第35話 谷風(たにまにそよぐ はるのかぜ)
たにまにそよぐ はるのかぜ
そこにくろくも たちこめて
そろそろあめが ふりだすわ
すずなをとるは ねっこだけ?
すずしろとるは ねっこだけ?
しぬまでいっしょの やくそくは?
あゆみすすまぬ そのわけは
あゆみのおそい そのわけは
あなたがおくって きたむすめ
にがいとなにもつ ニガナさえ
ナズナのように あまいでしょ
いまのわたしに くらべれば
むかしはきよき
みなぞこひかる きよきみず
にごらせたのは かの
あとからながれて きたおんな
私の部屋へゆくな 私の道具に触るな
私を思わぬものを 私が思う謂れはない
ふかいわたしは いかだにのって
あさいわたしは およぎうたって
おもいだすでしょ あんなこと
おぼえているでしょ こんなこと
そうねなにかが あったとき
そうよなにかが なかったときに
このみをこにして つとめあげ
となりにいたのは だれかしら
わたしがたえて しのぶのは
かわこおるふゆを こえるため
あのあばすれを いえにおくのは
いまはりゆうが あるからよ
むかしのあなたは すてきなひとよ
いまは私に あたるけど
大事だいじな わたしのことを
まさかわすれて いないでしょう?
【元の詩】
習習谷風 以陰以雨
黽勉同心 不宜有怒
采葑采菲 無以下體
德音莫違 及爾同死
行道遲遲 中心有違
不遠伊邇 薄送我畿
誰謂荼苦 其甘如薺
宴爾新昏 如兄如弟
涇以渭濁 湜湜其沚
宴爾新昏 不我屑以
毋逝我梁 毋發我笱
我躬不閱 遑恤我後
就其深矣 方之舟之
就其淺矣 泳之游之
何有何亡 黽勉求之
凡民有喪 匍匐救之
不我能慉 反以我為讎
既阻我德 賈用不售
昔育恐育鞫 及爾顛覆
既生既育 比予于毒
我有旨蓄 亦以御冬
宴爾新昏 以我御窮
有洸有潰 既詒我肄
不念昔者 伊余來塈
【ひとこと】
元の詩長すぎない? キレていい? って思ったけど詩経の中でも二番目の長さだときいて座り直した。(←追記:「詩経」じゃなくて「国風」の中で、らしいです。確認した。泣いた)
ある種物分かりのいい女が家を去りながら恨み節ととる解釈と、家に残りつつおかめの笑みで心が般若の解釈があるんですね? 「私の道具に触るな」と訳したけどその辺りが濡れ場の描写だったり、子供が産まれたからその子だけ取り上げられてポイされた話だったり、当時有名な文春砲もののあの件の当て擦り❤︎なんて解釈もあるらしい。
詩作にあたっては私と渡を掛ける方向にぶっぱした。詳細は元の歌から離れた部分もあるけど、日本語読んだだけでも典故として問題なく伝わる範囲には収まっただろうと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます