第34話 匏有苦葉(匏の葉っぱ 苦くなり)

※七五調のリズムで


ふくべの葉っぱ 苦くなり

渡しの水は 深くなる

浅けりゃヒョイと渡れるが

深けりゃざんぶざんぶりこ


ざんぶりこっこ 渡し場に

ケンケン鳴くは雌の雉

渡れぬはずの渡し場を

渡る車は濡れもせぬ


ざんぶりこっこ 渡し舟

あの子焦って ゆくけれど

わたしは時期を待ちませう

わたしは時期を待ちませう


太陽昇って朝になる

ヨウヨウと鳴く雁が来る

若人わこうど 妻を娶るなら

水もかたまる今の時期


【元の詩】

匏有苦葉 濟有深涉

深則厲 淺則揭


有瀰濟盈 有鷕雉鳴

濟盈不濡軌 雉鳴求其牡


雝雝鳴鴈 旭日始旦

士如歸妻 迨冰未泮


招招舟子 人涉卬否

人涉卬否 卬須我友


【ひとこと】

 暗喩まみれね! こういうの大好きです。元の暗喩を落とさないよう気をつけて出来るだけ素直に訳しましょう……のはずだったけど、少々アクロバットして、三連と四連は順を入れ替えた。先に脅しをかけ、次に焦るなと説き、最後に「さぁさ今だ」と囃す歌とした。というか元の詩はなぜこの順なんだ?


ほう 異名は、俗名をフクベ。は若芽なら食べられるけど、育つと苦くて食べられないらしい。婚期を逃すことの暗喩と理解した。つまり、年増は食えないって意味ですね。解説してて怖くなるレベルのド直球のアレ。

◯浅けりゃ〜深けりゃ〜 若けりゃ裾を摘む程度の事で簡単に嫁ぎ先も見つかるだろうけど、歳ゆきゃ……の意味ですよね(これ言ってるの詩経だからね?私じゃないからね?汗)。

◯雌の雉 普通恋の相手を求めて鳴くのは雄の雉。淫乱だとする注もあるらしいが、ここはむしろ『摽有』と同じくなりふり構っていられないんだろうと理解した。詩経サマ容赦ない、そこは責めてやるなよ……。

◯濡れもせぬ お察しの通り下ネタ。今の時代これやったら顰蹙もいいとこだけど、むしろこういう上から目線の酷いこき下ろしがないと昔話らしく見えなくない? 3000年昔の詩ならこのくらいかなと思いこの塩

◯渡し舟 あの子焦って 察し。条件が悪くても時期が悪くても、とにかく嫁げ嫁げと焦る娘もいるわけですね。というか「招招舟子」だからね、せかす輩がいるわけですね。

◯わたしは 私が渡しをわたるのは。掛け言葉。これだけ煽られてなんで待つんだよ、と思うが元の詩がそうなんだもの。結婚式するにも時期があるんだってさ。サツキ婚とかジューンブライドみたいなイメージ(?)で冬がいいんだってさ、農閑期だからということらしい。

◯水もかたまる今の時期 元の詩は「氷の未だけざるにおよべ」つまり「水が解けないうちに」の意味で、つまり「婚期を逃すな」にみえる。なんでそれ言った後に「人はわたれどれはしかせず れは須我が友をつ」と「良い時期を選びましょう」みたいなこと言ってるの? うーん? あれかな、つまり嫁ぐなら一人は良くないからってことかな? そういえば『江有汜』がそんな話だったよね。後から考え直すより、そもそも一人だけ先に嫁ぐのでなく皆が良い時期を選びましょうってことかな。故に「私一人じゃ渡りません。友(一緒に嫁ぐ娘)と時期を合わせて婚礼に適した時期を待ちます」うん、それなら分かる。分かるけど日本語の詩としては切り捨てて入れ替えで対応。夫婦の絆を強固にかためるのなら水も固まる冬、婚礼に適した農閑期に結婚式するのがいいですよ若者よ、とした。

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