第36話 式微(哀れ哀れ 我が君)

※「ふるさと」のリズムで


露にぬれて つ国

泥にまみれ 奉公

哀れ哀れ 我が君

雪はつもる 白髪しらかみ


露にぬれて つ国

泥をかぶり 客地かくち

哀れ哀れ 我が君

いざやいざや 帰らん


【元の詩】

式微式微 胡不歸

微君之故 胡為乎中露


式微式微 胡不歸

微君之躬 胡為乎泥中


【ひとこと】

 異国から国に帰りたい歌のレパートリー少ないのでまた「ふるさと」を持ってきた。1番だけで済むかと思ったが泥の慣用句で言葉遊びしたくて全2番仕立て。

 元の詩は「殿! いつまでここにいる気ですか帰りましょう!!(ブチ切れ)」と理解した。直截な物言いの詩らしいが、回りくどく作った。(邶風はストレートに言う詩が多いね……? 私の苦手な言葉です。)

◯露にぬれて 涙に濡れての意味を兼ねる。

◯泥にまみれ 苦難の多い状態。慣用句だと勝手に思ってたけど違うらしい。

◯雪はつもる 慣用句「雪を頂く」が字数の都合で入らなかった。ここでは白髪が増えた(苦労は多いし長居しすぎだし)と言いたい。せっかく「つもる」なので「思いがつもる」の連想まで繋がれば万歳。露と泥ときたら霜の方が好みで、霜でも白髪を意味する慣用句はあるんだけど、いまいち音声が合わなかった。白居易「夢微之」に泥と雪の対句があると思い出し自分を納得させて着地した。

◯哀れ哀れ 「ってかすかなり、式って微なり」より煽りポイント。

◯泥をかぶり 慣用句「泥をかぶる」自ら不利益を覚悟で引き受けるの意味だけど、おっ被せられたのを言い換えているんでしょうね。「八十島かけてこぎいでぬと人には告げよ」の理屈。元の詩だと馬鹿にされたり嫌味を言われたりするのを耐えている、くらいの意味であるらしい。


【メモ】

陶淵明〈歸去來辭〉に

歸去來兮/田園將蕪

つまり

帰去來兮かえりなんいざ

田園 まされなんとす なんぞ帰らざる

とある。


詩経を踏まえているそうでこれを逆輸入できないかと思ったが……うーん無理だった……。

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