第2話 紙の山
たくさんの箱に詰まった応募作品がもはや、紙の山の如く積まれている。
大御所の先生の作品で『紙の月』という傑作があったけれども、この紙の月ならぬ紙の山はただ単に楽しんで読めばいい訳じゃない。
私は去年、純文学では五大新人文学賞に数えられている敬想新人文学賞をめでたく受賞し、晴れて作家になった。
アラサーの私がデビューするにはちょうど良く、十代の頃から書いては投稿していたことを思うと悲願の受賞というところ。
何ていう台詞は軽々しくは言えない。
受賞作は結局、重版にもなれず、作品を選んで下さった出版会社に赤字を出させてしまう始末だ。
本当にすみません、としか言えない。
受賞したときは親戚中に自慢して回ったのに今じゃ、閑古鳥が鳴く始末だ。
受賞してから早速、仕事を辞めると編集者の合田さんから注意された。
いや、注意されるどころか、完全に雷が落ちた。
サザエさん一家のカツオじゃないけれども、私の頭にはたくさんの電流が走った。
仕事を辞めてから全く売れず、人生を台無しにしてしまった作家の卵が、過去に数多くいたらしく、私もその最終候補に自分からなったようなものだ、と二時間近く怒鳴られてしまった。
今はその叱責はすごく有難い、と思える。
実際、今の家計はかなりきつい。
印税だけで食ってはいけない。
本当に作家デビューの秘訣のあの先生たちの本に書いてあった通りだった。
自分なら他人事だったけれども今はそうじゃない。
下読みを引き受けないととてもじゃないけれども、生活できない。
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