭遇する。
会話文が脚本のようにカッコ書きされているものもあった。
会話文を成立させるのが難しいから苦肉の策だったのか、それにしてもそれはすごい。
もはや、小説じゃない。
そうはいってもそんな作品のほうが心には残るのかな。
私も最初の頃はそんな駄作ばかり書いていたんだろうな。
いや、今でも書いていることと間違いかな?
なかなかうまく書けないのさ。
私は今日で三編の作品を落選させたことになる。
何か恨まれないだろうか。
小耳にはさんだ話で脅迫文をもらった下読みもかつてはいた、と聞いた。
その反対に応募要項に十万円が挟んであったこともあったとか。
その十万円はどこに行ったのだろう。
気になる。
合田編集長たちのお小遣いになったのかな。
嘘。
一時期会社の倉庫に保管されたんだよ。
いいな、十万円か。
そんなお金があったらどうする? と丸山さんに言ったら丸山さんはこう言った。
「乙女ロードで新作のBL小説を買いまくる」
純粋な? 乙女たちが集う、乙女ロード。
ちなみに私は行ったことがない。
神保町にはよく出向くんだけれどさすがに乙女ロードには縁がないな。
そんな私も隠れ腐女子に近い生態を持っているのかもしれない。
純文学寄りのBLを扱った小説なんか、家の棚に鎮座させている。
例を挙げると、森鴎外の娘、森茉莉が書いたという、『枯葉の寝床』や『恋人たちの森』、三島由紀夫の『禁色』、実際に同性愛者だった、二十歳で詩人を放棄したアルチュール・ランボーの『地獄の季節』などなど。
純文学寄りのBL小説のいいところは見かけ、偉そうに見えるところがいい。
何か自分を偉くした気分になれる。
阿呆だな、そんな浅はかな理由。
BL小説だって立派な文化よ、と丸山さんが意地なって言う。
「三浦しおん先生は大のBL好きだと公言なさっているじゃない!」
そんな会話をしながら丸山さんと一緒に帰る。
大通りを歩く。
一応、私は女の子ですからね。
いくら顔が不細工でも女の子ですから。
念のため下読みシスターズは恨みを買われるかもしれないのだ。
一緒に行動するのが筋だ。
丸山さんと歩いていると奇妙な物陰を見た。
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